文部科学省第51回科学技術週間サイエンスカフェ「パッション・フォー・モスワールド」

「モス」とはコケ植物(厳密には蘚類)のことである。私はこのタイトルを見て、きっとコケ植物についてのマニアックで博物学的な話が展開されるんだろうと想像していたが、参加してみるとそれ以上だった。
 
講師は理化学研究所の井藤賀操さん。第1部では、コケ植物が生命の立派な一員であること、4億年前に登場した最初の陸上植物以来の独立したグループであること、コケ植物が蘚類、苔類、ツノゴケ類に分類されること、といった具合にコケ植物の基礎知識が紹介された。それから「多様性」とは何かを「感じて」みよう、という訳で、我々は種類が多く、個体数が平均しているときに「多様性」を「感じる」が、それが数理的にも示されていることが紹介された。このようにコケ植物と多様性についてある程度参加者が理解したところで、駆け出しの研究者だった頃の井藤賀さんが、いかにコケ、中でも苔類の絶滅危惧種に魅せられ、山野を駆け巡っていたかを熱く語られた。
 
第2部では、文科省リーディングプロジェクト(LP)での井藤賀さんの研究内容が紹介された。廃棄物の焼却灰から溶出する有害物質を軽減するというのがこのLPの目的であるが、この中でヒョウタンゴケという蘚類の1種が、高濃度の鉛を蓄積することを発見したという。この研究は井藤賀さんにとって苔類から「パッション・フォー・モス(=蘚類)ワールド」への移行期に当たるという。(話の内容は大変面白いのだが、ここで使用されたプレゼンが専門家向けのものを流用しているらしく、一般向けにはわかりにくいのが少し残念だった。)
 
第3部では、井藤賀さんの現在の研究内容が紹介された。非鉄金属メーカーとの共同研究で、携帯電話などの廃棄物からコケを利用して鉛や金のリサイクルを試みているという。その他にも現代社会ではビル緑化パネルやインテリアにコケが利用されるなど、じめじめした所にひっそりと生えているだけのコケから、利用されるコケへと変化していることが熱く語られた。
 
全体を通して井藤賀さんのコケへの熱い情熱がビンビンと伝わってくる90分だった。
 
会場の丸の内カフェでは「科学技術における「美」パネル展」も開催中で、会場の雰囲気を盛り上げていた。丸の内カフェはサイエンスカフェを開催するには理想的な空間だと思う。また、すっかりお馴染みになった「一家に1枚シリーズ」も配布された。今年は「未来をつくるプラズマ」で、宇宙がプラズマに満ちていることや太陽も火もプラズマであるといった基礎知識から、様々なプラズマの応用例まで1枚のポスターで紹介されており、なかなかよくできていると思う。

ブログ「たまには地球(した)を向いて歩こう。」2010.04.18より再掲

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