地球はその質量の3分の1を鉄が占めることや、生命は鉄がなければ生きられないことから、地球を「鉄の惑星」と位置付け、137億年前の宇宙誕生から10のべき乗で表現された時間軸に沿って、順に宇宙―地球―生命―人類―未来と様々な学問をシームレスにつないでみせた展示。
展示を見る前は「またどうせ大量の鉄鉱石や鉄製品を並べてあるんだろう」と予想していた。しかしその予想はいい意味で裏切られた。確かに、鉄鉱石や鉄製品は展示されていた。しかし、それはどちらかといえば控え目で、むしろ主役は「研究者」だったと思う。
コンパクトにまとめられた各ブースには小さなテレビスクリーンが設置されており、総合研究博物館の本展示の企画責任者である宮本准教授が案内役となり、各分野の研究者も登場して展示内容を解説する、というより展示内容を若干はみ出して自分の研究を語っている。すなわち、これは紛れもなく「研究者」を展示しているのであって、展示物はその補佐役に過ぎないのである。
各ブースは金網によって緩く仕切られ、会場全体の一体感と、「鉄に囲まれている」という雰囲気を醸し出すことに成功していたと思う。ただ、別のブースのテレビスクリーンの音声が混ざって聞き取りづらいところがあったのが、唯一残念だった。
展示を見た後、本屋に立ち寄って関連書籍「鉄学 137億年の宇宙誌」を購入した。普通の博物館ならたいていミュージアムショップが併設されていて関連書籍を売っているものなのだが、この博物館にはそういうものはない。
それにしても、常設展示「キュラトリアル・グラフィティ」は人類学と考古学に偏っていた。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/2009Fe.html