デザインの関係性-外的環境が与える影響-

Masafumi Kawachi
5 min readMar 4, 2016

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2015年04月12日

デザインは常に様々な関係性を内包しています。有名なグラフィックデザイナーのポール・ランドも

デザインとは関係である

という言葉を残しています。ここにおける関係性という言葉には、実に多くの要素が含まれると思っています。その関係性を大きく紐といていくと、まず「ヒト」と「モノ」と「環境」という3つに要素分解できるのではないかと。

モノの機能と形式の関係

モノは更に、形式と機能に分解されます。そして形式(インターフェース)は機能に従う、という関係性を含んでいる。目的を達成するための機能に沿った適切なインターフェースなのか、という事ですね。どんなに美しい形式でも目的を達成できなければ、それは良いデザインではないとボクは思っています。

そもそもモノが持つ機能というのは、「ヒト」を起点として出発します。ありとあらゆるモノはヒトが使う前提で人工的にデザインされています。なので、まずヒトが達成したい目的、解決したい問題を捉える必要があります。そこで、そのモノに意図して持たせた機能が、ヒトの問題を解決できるように関係づくられているのか、という視点が当然あります。

なので、モノと人とをつなぐ役割を果たしているインターフェースが、モノがもつ機能を人にきちんと届けているのか、という関係性を直接的に担保します。アフォーダンスというヤツですね。(これについては誰のためのデザインをお読みください)

ヒトのモノと環境の関係

次にヒトとモノの間の関係性をまず考えると、ヒトがモノをどう使うのか、という一文に表されます。そこに環境が関係してくる。環境の関わり方は大きく3つあると思っています。

・環境が、ヒトにそのモノを必要とさせる欲求喚起(これがモノの機能を生み出す)
・環境が、モノがヒトによってどう使われるのかを決定する(これがモノの形式を生み出す)
・環境が、モノの新たな機能を生み出す

身近に存在するコップを例として考えてみましょう。本来、コップのモノとして機能としては、何かを入れる器という点に尽きます。多くの場合は液体ですね。コップというのは、本来形がない液体を一時的に形に留めることができる。逆にいうと、液体というのは形を留めていないので手で握り続けることも出来ないし、そう考えると水を飲みたいとヒトが思ったときにとても不便です。水道の蛇口をひねって、口を付けて飲んだり、川の水を手で汲んで飲むことは出来ますが、やっぱり飲みにくい。その問題をコップは解決している。

では、その「水を飲みたい」という欲求がどこから生まれてくるのかというと(もちろん生存のためには絶対に必要なのですが)、例えば顕著なシーンだと、気温が高く汗をかいて体内の水分が減少するとき、などが言えます。これは天候という環境がヒトの欲求を高め、その結果「水を飲みやすくするモノ」が必要となる。これが、マクロ的に見た環境の関わり方だと思います。

そして、環境がモノの使われ方を決定し、形式を生み出すというのはどういうことか。コップというのは、底が平でそもそもどこかに置く前提になっています。つまり、周囲に置く場所があることを前提としています。勿論、地面にも置くことができますが、コップにはより安定性が求められる。地面だと蹴り飛ばしてこぼしてしまう可能性があり、それは機能を台無しにしてしまう。なので、より落ち着いて置ける場所に置かれる。これは、上記よりミクロな環境的視点だと思います。

最後に、環境がモノの新たな機能を生み出すという関わり方。これは、そうですね、少し苦しいのですが(コップじゃないやつを例にすればよかった)、机の上がペンや小物でごちゃごちゃしていて、そのせいで集中力が欠けるなんていう問題があったとします。そうした時に、ペン立ての代わりにコップを使う人もいる。これは、何かをいれる器としての機能はありますが、おおむねの想定として何かは液体であった。そこから考えると新しいコップというモノ使われ方です。整理したいけど、ちゃんとした容れ物とかがないので、コップで代用する、といった状況的な意味合いが強い環境の関わり方です。他に例をあげるなら、机は本来の機能としては物を置く、という機能を要していますが、時には高いところに手を届かせるために踏み台として使われたり、軽く腰掛けるために椅子として使われたりもしますよね。

まとめ

この「環境」の関わり方が実はとても大事で、ヒトがモノをどう使うのかというのも、本来の用途から離れて使われるのも環境次第ということになります。なのでデザインする時には常にそれを想定しなければいけません。アプリやwebサービスでも、ヒトがどこで使うのかという環境は常に意識しなければいけませんよね。電車の待ち時間なのか、夜寝る前のベッドなのか、デスクに座ってなのか。日々、日常の周りのものをを見渡して、どんな環境の場合はどう使われうるのかを考えていくと色々と新しい発見があっておもしろいと思います。

Originally published at m-kawachi.com.

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