人間は「二階建て」であり、
1階、2階の下に地下室があって
そこに記憶の残骸がある。しかし、本当の物語はそこにはない。
もっと深いところに”地下2階”があって、
そこに本当の人間のドラマやストーリーがある。僕は以前から地下一階の下には、
”わけのわからない空間”が
広がっていると感じていました。
多くの小説家や音楽家が、
記憶や魂の残骸が残っている
地下一階を訪れることで書いているが、それでは人の心をつかまえるものは生まれない。
人と違うことを書きたければ人と違う言葉で書け。
もっとも地下2階までいく
通路を見つけた人はそれほど多くない。実際に地下一階を訪れて書いた方が、
ロジカルな批評はしやすい。モーツァルトやサリエリもそう。
生きているうちに評価されたのは
サリエリだったかもしれない。でも何かを作りたいと思うならば、
地下のもっと奥まで行かなければならない。それをわかっている人は文学の世界では少ない。
僕は正気を保ちながら、
地下の奥深くへ下っていきたいと思います。(村上春樹のインタビューより)
「地下2階」とは、
私たちの潜在意識よりも
更に下にあるとされるもの。
村上春樹はその有り様を
「わけのわからない空間が広がっている」と述べている。
「心の五重塔」と綜合してまとめるなら
このように図解できる。
どこまで深いかわからない無意識の世界から
海洋深層水を汲み上げていることがわかる。
心の想像力を最大限に泳がせ
世界中の人々の心を打つ作品を編み出したのは、
この水源の力であると観てまず間違いない!
日本の基底文化にも
一貫した何かしらの伏流を感じている。
それが日本再生の指針になりうるなら、
その水源を浮かび上がらせることが肝心だ。