Mediumのマネタイズと、月額定額の安全な世界を考える思考実験

Yoshihito Kuranuki
6 min readFeb 18, 2017

Mediumも一つの営利企業が提供するサービスなので、終わってしまうリスクはある。それを言い出せば、GoogleもFacebookもそうなので、終わってしまうリスクはある。

一つの企業が運営するサービスに全てを依存するのは非常に怖い。広く使われていれば安泰かというと、Twitterに対する不安感は拭えない。特に、ビジネスモデルが確立していないものは危うい。

この記事の公開日は2016.4.7で、その後に、こういう記事が出ている。2017年1月の記事だ。

広告ベースのビジネスモデルをやめるということは、プロモーション記事の方向性はやめたということだろう。そうなると残された次の方向性は、有料プランということになる。そして次の記事。

考察記事だ。少し批判に寄りすぎている気もするが、一つの側面だろう。

それによると、サブスクリプションモデル、出版業界のNetflixというキーワードが出てくる。”xx業界のNetflix”は最近よく聞くフレーズだ。

広告以外のビジネスモデルを追求する流れは出て来ている。Mediumには、その新天地をうまく切り開いてほしい。

「Mediumでは、昨年、20億の単語が書かれた。記事にして750万本、月間6000万人の読者がいる」

既にこれだけのユーザと認知を獲得しているのだから、うまい取り組み方はありそうだ。

ユーザの視点からで言えば、どういったビジネスモデルが望ましいだろうか。ユーザというより私の思考実験。ここからは、それを考えてみよう。

まず私としては、Mediumのコンセプトとユーザ体験には、非常に共感しているし、満足している。他のブログサービスに比べて、書き心地も居心地も良い。

だから、もしMediumに有料プランがあったとしたら、普通に有料のホスティングサービスを使うのと同じように、お金は払うと思う。実際に、今の自分のブログは、あるホスティング会社にお金を払って、Wordpressを動かしている。だから、私なら書く側だけど、支払う気はある。

これだけユーザがいれば、そんなに月額を高額にしなくても成立するのではないか。そうでなくても1回飲みに行くくらいの金額なら支払う。

読む側からの課金はどうか。Noteのような課金モデルはやめてほしい。記事単位の課金になると、課金される記事の書き方やテクニックが重宝されて、本当に価値のある記事が読まれなくなる。まるで、SEO技術の高い記事の方が、中身のある記事より読まれるような状態だ。

読む側としても、一つ一つの課金は、チリツモで高くなる。記事単位の課金は、本と違って、ボリュームがないのだ。ボリューム対価格で言えば、かなり低くなる。継続マガジンの購入もしかりだ。

だから、いっそのこと、サービス全体を読むのに課金してほしい。月々定額で、全ての記事が読めるなら支払う。記事ごとよりも、お得な感じがするし、課金テクニックが効かないので、純粋に良い記事が評価される。

HuluやNetflixのように定額見放題の方が、1個1個の動画で課金するサイトよりも流行るのはわかる。1個1個、課金するかどうか判断するのが、面倒なのだ。だから、定額読み放題にするのは良さそうだ。

そうなると、無料で読めるコンテンツが必要かどうか、無料コンテンツと有料コンテンツを共存させるべきか、という点について考える必要がある。

無料で読めることが、実は、コンテンツに対して良い効果をもたらさないのではないか、という気がしている。無料で読めるということは、誰でも読めるということで、多くの人の目に触れることはあるが、読者の質を下げることになっているのではないか。

それによって、心ない批判が生まれて、書き手が傷ついて書けなくなるのは損失だ。作品を書くからには、どんな批判も受け止めなければいけない、というのもわかるが、無料の読者が相手ではフェアではない。

だから、むしろいっそのこと、すべてを有料コンテンツにして、課金しないユーザは読めないというようにしても良いのではないだろうか。Netflixのように、お試しで読める期間はあっても良いけれど。その辺りは些細なテクニックだ。

書き手も読み手も、双方が、月額料金を支払うことで、読み書きのできるようになるサービスってどうだろうか。月額定額さえ払えば、書き手にも読み手にもなれる。非常に安全な場所ができるのではないか。

それをゼロから立ち上げるのは大変だが、Mediumの今の基盤があれば、できるのではないだろうか。

それらの基本料が、プラットフォームの運用・運営費になる訳だ。Mediumのバージョンアップも運用も安定することだろう。お金を支払っているのだから、ユーザにとっても安心して使い続けることができる。

そして、基本料はプラットフォームで徴収するが、さらにその上で、記事の作者に対して、読者が投げ銭をできるような仕組みがあると良い。お金そのものでなく、仮想ポイントみたいなものでも良い。読んでからポイントを渡せる。書き手には一部が還元される。

街に住むには税金を納めないといけないし、電気ガス水道を使うにも基本料金を支払わないといけない。その上で、商売をしてお金が流通すれば、さらに街は栄える。そんなイメージだ。

これは少し過激な考えだし、実際には批判を受けても無料で読んでほしいという作者はいるだろうから、この実現は難しそうに思うが、ここまで振り切れたら、面白い世界になるのではないだろうか。

Mediumが実際にはどういった戦略を採っていくのか、見守りたい。

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Yoshihito Kuranuki

ソニックガーデンという会社を経営しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」の精神で、プログラマという仕事を誇れるものにすることがミッション。 ブログ http://kuranuki.sonicgarden.jp ※2019年1月に新刊「管理ゼロで成果はあがる」でました。→ https://goo.gl/reZez1