国際惑星地球年終了記念イベント「惑星地球フォルム2010 in アキバ」

国際惑星地球年(IYPE)終了記念イベント「惑星地球フォルム2010 in アキバ」2日目の午後に参加した。
 
まず、宇沢弘文東京大学名誉教授による記念講演「社会的共通資本としての地球をまもる」が行われた。宇沢先生は81歳とは思えないほど色つやがよく、背筋もピンとしておられ、大変穏やかな、しかし切々とした語り口であった。昨年ブループラネット賞を受賞されたことは記憶に新しい。経済学者が地学系イベントに登場するのは珍しいようにも思えるが、宇沢先生は元々東大数学科出身で、経済学に転じてからも数理経済学を研究されていたから、実はそんなに遠いわけではないのかもしれない。
 
ブループラネット賞の受賞は、地球温暖化対策の理論的な枠組みとして社会的共通資本の概念を提唱した業績が評価されたものである。宇沢先生によれば、社会的共通資本とは、人間個人や社会にとって大切なものであって、共通財産として守らなければならないものだという。ここでは特に自然環境をさすが、これは誰かが所有できるようなものではなく、本来は経済学の対象ではない。排出権取引は、自然を私有化して取引するものであって、反モラル的行為である。1990年にローマで開催された地球温暖化に関する経済学者の会議で比例的炭素税を提案した。これは発展途上国からの反対の強い各国一律の炭素税ではなく、国別に一人当たり国民総所得に比例した炭素税を導入しようという考え方である。京都議定書で日本に課せられた6%にしても、鳩山政権が掲げる25%にしても、炭素税の導入なしには実現不可能だという。
 
記念講演に続いて、パネルディスカッションが行われた。パネリストは、日本科学未来館キュレーターの荻田麻子さん、成蹊大学専任講師の財城真寿美さん、元三井石油開発(株)専務取締役の佐々木詔雄さん、時事通信社防災リスクマネジメントWeb編集長の中川和之さん、日本ジオパークネットワーク会長の米田徹糸魚川市長の5名。日本学術会議IYPE小委員会委員長の佃栄吉産総研地質標本館長がモデレータを務められた。年齢、性別、職種など、いろいろな意味でバランスのとれた人選だと思う。
 
最初に各パネリストがそれぞれの活動などについてプレゼンを行った。佃館長は、IYPEの一環としてジオパーク、地質の日、地学オリンピック、惑星地球写真コンテストに取り組んできたことを紹介した。荻田さんは、2007年の「地下展」について紹介した。浅い所から深い所へ、また現在から過去へと遡るように展示物を配置するなど工夫を行ったという。財城さんは気象庁による近代気象観測が始まる以前の気候を復元するため、歴史学者と協力して古文書を分析していることを紹介した。佐々木さんは退職後、会社での経験を活かして「秋田まるごと地球博物館ネットワーク」を作り、秋田県内のフィールドを調査したり、子供向けに貝化石の採集体験を実施していることなどを紹介した。中川さんはジャーナリストらしい熱っぽい口調で、阪神大震災の経験から何か伝えなくてはいけないと思い、地震火山こどもサマースクールを実施していることを紹介した。米田市長は政治家らしいよく通る声で、市町村合併後の自治体の置かれた厳しい状況、ジオパークの理念が地域住民に受け入れられやすいこと、地域を超えて連携していくことの必要性を訴えた。
 
さらに各パネリストから、今後の方向性についての提言が行われた。荻田さんは未来館での経験から様々な人の交流の重要性を訴えた。財城さんは自身の研究から文理の壁を越えることの重要性や、そうした他者との関わりがポスドク問題へのヒントになるのではないかということを示唆した。佐々木さんは、人的資源としての定年退職者の有望性を示した。全体の議論では、双方向に伝えるにはどうすればよいか、ということが話題になった。中川さんは、地震火山こどもサマースクールは、子供が専門家の難しい言葉をなんとか理解しようとして、自分でわかりやすい言葉に置き換えようとするなかで、子供と専門家が共に学ぶ場になっているとコメントした。専門家は、分からないことも含めて説明しようとすべきである(奇しくも今日、「いきいき研究室増産プロジェクト」のブログに同じ趣旨の話が紹介されていた)。
 
パネルディスカッションを通して、文系・理系という区分やセクター間の壁を越えることの必要性、大人(専門家)が子供(一般人)に一方的に教えるのではなく、大人(専門家)も子供(一般人)から学ぶことがあるということ、ただ分かることではなく共に考えることが大事だということなど、いろいろと考えさせられた。

ブログ「たまには地球(した)を向いて歩こう。」2010.03.28より再掲

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.