自分にとっての原点と理想、そして現在
私はソフトウェア開発が好きだ。私には、理想的なソフトウェア開発の姿がある。そして、それはかつて経験した強烈な体験が原点となっている。その体験をもう一度したくて今があるんだ。
ソフトウェア開発を心の底から本当に楽しいと思ったのは大学院のときに研究室の仲間とゲームを作ったときのことだった。
そのプロジェクトは、ゲームを作りたい研究室の先輩と、絵と音楽が得意な同期の友人と、そして、プログラミングがしたい私の3人で始まった。
その当時の私はゲームそのものの企画や仕様を考えるよりも、プログラムのアーキテクチャを考えて、プログラミングすることが大好きになっていた。
その研究室の先輩がゲームを作りたいというので、私は自分の腕を活かしたいし、プログラミングをする題材を探していたので、その話にすぐに乗った。
仕様について喧々諤々とした議論を朝も夜も続けて、議論してないときはプログラミングを続けた。寝食を忘れ没頭するという、まさしくその状態だった。
自分が踏み込めば踏み込むほど、相手も踏み込んで来てくれる。納得いくまで議論を続ける。良いソフトウェアを作るために全力を注ぐことが許される。そんな環境だった。
誰かと一緒にソフトウェアを作り上げることが、こんなに楽しいものだとは思っていなかった。それは本当に素晴らしい体験だった。永遠に続けば良いと思えた。
私にとって、そのときのソフトウェア開発の体験こそが、自分史上最高の原体験であり、目指すべき理想のあるべき姿となった。
その後、システム開発会社に入り、そのときのソフトウェア開発とのギャップに、大変ショックを受けた。どうすれば、あの理想のソフトウェア開発をもう一度体験できるのか、追求する日々が始まった。
アジャイル開発に出会ったときは、自分の理想を語る人は他にもいることを知った。アジャイル開発を広めることは自分の使命になった。
ただ、私にとってアジャイル開発が理想なのではなく、理想のソフトウェア開発があり、それにアジャイル開発が近かっただけだ。
自分の理想とするソフトウェア開発をもう一度したい。その思いは途絶えることなく、ずっと追求し続けた。
そして今、ソニックガーデンという自分の会社と仲間を持つことで、かなり、その状態を作り出すことに近づいてきていると感じる。
結局は、あのときの原体験、それが出発点でありゴールでもあった。その道はまだ続く。
ちなみにそのとき作ったゲームは、インターネットで公開したことで、また私に大きな影響を与えるのだけど、それはまた別の機会に。