スタートアップの資金調達相場を語る

StartupList
7 min readMar 6, 2018

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起業家コミュニティを運営してここ数年間で、エンジェル期〜Pre-SeriesA期のスタートアップ数百社の資金調達について相談にのってきました。

そろそろどんな相場観で市場が動いているのかアウトプットを出したほうが業界の情報透明化および健全化に貢献できると思ったので、相場観について具体的な数字を公開したいと思います。

【追記あり】資金調達額と放出する株式割合も記事に入れました。また、ここの数字は2017–2019年の数字ですので将来的に相場観も変わってくるかと思います。以下の起業ログというメディアに情報を集約させ始めました。

より詳細な最新版にしました(2019年10月)

2020年3月25日現在、コロナウイルスの影響で市場環境が大きく変わってきました。それもあり、現時点でアクティブな投資家を可視化する記事を作成したので以下、ご活用ください。

【エンジェル〜シード期の資金調達相場】

Postは資金調達後の時価総額を指します。Pre-Value + 資金調達額 = Post。トラクションはユーザー数や売上等の実績や勢いを表します。

①チーム有り・プロトタイプ無し・トラクション無し
→Post2,000万円〜1億円(調達額は500〜1,000万円程度)
※人のみを見て投資する投資家やインキュベータが主なプレイヤー
※事業アイディアが固まる前に一緒に考えてくれたりもします。

②チーム有り・プロトタイプ有り・トラクション無し
→Post1億円(調達額は1,000万程度)
※主にエンジェル段階寄りのシード投資を行うVC
※プロトタイプ事例集はこちら

③チーム有り・プロダクト有り・トラクション無し
→Post1億円~2億円(調達額は1,000〜2,000万円程度)
※通常のシード投資を行うVCは大体ここが対象

④チーム有り・プロダクト有り・トラクションが出てきている
→Post2億円〜5億円(調達額は2,000〜5,000万円程度)
※ここは挑戦する領域の市場規模やトラクション状況の期待感等で変動

上記が実際に起業家の資金調達を支援していく中での企業価値の相場観です。この評価額をベースとして、株式を数%〜20%程度まで放出して資金調達する場合が多いです。偶にそれ以上の株式を放出する場合もありますが、それをしてしまうと次の資金調達でいくつかのVCが投資をしない(少なくともやり辛くなる)のでオススメしません。

この数字を資金調達済みの起業家や投資家にヒアリングをして、腹落ちすると言われているので概ね間違ってないと思います。

では、シードの次、シリーズA以降段階の相場観はどんなものか。

有り難いことに500Startups Japanの澤山さんが登記簿等より調査してきた記事を公開されているので、そちらを是非ご覧ください。

各ラウンドのポストバリュエーションの中央値は、シリーズAが11.7億円、シリーズBが18.9億円、シリーズCが35.5億円、シリーズDが66.2億円であった。もっとも、この項目は市場トレンドやカテゴリによっても大きく変わってきそうだ。

調査結果も踏まえると、シード段階とシリーズA段階でバリュエーションが大きく変わっています。今回、このシード段階とシリーズA段階を隔てる壁についても図も交えて簡単に触れたいと思います。

スタートアップ領域にいる方はほぼ必ず耳にしている概念としてリーンスタートアップがあると思います。その中に出てくる9つの要素と経営チームを縦軸に並べ、事業検証フェーズを横軸に並べたのが下図となります。

シード期は価値仮説の検証、シリーズA以降は成長仮説の検証

シード段階はここでいうProduct Market Fitまでの「価値仮説」を検証している段階。シリーズA段階は価値仮説の検証が完了し、「成長仮説」に踏み込んでいる段階となります。

自社の事業が、上図においてどの検証フェーズにいるのか。検証がどこまで確からしく出来ているのか。検証が確実であるほど不確実性は減る=価値は上がります。

是非これから起業される方も、現時点で起業されている方もこの図のどこに自分たちが位置しているのか考えていただき、自社の資金調達活動に活かしていただければと思います。

【追記】改めて今後スタートアップとして資金調達や事業成長を考える方向けの記事を作成しました。以下リンクを貼っておきますのでご参照下さい。

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