怒らない上司。個人的なエピソード

Yoshihito Kuranuki
4 min readApr 17, 2018

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先日の私のブログ記事。怒らない上司のほうが人が育つという話。

そういえば、私自身も、若かりし頃に当時の上司とのエピソードがあったことを思い出したので、ここで書き留めておこう。

社会人の2年目にあがる頃だったか、システム会社に入社して1年が過ぎて、それなりに仕事もできるようになったと自信も付いていた。

大手のシステム会社で、プログラミングができて技術に詳しい若者は珍しい時代だった。大抵の若手はプログラミング経験もなく、プロジェクトマネージャを目指していたからだ。

技術的なスキルで一目置かれたこともあり、技術に関しては割と好きに新しいことにも取り組ませてもらっていた。私の所属していたチームが、新しい技術を取り組むのが好きなところだったのも幸いした。

3000人ほどの会社だったので、それなりの規模だが、新卒採用の最後の面接は役員面接があり、そのときに面接してくれた役員が、入社後の私にとっては実際に会える中では最も上位になる上司となった。

彼は一部上場の役員でありながら、フランクな性格で、よく現場のフロアにも訪れて、社員からも人気のある人だった。

けっして技術に詳しいわけでもなかったけれど、どんな社員にも気軽に声をかけて、くだらない話にも付き合ってくれるし、良いところを褒めてくれて、励ましてくれる。そう、彼は「怒らない上司」だった。

あるとき、私のところにも来てくれて話をした。私が、新しい技術が好きで、よく取り組んでることを知った上で、こう言ってくれた。

「どんどん新しいことやれよ、なんかあったら責任はとったるからな。このはげ頭は下げるためにあるんやから。まだ禿げてないけどな」

ハハハと笑いながら去っていく姿を見ながら私の考えたことは、プロジェクトに失敗して、この上司には恥をかかせたくないな、という思いだった。

その後、この言葉を思い返して、大きな宿題をもらったことに気づく。

当時はまだ、新しい技術に取り組んでばかりいて、あまりプロジェクトの成否まで気を付けてなかった私だ。そのことを諌められていたら、きっと新しいことに取り組むのをやめていただろう。

しかし、新しいことに取り組め、なんだったら失敗しても良いと言うのだ。そう言われると成功させたいという気持ちになるし、かといって新しいことに挑戦するのをやめるわけにもいかない。

かくして、この怒らない上司の言葉は、新しいことへの挑戦をしながらも、本人の意思でプロジェクトを成功させるように向かせることになった。

この両立は、とても難易度の高いことだ。新しい技術にはリスクがつきものだ。失敗しないだけなら枯れた技術を使う方がいい。しかし、それではエンジニアとしてモチベーションが上がらないのも知っていた。やるしかない訳だ。

挑戦しながら成功する、その縛りの中で努力をしたこと。バランス感覚を身につけられたこと、ビジネスを意識し続けたことは、今の私の血肉となっている。だから、あのときの言葉に、とても感謝している。

これが一つの道しるべ。今、ある程度の立場になって、次の世代に伝えていければ、とも思う。

Photo by Marc-Olivier Jodoin on Unsplash

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Yoshihito Kuranuki

ソニックガーデンという会社を経営しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」の精神で、プログラマという仕事を誇れるものにすることがミッション。 ブログ http://kuranuki.sonicgarden.jp ※2019年1月に新刊「管理ゼロで成果はあがる」でました。→ https://goo.gl/reZez1