2022年2月時点から見るEthereumの現状

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Feb 26, 2022

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Photo by Jeremy Bishop on Unsplash

ここ数年、Ethereumエコシステムは目まぐるしく変化してきました。今後もこのような変化が続けば、数年後の景色は今見えているものとまったく異なっているかもしれません。この記事はブロックチェーンエンジニアとして活動している筆者から見たEthereumの現状を記録し、数年後に振り返るためのものです。なお、筆者の観測範囲は限られておりEthereumエコシステムのすべてを網羅できているわけではないことはあらかじめご了承ください。

L1は高級だが安定している

「Ethereumは金持ち専用チェーン」と揶揄されるようになって久しく、実際にエンドユーザーにとってはガス代の高さから、L1でトランザクションを発行するのは意味のある金額を動かすときに限られるような状態です。

しかしながらEIP-1559の有効化によりブロックに取り込んでもらえるガス代の予測が容易になったため、ガス代を惜しまなければブロックへの取り込みを延々と待たされることは少なくなりました。

筆者の肌感覚ではイベントによる突発的な混雑時でなければ、max feeをbase feeの2倍、max priority feeを2 Gwei程度に設定すればすぐブロックに取り込まれます。設定したmax feeすべてが徴収されるわけではないのもEIP-1559トランザクションの良いところです。

EIP-1559が与えた影響を定量的に知りたい方は以下の記事がお勧めです。

L2は発展途上で問題も多い

EthereumのスケーリングソリューションとしてはRollupが注目されています。Rollupとはオフチェーンで計算したL2トランザクションによる状態遷移を、セキュリティを担保できる形でまとめてL1に書き込む技術のことです。

RollupはOptimistic Rollup(以下OR)とZK Rollup(以下ZKR)に大別され、ORが異議申し立て(fraud proof)によりセキュリティを担保するのに対し、ZKRは正当性の証明(validity proof)によりセキュリティを担保します。

ORはEVM互換のL2チェーンを構成しやすいのが特徴で、すでにArbitrumOptimismがmainnetで稼働しています。ZKRは分散型取引所のdYdXや汎用スマコンプラットフォームのStarkNetがmainnetで稼働しているほか、EVM互換のzkSync 2.0がtestnetでの稼働を始めました。

筆者はArbitrumとOptimismを使用していますが、他のEVM互換L1チェーンと比較するとトランザクションの即時承認による圧倒的なUXの良さには目を見張ります。ただし即時承認はL1への書き込みが単一の主体によって行われていることに由来する点は注意が必要です。

またOptimismとdYdXにおいては過去に深刻な脆弱性があり修正が行われました。正しく実装されれば原理的にはセキュリティが担保されているといえど、ソフトウェアである以上バグによる問題とは無縁ではありません。

L2のリスクを確認したい方にはL2BEATを、手数料を確認したい方にはL2Feesをお勧めします。

主な用途はDeFiとNFT

Ethereumはセキュリティを損なわないスケーリングを志向していることから、用途としては大きな金額が乗るDeFiと、永続性を前提とするNFTが大きな割合を占めています。

DeFiにおいてはCurveConvexが存在感を放っています。CurveはAMM(Automated Market Maker)の収益を分配するトークンであるCRVを流動性提供者に対し配布しており、流動性提供者へのCRVの配布割合を決める投票権をCRVをロックした者に与えるve(Vote Escrow)メカニズムを内包しています。ConvexはインセンティブとしてCVXを配布しCRVを集め投票権を得ています。自身を利する流動性提供者にCRVやCVXを配布させ流動性を集めたいその他のDeFiプロトコルはCurveやConvexの投票権を得るために競い合っており、俗にCurve Warと呼ばれています。

その他のTVL(Total Value Locked)上位のプロトコルには、価格と金利が比較的安定している分散型ステーブルコインのDAIを発行するMakerや、借入によるポジション調整には欠かせないレンディングプロトコルのAaveがあります。

UniswapはV3で集中流動性提供という概念を導入し、少ない資本でトレーダーにとって有利な価格を提示できるようになりました。しかしながら流動性提供者にとっては価格変動に伴い不利な価格で約定することによる損失(IL:Impermanent Loss)も大きく、V3は主にILが出にくいソフトペッグされた通貨同士のペアで使われている印象です。

NFTについては筆者の土地勘がないため割愛しますが、大衆からEthereumを象徴する存在として注目を集めているように見受けられます。

おわりに

2018年からブロックチェーンエンジニアとしてのキャリアをスタートさせた筆者としては、ユーティリティが花開きスケーリングの道筋も付きつつあるEthereumを見て感動を覚えずにはいられません。この記事がEthereumの現状を理解する一助になれば幸いです。

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