第2回東京国際科学フェスティバル

9月11日から約1か月に渡って開催された第2回東京国際科学フェスティバルも、今日で最終日。そこで、150以上もあったイベントの中から、少ないながらも自分が参加したイベントについて振り返ってみたい。
 
●企画展「あしたのごはんのために―田んぼから見える遺伝的多様性」(国立科学博物館)
 
イネを始めとする農耕を題材に、遺伝的多様性とは何かを考える企画。我々は田んぼを見て、自然がいっぱいだなどとよく思うが、考えてみると田んぼは元々の生態系を破壊して人工的に作られたもの。田んぼだけでなく、人類は農耕によって大きく生態系を改変してきた。だからといって人類は農耕をやめるわけにはいかない。遺伝的多様性を失わない農耕とは何か。そういった研究が進められている。
 
●science talk live @WaMuse 生駒大洋さんが語る(9月26日)
 
吉祥寺の商店街に面した、緑に囲まれた小さなレンタルスペースで開催された、とてもアットホームな感じのお話し会。ゲストスピーカーは木星の大気や形骸惑星などの研究をされている東京工業大学の生駒大洋助教。パワポも資料も使わず、研究分野を選ぶまでの話や現在の研究の話などをざっくばらんに話していただいた。
 
●Dr.ナダレンジャー 防災サイエンスショー(10月9日)
 
クロージングイベントの1つ。子供たちに大人気のDr.ナダレンジャーこと防災科学技術研究所の納口恭明さんが登場。司会は、こちらも大人気のさかさパンダさん(覆面どうしだ!)。雪崩、液状化、ビルの固有振動についておもちゃを使って楽しく解説。Dr.ナダレンジャーさんは子供の心のつかみ方が大変うまい。出で立ちも道具も、大人の目で見るとあまりにもつっこみどころが多過ぎて、心の中では笑いながらもどこからつっこんでいいか途方に暮れてしまうが、子供は正直で容赦ないものだから、すぐに反応してくれる。そういう計算がちゃんとできているところに感心させられる。でも子供だけを見ているわけではなく、大人向けのジョークもちゃんと用意してあるところもすごい。
 
●2010年度理化学研究所科学講演会(10月9日)
 
詳細はこちら。少し遅れていって野依理事長のお話を聞けなかったのは、Dr.ナダレンジャーを見ていたから…。
 
●アラスカで見た地球温暖化の現状~ディスカバリーチャンネルにみる環境保護の新しい形~(10月10日)
 
クロージングイベントの1つ。ディスカバリー・ジャパン社長のジェイムズ・ギボンス氏による解説付きで、アラスカの氷河の融解や生態系の変化に迫る番組を鑑賞。氷河の甌穴に降りて行って氷河が融けてできた激流に流されそうになったり、ホッキョクグマやクジラに襲われそうになったりするなど、かなりスリリングな場面もあった。日本の科学番組ではなかなかここまではできないだろうなぁと思った。
 
●歌う サンゴの海の生きものたち(10月10日)
 
クロージングイベントの1つ。歌う生物学者こと東京工業大学の本川達雄氏による講演(あるいはコンサート)。サンゴをはじめとする生物の共生関係について子供にもわかるようにやさしく解説しながら、みずから作った歌を歌う。Dr.ナダレンジャーと同じで子供への話し方がとてもうまい。しかし内容は子供向けに決して妥協していない。途中からはどちらかというと大人向けに、生物多様性について語る。生物学は覚えることが多くて大変だというが、それはまさに生物の多様性をあらわしているのであって、多様なものを多様なまま受け入れるべきではないかというようなことをおっしゃっていた。覚えることの多い生物系を敬遠して物理系に走った我が身としては耳の痛い話であった(今は反省して生物系にも興味を持つようにしているが)。
 
●科学を文化にII~これからのニッポンの理科~(10月10日)
 
クロージングイベントの締めくくりの企画。理科教育界のリーダー的存在である縣秀彦氏、左巻健男氏、滝川洋二氏による鼎談。司会はさかさパンダさん。縣さんは科学フェスティバルとは何かというテーマで、英国に始まった世界の代表的な科学フェスティバルや日本の科学フェスティバル(サイエンスアゴラ、科学の祭典、函館と東京の国際フェスティバル)について現状を解説。左巻さんは理科教育の現状について。特に高校で理系の生徒が実験をさせてもらえないという話が印象的だった(言われてみれば確かに自分も高校では実験をしたことがない。立派な実験室があったのに)。滝川さんは1992年から続けてきた青少年のための科学の祭典や実験教室、出版、テレビ出演等のこれまでのガリレオ工房の活動について。科学の祭典といえば昔は科学技術館のイベントというイメージだったが、今では全国各地で開催されている。ちなみに東京大会(小金井市)はこの東京国際科学フェスティバルの中の位置付けで開催された。また、左巻さんと滝川さんはステージ上で実験も行った。どちらも簡単にできて興味を引くような実験だった。さて、テーマの「科学を文化に」については、科学を地域に根付かせることが必要で、そのためには科学フェスティバルを各地で開催すること、研究機関だけでなく科学好きの市民がみずから企画すること、小学校の先生にもっと理科を得意になってもらうことなどが挙げられていた。田舎育ちの私から見ると、東京の子供たちは地理的にこういうイベントに参加するチャンスに恵まれている。あとは連れてくる親にどう興味を持ってもらい、そのチャンスを実現してもらうかだと思う。
 
 
こうして振り返ってみると、去年のようなスペシャルイベントは特になかったが、その一方で小規模な市民企画型のイベントが増えているように思われる。実は、東京国際科学フェスティバルの一部だと気付かずに行ったものもある(科博の企画展など)。東京という都市は、こうしたフェスティバルを開催するには、ちょっと広すぎると思う。おそらくフェスティバルの中心地の三鷹では幟なども立っていてお祭りの雰囲気が期間中あったのではないかと思うが、東京の他の地域では街を歩いていても特にそうしたことを意識することはなかった。東京全体を対象とするよりも、いっそのこと三鷹市とか多摩地区とか、もっと小さな地域でのフェスティバルに分割して、地域密着型に移行していくのも一案だと思う。今回クロージングイベントの会場になった有明は、周辺に住民がおらず、地域密着型とは言い難い。しかも1か月後にはすぐ近くのお台場でサイエンスアゴラが開催され、その中ではおそらく今回と似たようなイベントも行われるであろう。サイエンスアゴラとの役割分担が必要だと思う。

ブログ「たまには地球(した)を向いて歩こう。」2010.10.10より再掲

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.