LayerXを設立しました

LayerX
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12 min readAug 20, 2018

目次

  • はじめに
  • LayerXはどんな世界を目指しているのか
  • なぜ今ブロックチェーンに参入する決断をしたのか
  • 具体的にどのようなビジネスを考え、それはどんな戦略に基づくものなのか

はじめに

LayerX代表の福島です。2018年8月1日に株式会社LayerXは誕生しました。LayerXはブロックチェーンのテクノロジーに本気でコミットする会社です。日本では特に、投機的な側面で注目されがちなブロックチェーンの世界ですが、我々はインターネット以来の大きな波だと考えています。そこでの主役はもちろんテクノロジーの進化です。世界でいち早く、仮想通貨を合法化し、取引所の世界では世界をリードした日本ですが、技術的側面、プロトコルレイヤーの側面ではすでに海外に大きな差を付けられています。我々はここに危機感と、そして大きなチャンスを感じてLayerXを設立しました。

LayerXはテクノロジーの会社です。そしてインターネットの黎明期と同様、テクノロジーの世界では、R&Dへの圧倒的コミットと商業的成功を両立させた会社が世界を変えていきました。GoogleやAmazonは年間1兆円を超える研究開発費を投じており、それを支えるのは彼らのテクノロジーから生み出された莫大なキャッシュフローです。そしてそのキャッシュフローが次のテクノロジーの進化を促す、というサイクルが回っています。ブロックチェーンの世界でもこれと同様のことが起こると我々は考えています。ですので我々は「テクノロジーの会社である」と宣言することは同時に、未だマネタイズ領域が狭いと考えられているブロックチェーンの世界での早期的な商業的成功にもコミットするという宣言なのです。そしてそこで生み出したお金とそこに集まる情報から、日本発のテクノロジーの進化、プロトコルを出していくことでこの世界にコントリビュートしていきたいと思っています。

このポストでは「LayerXはどんな世界を目指しているのか」「なぜ今ブロックチェーンに参入する決断をしたのか」「具体的にどのようなビジネスを考え、それはどんな戦略に基づくものなのか」について我々の考えを共有したいと思います。

LayerXはどんな世界を目指しているのか

LayerXは「Evaluate Everything」というミッションをかかげてます。ブロックチェーンというのはある種の強制執行を伴った仲裁機関と考えることができます。そしてブロックチェーンが普及しきった社会では、すべてのものが金融的に扱われる社会が訪れると考えてます。金融的というとすべてのものが金儲け的になるのかと思うかもしれませんが、我々がいっている金融的というのは適切に未来の価値と今の価値が交換できるという意味です。

例えば、私は研究者のバックグラウンドであり、多くの友人が大学で研究という道を選びました。一方研究者の未来の価値と現在の価値でいくと、未来の価値に比重が多い職業と言えます。研究者が研究の種を作り、それが応用され、実社会に適用されてキャッシュフローを生み出すには非常に長い時間がかかるからです。これが例えば研究者の成果をパテントトークンみたいな形で権利を分割化、流動化できたらどうでしょう。仮に研究成果の進捗があるとパテントの価値は増えるはずです。そこの研究価値とリンクしたトークンを発行できると、はるか先だった研究のマネタイズポイントがより早くきます。このトークンを放出することで資金調達もできますし、仲間集めのインセンティブにも使えます。もしこれが実現すると、はるか先に実現するはずだった未来の価値を今の価値に変えることができます。その結果、夢半ばでキャッシュアウトして終わるはずだった研究が、継続され世の中に価値を生むまで支援される。結果として適切な価値の按分が行われるとするならばこれは世の中にとってとてもいいことだと思います。

もちろん今これが実現するかというと、そう簡単でありません。研究の進捗をどうやってブロックチェーン上にどうやって書き込むのか、またその「価値」をどうプロトコル上に定義するのか、その価値のコンセンサスをどう取るのか、その価値に紐づく権利の強制執行をどう実装するのか、その価値をどう流動化させるのか、など課題は山積みです。

