自立分散型投資ファンド『The DAO(ザ・ダオ)』は投資のあり方を変えるか
先日から業界を賑わせているThe DAO(ザ・ダオ)。クラウドセールにより実に30億以上をすでに集めている巨大プロジェクトだ。(The DAOにおけるクラウドセールは、DAOクリエイションという表現で行われている。)
暗号通貨関連のプロジェクトでいうと、イーサリアムの約16億を軽く越えて、既に1位の座についている。クラウドファンディング全体でみても既に2位で、1位に迫る勢いだ。(記事執筆後、最終的に約120億円を調達しクラウドファンディング全体で歴代1位となった。)
そんな巨額の資金が集まっているThe DAOだが、一体どんなものなのか?
The DAOとは何なのか
The DAOとは、イーサリアムベースの”自律分散型”投資ファンドだ。今回の場合は、プロジェクトへの投資を対象としているので、みなさんがご存知のベンチャーキャピタル(VC)をイメージすると理解しやすいかもしれない。
しかし、The DAOには既存のVCと大きく違う点が存在する。それは、ファンドマネージャーがいないことだ。ファンドマネージャーなしに、投資先の選定、配当の分配が行われるのだ。それがThe DAOが、自立分散型の投資ファンドと言われる理由だ。
The DAOにより発行されるDAOトークン
まず、The DAOのプロジェクトに参加するためには、The DAOの発行するDAOトークンを購入する必要がある。The DAOは、イーサリアム上に構築されているプロジェクトであるため、DAOトークンの購入はイーサリアムの通貨であるEther(イーサ)で支払う。そして、購入の際に支払われたイーサは、The DAOのファンド資金としてプールされる。
所有するDAOトークンには、投資したプロジェクトの売上の一部を受け取る権利と投票権としての側面を持っている。詳しくは、後述する。
The DAOによる新しい投資のカタチ
さて、具体的にThe DAOの仕組みについて見てこう。The DAOは、大きく以下の流れに分けることができる。
- 提案・投資フェーズ(投資案件の提案、Curatorによる承認、トークン保有者による投票、投資の実行)
- 配当の分配
- DAOトークンのETHへの変換
①提案・投資フェーズ
投資案件の提案
VCのもとへ起業家が自分の事業プランを持って投資の打診を提案しにいくのと同様に、DAOトークン保有者は、自分の考えるビジネスモデルとThe DAOへの利益還元率そして資金プールの何%の出資を求めるかをなどをホワイトペーパーにまとめ、Curator(キュレーター)に提出する。
Curatorによる提案の承認
ファンドマネージャーはいないが、「Curator(キュレーター)」と呼ばれるThe DAOに寄せられた提案の管理作業を行うメンバーが存在する。主にイーサリアムの創業者Vitalik ButerinをはじめEthereum Foundationのメンバーによって構成されている。その後のメンバーの選任は、DAOトークン保有者の投票によって行われる。キュレーターにより、提案された内容が存在する個人ないし組織からであるかを確認した後、The DAOのネットワークに配信される。
トークン保有者による投票
提案が承認されると、まずは約2週間の間、DAOトークン保有者たちによる議論の期間となり、その後投票へと移る。投票期間中に投票を行わなかった場合は、棄権とし、多数派の意見に従うこととなる。
投資の実行
投票の結果が賛成多数の場合は、資金プールからプロポーサルで定められた割合のETHがプロジェクトに投資されます。投資が行われると、代わりにそのプロジェクト毎の「リワードトークン」が発行され、各トークン保有者に分配される。
配当の分配
投資が行われたプロジェクトが収益を上げると、プロポーサル時にもともと定められていた割合の収益が、The DAOへと還元される。その還元益から、リワードトークンの持分に基いて配当が分配される。
DAOトークンのイーサリアムへの変換
このプロセスを「スプリット」と呼ぶ。スプリットは簡単に説明すると、自分の保有しているDAOをイーサへ変換することだ。スプリットを行うには、スプリットを行う提案を自ら提出する必要がある。プロポーサルを提出して1週間後に、大本の資金プールとは別のアドレスに新しい資金プールが作られ、そこに自分の資金だけ移動される。ただし、28日間はそのアドレスから資金を移動することはできない。その後、自分の任意のアドレスにイーサの送金を行うプロポーサルを行うことで完了する。
ここまでが、The DAOの大まかな流れだ。プロジェクトへの参加者による投票によって運営が行われる民主的なアプローチは、興味を惹くポイントだ。
もともとDAOとは、第3者による管理なしに、機能する仕組みなどを指す概念だが、そういった意味でもDAOが実際に成り立つのかを見守るよう機会に思われる。引き続きプロジェクトの進捗に期待したい。
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