お母さん、お父さん、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんへ。私達にとっても「黒人の命は大切」です。(Canadian Version — Japanese Translation)

Letters4BlackLives-Canada
7 min readAug 23, 2016

--

この手紙は、現在世界各国で進行中のプロジェクト『Letters for Black Lives (黒人の命と尊厳のための手紙)』の日本語訳です。このプロジェクトは『#BlackLivesMatter (黒人の命は大切)』運動への連帯を表明し、黒人を差別する態度や行動を撤廃するために必要な情報を様々な言語に翻訳し提供するために始まりました。この手紙は、この大事な問題について家族や周りの人々と率直に話し合いたいと望んでいる何百もの人々によって共同執筆されました。カナダ版の英語の手紙はこちら。

(shortened link for sharing: http://bit.ly/2bdIUIJ)

お母さん、お父さん、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんへ、

今日は大切な話があります。

数年前にアメリカで起こったトレイボン・マーティン射殺事件を発端に、アフリカ系アメリカ人の人達の抗議運動がニュースで流れるようになりましたが、私達にとっても黒人の人達はかけがえのない存在です。彼らは私の友達や同級生であり、パートナーであり、家族に等しい存在です。そして、依然として変わらぬ現状に置かれている彼らの身の危険を思うと、悲しみや不安を抑える事ができません。

この「現状」のほんの一例として、2016年7月5日にアメリカのルイジアナ州で起こった、お店の前でCDを売っていた黒人男性のアルトン・スターリングさんが警察に射殺されるという事件があります。その翌日にもミネソタ州で、車のテールランプが壊れていたため警察に止められた黒人男性のフィランド・カスティールさんが、同乗していた恋人と彼女の4歳の娘の目の前で射殺されました。

アメリカでは、2016年に入ってからこの2つの事件が起きるまでの間に、500名以上もの命が警察官の手によって奪われました。黒人は全人口の13%(10人に1.3人)しか占めていないのにもかかわらず、警察に射殺されるという場合においては確率が4人に1人に跳ね上がるのです。カナダの警察も、黒人をさも犯罪者かのように扱い、不公平に厳しく取り締まり、その結果として、刑務所では黒人の人口比率が一般社会と比較して異常に高くなっています。近年に限っても、アンドリュー・ロクさん、ジャーメイン・カービーさん、アブディ・ヒルシさん、ジャン=ピエール・ボニーさんなど、多くの黒人の人達が警察に射殺されています。このような事件で、加害者である警察官を警察が正当に処罰する事は滅多にありません。

私の黒人の友達や仲間は、肌の色が違うというだけで、日々この恐ろしい現実を生きています。

しかし、黒人の人達がこのような危険に晒されていると聞いても、すぐに「私たちとは違う人間」の他人事だと思い、彼らの気持ちを思いやれずに距離を置いてしまう事もあると思います。警察が「黒人を射殺した」と聞くと、メディアや日常会話で繰り返し誇張されている犯罪者としての黒人のイメージが浮かび、射殺された側が悪かったに違いないと決めつけてしまうこともあると思います。

ですが、この重く根深い問題について、私がこれまで学び考えてきた事について話したいと思います。もしかすると、あなたも同じように思っているかもしれません。

カナダでも、私たちがアジア人という理由で差別を受ける事はあります。発音を理由に見下されたり、「リーダーになるタイプではない」として機会を与えられないこともよくあります。アジア系移民の多くは、母国で受けた教育が十分なものではないという不当な理由で職業選択の自由を与えられませんでした。中には貧困にあえいでいる人達もいます。テロリストだと後ろ指をさされ、疎外される人達もいます。

しかし警察は私たちアジア人の子供や親を、黒人や先住民にするように、ただそこにいるというだけで射殺することはしません。黒人や先住民は雇用、賃貸、また多くの行政機関で差別的な扱いを受けがちですが、アジア人の私たちはそれほどひどい扱いを受ける事はあまりありません。

黒人の人達が私たちとは違った扱いを受けるのには理由があります。ヨーロッパ人はアメリカ大陸やカリブ海諸国を植民地化し、先住民から土地を奪い、黒人の人たちをアフリカから強制的に奴隷として連行してきました。何世紀にも渡り、彼らの子孫、コミュニティー、家族、身体は常に他の誰かの利益のために引き裂かれてきました。奴隷制度が終わった後も、彼らは人間ではないかのような扱いを受け、生活を立て直すためのサポートはほとんど受けられませんでした。黒人の人たちは現在に至るまで、選挙権や土地や家を所有する権利のために戦い、いつの時代も暴力にさらされてきました。

黒人の公民権運動の活動家たちは、黒人の人権だけではなく、私たちアジア系カナダ市民のためにも力を尽くして戦ってくれました。私達アジア人が現在享受している権利を勝ち取るため, 黒人活動家たちは殴られ、蹴られ、刑務所に閉じ込められ、無残に殺されもしました。私達は、彼らと共に、人種間の偏見や憎しみを煽るような社会の仕組みと闘う責任があるのです。カナダにいる黒人の多くは、私たちと同じように、自分の家族の安全や幸せを願い、移民や難民としてカナダへ渡ってきました。黒人の人達の経験と私達の経験は全く同じではありませんが、確かに繋がっています。

だからこそ、私は「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」をはじめとする、すべての黒人解放運動を支持します。私は黒人の人達に対して偏見的であったり、人として蔑むような言動に対して声を上げます。それは時には、周りの人達や家族団欒の空気を壊してしまう事もあるかもしれません。ですが、それは決して非難しているのではなく、「この問題をみんなで一緒に考えよう」という呼びかけなのです。

法治国家の機関として、緊迫した状況を緩和させる訓練を受けたプロであるはずの警察に、正当な法の手続きを介すという人権を踏みにじられ、大切な人を無残に殺された両親や兄弟、夫や妻、子どもたちの絶望と悲しみを想像してみてください。私がもし、この暴力に抗議する声を上げ、彼らと共にデモなどに参加することがあれば、どうか理解し支えてください。そして、この手紙を周りの人達に見せ、被害者の方達と寄り添い、一緒に声を上げてほしいと伝えてください。確かに、声をあげるのは怖いことです。しかし、本来ならば私たちを公平に守るべき機関が同じ市民の命を危険にさらしている今、私たちが沈黙し続けることはできません。この問題を他人事としない人が増えるという事は、世間の風潮を変えるための大事な一歩なのです。

あなたの子どもとして、あなたがこの国に長く険しい道を歩みながらたどり着いてくれたこと、決していつも親切とは言えないこの地で一生懸命暮らしを築いてきてくれた事をとても誇りに思い、深く感謝しています。私たちが同じ苦労をせずに済むように、より良い暮らしができるようにと、この差別と偏見に満ちた国で歯を食いしばって生きてきてくれた事も知っています。だからこそ、私たちの友達、愛する人達、隣人すべての人が安心して暮らせるようになるまで、私たちはこの問題に一緒に立ち向かっていくのです。私たちが描くカナダはすべての人が警察の暴力、人種差別、すべての偏見と抑圧を恐れずに生きていける場所です。これが私たちの望む未来であり、あなたの望む未来であって欲しいと願っています。

愛と希望を込めて、

あなたの子どもたちより

--

--