第18回東京大学理学部公開講演会「情報と物質~世界を決める2つの要素~」

情報と物質。考えてみれば理学というものはこの2つに集約されるのかもしれない。今日の講演会はその橋渡し的な研究の紹介だったといえよう。
 
光でON-OFFする物質を創る(大越 慎一 理学系研究科化学専攻 教授)
 
化学のアプローチは、原子レベルから新しい働きをする物質をつくること。有用な物作りを追求する工学と、原理の追求を基本とする理学の境界に位置する分野と言えるかもしれない。今回の講演では、光照射により金属状態と半導体状態の間を行き来する物質や、光により常磁性体と強磁性体の間を行き来する物質など、これまでになかった物質が最近2~3年の間に作られてきたことが紹介された。これらが具体的にどのように役立つのかは今後の話だろうが、これからの展開を期待したい。
 
モデルと本物:化学と生物学の場合(萩谷 昌己 情報理工学系研究科長・理学部情報科学科 教授)
 
二葉亭四迷の文章などを引きながら「モデル」とは何かをわかりやすく解説。更に、モデルにも様々な精度のものがあること、大雑把なモデルでも目的によっては有用なことがあること、既存のモデルを粗くすることを「抽象化」と呼ぶことなどを、電子投票プロトコルやDNAシステムなどにおける「プロセス計算」と呼ばれるモデル化やそれを一般化した「グラフ書き換え系」を例に解説されていた。情報科学は(他の)理学とは多少毛色の異なる分野に見えるが、実は化学や生物学にも同じモデルが応用されており、実はとても密接な関係にあることが理解できた。
 
原子核の新しい顔(大塚 孝治 理学系研究科附属原子核科学研究センター長・物理学専攻 教授)
 
原子核にまつわる様々な話題について、数式や記号を使わず分かりやすく解説して頂いた。ウランや金などの重い原子核は、超新星爆発によるrプロセスと呼ばれる現象によってできると考えられている。このとき安定には存在しないエキゾチック核が短時間のうちに作られては別の核に変化していく。このような過程を調べるためにRIビームという日本が世界に誇る技術が使われているという。原子核と言うともうよく分かっているような気がしていたが、エネルギー問題とも関係が深く、実はまだまだ解くべき謎が多い分野であるということが理解できた。
 
今回は日常から縁遠いと思われがちな理学の中でも、比較的身近に感じられる話題が多かったと思う。また、オンライン中継も定着したようで、内容だけでなく運営面でも大変優れた講演会だと思う。
 
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/event/public-lecture18/

ブログ「たまには地球(した)を向いて歩こう。」2010.11.07より再掲

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