個々の問題とメタな問題
仕事をしていると、色々な問題が起きる。
私の仕事である経営などは、毎日を違うことをするし、新しい問題が次々と出てくる。
問題がなくなることはなくて、もし無さそうに思えたら、それは経営の怠慢だろう。何が問題かを見つけることも経営の仕事だ。
これから起きそうな問題を先回りして解決していけば、会社は安定しやすい。安定したいかどうかも経営者の資質次第だが。
ただ、これは私が経営者だから経営の話をしているだけで、問題とその対処については、経営に限った話ではないだろう。
そうした日々起こる問題に対して、どのように取り組むか。
ひとつひとつ解決していくしかない。もちろん、優先順位を考えないと、うまくいかない。かかる労力が少なく、効果の大きいものから取り掛かる。
個々の問題は、それぞれの文脈に依存する。どの問題も同じことはない。
特に経営なら、だいたいの問題が人の問題になる。まあこれも経営に限らないだろう。
人の問題は、正解が無い。その人に合わせて対処するしかない。しかも、数字とロジックだけで解決しない。心を無視する訳にはいかない。
心はソフトウェアだ。しかも、ソースコードなど見えないし、日々変化していく。なかなか手強い。
だから、個々の問題は、慎重に、しっかり考えて取り掛かる必要がある。
個々の問題は、個別に対応しなければいけないとはいえ、似たようなシチュエーションを何度も対応するのでは進歩がない。
起きてしまった問題は、個別に対応するしかないが、その前の再発防止は、ある程度の共通的な対応ができることがある。
個々に起きてしまった問題を、その問題そのものの解決や解消を考えつつも、似たような問題が起きないようにするにはどうすれば良いか、同時に考える。
問題そのものの構造を見るのだ。それをメタの視点という。メタ、即ち一つ上の次元で考えるのだ。
メタ視点で問題を捉えると、その問題のそもそもについて考えることになるし、抽象化して、構造化して考えることになる。
システム開発の世界で言えば、「モデリング」と呼ばれる行為に近い。
個々の問題を一つだけ取り出して、抽象化するのは難しい。だけど、2回目3回目になると、抽象化できる。
そうしていくことで、共通する問題に対する仕組みを作ることができる。この仕組みは、一度作って終わりではない。
再発防止できなかった問題が出てくれば、改善を繰り返していく。仕組みが強化されていく。経営でいえば、いずれそれが会社の制度やビジネスモデルになるのだろう。
メタな視点は、常に忘れないように。どんな問題も、喉元を過ぎれば、忘れてしまう。その瞬間に、目の前の問題に取り掛かりながら、メタな問題も解決するのだ。
目の前の問題でいっぱいいっぱいになるのもわかる。それでも、メタな視点を持つことで、繰り返すことが少なくなる。
痛い思いは貴重な経験だ。その経験の価値を、より高めるのがメタな視点だ。
メタな視点で学んだことは、抽象的になりやすい。抽象化するから、他に応用できるからだ。本人だけなら、それで良い。
ただし、誰かに伝えるなら、もし相手が想像力の足りない相手なら、具体的な例も合わせて伝えないと、伝わらない。
そんなこともわかっているけど、この話の具体的な話を書くのは骨が折れる話だから、メタな話のまま、筆を置こうと思う。
この話は、メタな視点を持とうという、メタな話だった訳だ。