事業計画の理想と現実の乖離~経営戦略の考え方について~

StartupList
5 min readApr 14, 2019

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なぜ事業計画に現実感がでないのか?

初期段階(シード期)の起業家と面談をする中で、たびたび事業計画の理想と現実のギャップに違和感を感じている起業家と出会う。

曰く、「支援者に事業計画を作れと云われて作ってみたけど、現実に沿った計画にならず、数字遊びになってしまう」と。

なぜ事業計画が現実と乖離をしてしまうのだろうか?

問題の根幹は「スタートアップと中小企業の事業モデルの違い」にある。

スタートアップとは新しいビジネスモデルやプロセスの構築を通じて短期間でEXIT(IPO・M&A)を目指して急成長する会社のことである。一方で中小企業は既存のビジネスモデルで成長を目指す会社である。

一般的な中小企業のモデルであれば、手垢のついた事業モデルであるため、事業の予測も立てやすく、実情に沿った事業計画を描くことができる。しかし、スタートアップ企業の場合は新しいビジネスモデル、新しい仕組みを活用した事業となるため、事業の予測を立てることは困難となる。

もちろんスタートアップにとって事業計画なんて必要ない!って言いたい訳ではないが、緻密な計画を練ることにほとんど価値はない。初期はキャッシュフローの流れを把握していくだけでも良いと思う。

ほとんどの場合、何度も何度も事業モデルを変えながら事業構築をしていくのだから、試行錯誤を重ねていく中で計画を作ればよい。この感覚が無い支援者からのアドバイスを真に受けすぎてはいけない。

事業計画が必要なタイミングは?

では、スタートアップにとって事業計画が真に必要となるタイミングはいつなのか。個人的に①投資家からの資金調達時、②Product Market Fit(以下、PMF)した後の2つかなと思う。

投資家から資金調達をするためには、資金使途を明確にする必要がある。

ビジョン・達成したい目標があるなら、そこから事業戦略、組織戦略、資本・財務戦略は三位一体で繋がっている。事業戦略上のどの地点のマイルストーンを達成するために必要なお金なのか、明確にした上で資金調達を行うのが良い。事業も、組織も、資本も、すべて連動するもので、本当に経営上手な起業家は事業戦略・組織戦略部分に投資家をめちゃくちゃ巻き込んで、戦略に組み込むこともできる。

ただ一方で、起業することは決めているけど何をするかはほとんど決まっていない状態で、起業してしまうサバイバル型の起業家もいる。そういう方は行動ありきで事後的に内省することで、業界理解の深化やビジネススキルの獲得をしていく必要がある。そのため、投資と同時に事業モデルも事業計画も一緒に考えていくインキュベーターやメンター(最近だとエンジェル投資家が増えている)と共にやると良さそう。

もう1つ、PMFした後に事業計画を立てると良い理由は、事業を伸ばすために必要な要素を数字に落とし込めるためだ。

以前私が作った図をもとに説明すると、プロダクトが市場に投入され、市場から十分に価値があるものと評価されている段階がPMF。ここまで来るとその価値あるプロダクトを成長させるために必要なコスト(1人当たりの顧客獲得単価=CAC等)や、LTV(顧客1人当たりの生涯価値)といった重要指標が見えてくる。

数字に落とし込める段階まで来ているのであれば、現実に沿った形で将来の事業計画を立てることができる。

起業家にオススメな経営戦略ピラミッド

具体的な考え方の事例として私が運営するStartupListの経営戦略構造図を以下に記載する(ページ数は気にせずで)。

基本的には大上段としてこの構造があり、目標達成のために必要となる戦略→作戦→戦術とそれを支える兵站について実行計画を立てている。PMF後に急成長する事業・組織を支えるためにも、事業計画が真に必要になってくる(私自身も最近必要に迫られて作りました。。)。

基本的な考え方が出来ているのであれば、あとは詳細をブレイクダウンしていき、スプレッドシートで数字管理ができる。このあたりを疎かにすると、30人・50人・100人の壁たちが立ちはだかるという話はよく聞くので、事業が明確になったタイミングにはしっかりと作っておきたいですね。

所感

まとめると、スタートアップ初期にとって事業計画はあってないようなものだけど、事業成長期には必ず必要になってくるからちゃんと準備しておくと良いねっ!って感じかなと。

ちなみに上の構造図をよりブレイクダウンして考える際に、より構造理解を進めるために必要な3つの図(?)的なものもあります。これは個別にお会いした方か、もしかしたらStartupList利用者のみに公開していこうかなと思ってます。私も頑張らねばー。

P.S. ブログ復活です。StartupListに拘らず徒然な記事も書いていきます。

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