われわれは一足飛びでそこに向かうのではなく、今できることと未来に起こることをテクノロジーへの投資でつなげていきます。そのために具体的にどういうビジネスから入り、どういうテクノロジーに投資するかを考えていますがここは後述とします。

もう一つ大きな文脈として、「個人」の時代とその信用創造というものがあります。かつて大企業にたいして間接金融をする銀行がうまれました。そして経済が分散化していきベンチャー企業の時代にはベンチャーキャピタルという直接金融が生まれました。そして現在はシェアリングエコノミー、インフルエンサー経済、クラウドワーカーなど「個人」が経済の中で大きな主体となっています。一方でそこを評価する主体、信用を供与する主体は追いついていません。「主体」という表現をしましたが、個人の時代にはこの「主体」が特定の機関ではなく、「プロトコル」になるのではと考えています。経済はより細かく、分散化されていきます。その中で、信用を供与するには分散的で、透明性があり、非改ざん性を持つ台帳が不可欠と考えています。「誰がいくらもっているか」を分散的に解決したビットコインはまさにこの最初の応用例と言えます。しかし現実の経済はより複雑です。ですので、個人への信用供与にあったプロトコルがどんどん誕生していくと思います。分散的になるということは、監査する対象が多いことになります。これを中央的に人手でやろうとしても無理があります。なのでインセンティブを通じて繋がり、自律的に強制執行されるプロトコルが生まれることが非常に大切です。これはGunosyで感じた情報の興味が多様化する中で個々人の興味にあったニュースのリストを人手で作るのは無理があるのと非常に似た問題だと思います。これを機械学習というテクノロジーで解決したのがGunosyです。LayerXはこのような文脈で経済主体が分散的になる世の中では、自律的で強制執行と結びついたプロトコルこそが必要不可欠なテクノロジーだと考えています。

少し長くなりましたが、LayerXのミッション「Evaluate Everything」に戻ります。今の市場経済で未来の価値と現在の価値が適切に交換できないような領域や、個人にどうやって信用を供与するか、などはすべてが「Evaluate Everything」されることで解決されると考えています。ブロックチェーンは価値の不均衡が起きている所、正しく評価がされていないところをただしていき、正しい人に正しいリソースが供与される、そのための「Evaluate Everything」を実現していきたいと思っています。

なぜ今ブロックチェーンに参入する決断をしたのか

では、なぜいまのタイミングで参入にいたったのかという話です。そもそも私がビットコインを知ったのは2014年です。その頃は非常にクールな仕組みである一方、まだまだ普及するのは先だろうなという感想を持ちました。その後Ethereumがでてきて、昨年の価格上昇により急激に優秀な人材の流入が始まりました。一部ではバブルとも揶揄されますが、大きなイノベーションにはバブルが伴うことがしばしばあり、またそのバブルが落ち着いたころ本物が出てくるという法則性もあります。注目が集まり、お金が集まり、そしてそれが優秀な人材をひきつけて、日進月歩でテクノロジーの進化、ビジネス環境の変化、レギュレーションが固まっていくなどしています。そんな中、中途半端なリソースで関わっていてもメインストリームにいるプレーヤーに集まるノウハウ、情報、そしてキャッシュフローにかなわなくなっていきます。

少し視点を変えてみましょう。ブロックチェーンの波はよくインターネット登場のアナロジーで考えられます。では、インターネットやモバイルインターネットの波に乗り、大きくなった会社はいつ生まれているか。インターネットで大きくなった会社の殆どは1995年-2000年の間に生まれています。モバイルインターネットでは2009–2012年に集中しています。ブロックチェーン領域で行くと、いまの中心プレイヤーはcoinbase(2012年), bitmain(2013年), Ethereum(2015年), binance(2017年)です。

なぜ、一定の時期に集中するのでしょう。大きなパラダイムシフトが起こるとき、それ以前と以降ではまったくもって違う勝ち筋、文化が生まれます。しかしそこで一度大きなプレイヤーが生まれると、今度は同じ勝ち筋を持って、研究開発費を回し、キャッシュフローをふやし、領域を拡大し、またそれを再投資するというサイクルが生まれます。インターネットではFAANGたちがまさにそうやって拡大していきました。一度競争のルールがかたまってしまうと二度と追いつけません。

ブロックチェーンの領域に目を戻すと、coinbase,bitmain,binanceはすでに数百億後半から数千億の利益を出していると言われています。またEthereumは時価総額3兆円をこえていて世界第二位の時価総額を持つ暗号通貨です。彼らはそのキャッシュフローをDEXやstablecoinを中心に今後ブロックチェーン領域で重要になってきそうな技術やプロジェクト,分散プロトコルに惜しみもなく再投資していっています。そうなると彼らがブロックチェーンにおける”FAANG”になっていくことはもう確定的な事実でしょう。

あらためて、その最初の波であるcoinbaseの創業は2012年です。インターネットやモバイルインターネットの年数がそのまま当てはまるとは限りませんが、そこからもう6年経っています。我々は2018年がブロックチェーン領域で大きなポジションを取れる最後のチャンスだと考えています。ブロックチェーンときくと、まだまだこれからだろうと思う方もいませんが、すでに起こっている事実だけでいうともう最後の窓がぎりぎりあいていて、今にも閉じようとしているくらいの時期なのです。これがLayerXが「今」ブロックチェーンに全力でかけてフルスイングする理由です。

具体的にどのようなビジネスを考え、それはどんな戦略に基づくものなのか

では、具体的にどのようなビジネスをLayerXやっていくのかという話です。前述で「われわれは一足飛びでそこに向かうのではなく、今できることと未来に起こることをテクノロジーへの投資でつなげていきます。」と書きました。LayerXで具体的に進めてるビジネスは3つです。

1. トークンコンサル
2. コード監査
3. マイニング

の3つをつくってます。それぞれ説明していきます。
まず大きな流れで、ブロックチェーン領域で最初にたちあがる領域は投資家とPJの関係だと思ってます。特にICOの規模は直近のQで$8Bまで成長しています。一方でそこでのアセットの管理の問題があったり、きちんと実態を持って実現されているPJは少なく、大きな課題となっています。そこに対して技術的なサポートのニーズが大きくあります。

ブロックチェーンの領域では従来のWebの領域とは違い、リーンにリリースして改善していくということが非常に難しいです。それは一度デプロイしたコードは基本的には変更できないですし、一度プロトコルに埋め込まれたルール(=インセンティブ)は簡単に変更できません。ですので初期のトークンのデザインや、セキュリティの監査が非常に大事になってきます。そのためにトークンコンサルとコード監査という2つの事業をはじめています。

次にマイニングビジネスです。マイニングはブロックチェーンのセキュリティを支える根幹ですが、そのシェアの殆どは中国にあります。これはブロックチェーンの未来にとって良い話ではありません。一方マイニングファームを始めようにも日本だと高い電気代や、運用ノウハウのなさから簡単には参入できない状況になってます。我々は独自に築いた海外ネットワークと、自社運用のノウハウから日本人でも簡単にアクセスできるマイニングビジネスの準備を進めています。これにより、世界中にマイニングが分散されることを推進していきたいと思っています。

最後にこれらがどんな戦略に基づくのか。それは最先端の情報とお金が集まる場所にいるということです。夢や理想論だけでLayerXのミッションは達成できません。Googleは検索エンジン、Amazonは本屋、Facebookは大学生SNSからはじまったように、インターネットの世界では、情報とお金が集まる領域にポジションを取り、研究開発費に投資し、それがさらにキャッシュフローに変わりまた再投資される。このサイクルを繰り返して成長していきました。

今後ブロックチェーン領域において、トークンコンサル、コード監査、マイニングの領域は最も情報とお金が集まる場所になると我々は考えています。そこで継続的に技術開発に投資していき、日本発のプロジェクト、日本発のプロトコルをどんどんだしていくことでブロックチェーン業界を盛り上げていきたいと考えてます。

またそのためにLayerXは仲間を募集しています。エンジニアはもちろん、グローバルに活躍したいビジネス職も募集しています。少しでも興味ある方はこちらのリンクからお願いします。

エンジニア: https://www.wantedly.com/projects/175017

BizDev: https://www.wantedly.com/projects/225562

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