なぜ、いま暗号通貨なのか(前編)

なぜ、いま暗号通貨とブロックチェーンを必要と感じるのか?について、改めて考えてみた。

コインチェックのNEM流出事件で一気に批判や規制が厳しくなった暗号通貨業界だけれども、やはり依然として暗号通貨業界は興味深い。今だからこそ、というべきか。

そこで、他の人たちがすべて同じように思うかは分からないけれど、「なぜ分散型のブロックチェーンが時代に受け入れられるのか」について、同じような問題意識を根っこに持っている人は少なくないのでは、と思うので、そっときっかけを振り返ってみることにした。

振り返ると、きっかけは国債と日銀と日本の景気についてが端を発しているように思う。個人的にはどうやったらデフレが解消されて、日本のGDPが上がるのかというのは2012年辺りからずっと気にはなっていたテーマだった。

ちょうどその翌年から、日銀が物価目標2%を掲げ、2013年4月に質的、量的緩和の導入を決定し、民間の銀行から国債を大量に買い上げるようになり、おっと思った。これで景気が上がるんじゃないの?と見守る気持ちがうすうすあった。

ただそこからもう5年と3ヶ月が経過したが、それでも結局物価目標2%に届いていないのが現状だ。ちょうど、明日・明後日(2018年7月30日・31日)に日銀の金融政策決定会合があり、そこで何かしらの見解が示されるとのことで、いい機会なので、まとめておきたい。

これまでは、そういった景気に関するモヤモヤ・違和感に自分なりの出口を見つけるべく、国債の日銀購入残高がいくらで、銀行の貸し出し推移がどうで、名目GDPは、潜在成長率は・・・というのを事あるごとに気にしていたけど、実は若干の疲労感があり、どうあがいても、この条件がそろったらOK、デフレ脱却に転じる!逆にこれではNG!という原理のようなものがピカーンと見えてくるかというと、そんなはずはなく、結局調べれば調べるほど、五里霧中という感じがする。

それでも自分なりの答えを見つけたいという波が来る瞬間がたまにあり、久しぶりにまとまった休暇が取れたのでリチャード・A・ヴェルナーの「円の支配者」を読んでみた。景気を回復させるには日銀の信用創造=マネーの創出しかなく、日銀はそんなことは百も承知で構造改革をしたいからバブルを仕掛け、そして破綻させ、また景気回復したとあった。

信用創造とは何か。景気を回復するための手法として、新たにマネーを増やし、つまり、新たに紙幣を印刷し、新規の購買力を創出すること(既存のマネーのパイの中の再分配ではなく、パイの拡大のことを言う)。そして、市中にマネーを行き渡らせること。銀行の貸し出しを増やすこと。その「マネーの増やし方」の一つが、中央銀行が民間銀行から国債を買い入れるということであった。

この本はなかなかドラスティックで、そのため賛否両論あるのだろうが、あえて取り上げるのは、エコノミストなり専門家が景気について様々な立場から批評を繰り返している中で、マネーの創造=景気向上について明確にスタンスを取っているという点。

ノーベル経済学賞のポール・クルーグマンもアベノミクスを絶賛していたと記憶しているが、ともあれ、ようやくマネタリーベースの拡大に踏み出したのが2013年4月。しかし国債購入が限界に近付いたのか、定かではないが、2016年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を導入し、長期金利をゼロ%程度で推移するように買い入れを行うとして一定の方針修正をし、今に至るまで、マネタリーベースの前年比増加額が減った、国債の買い入れ額が減ったなど色々な論点はあるものの、物価2%目標は堅持してきた。

ただ、結局、上がらない物価。銀行の貸し出しは全銀協によれば、2013年6月末から2018年6月末で比較して56兆円以上増えてはいる(1)のだが、日銀の資金循環統計の6月速報によると、金融を除く民間企業の資金余剰が約27兆円と、16年度から10兆円あまり増え7年ぶりの高水準とのことから、企業の内部留保に回ってしまっており、企業はカネは余っているが新規の投資や賃金に振り向けていないという見方が一般的のようだ(2)。

(1)引用元:全国銀行協会ホームページ

https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/stats/month1-01/

(2)引用元:日本経済新聞 2018年6月28日朝刊

そして、一つの指標と言われているものをみると、やっと2018年6月に1~3月のGDP需給ギャップ(需要と供給のギャップを示すもの。供給より需要が大きいとプラスになる)が0.3%のプラスに転じ、脱デフレ4指標(GDPデフレーター、需給ギャップ、単位労働コスト、消費者物価指数※コアCPIのため生鮮食品とエネルギー除く)も3期連続でプラスになったとのこと。

少し回復したのだろうかと思わせるが、同じく6月の生鮮食品、エネルギーを除いたコアコアCPIが0.2%「しか」上昇しておらず、3か月連続で伸び率が縮小している(3)ことから、やっぱりそう簡単なことでもなさそうだ。

(3)引用元:総務省統計局ホームページ

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

需要は少しずつ出てきているけれど、これだけ日本の労働市場が売り手市場と言われていて、供給が追い付いていないようにも思うが、いずれにせよ、やはり多少追いかけて、読み解いたとしても、素人には何が正しいか、分からないというのが実情なのだ。

ただ、物価2%が達成されて景気が上がるのか?という点に関しては、供給側の視点で、今の様々なサービスの提供元である日本企業がそのままでは、ツライものがあるように感じる。なぜなら、旧態依然の長時間労働、年功序列、新しいものを創ることへの抵抗、違和感のあるものは排除し叩こうとする、いわゆる日本のドメスティックな内向き文化が変わらなければ、新規の設備投資や賃上げを実現しようとしても、達成は難しいのでは?と思うからだ。ずっと言われていることではあるが、生産性向上による長時間労働の削減をし、新しいビジネスの創出に至らなければ、未来への投資はされず、無駄が多いコスト高なサービスから離れられず、シュリンク傾向は止まらず、賃上げもされず、消費も刺激されないであろうことは確かだと思う。

貯蓄志向が高く、かつ、人口動態的にも未来への期待がない日本ではなおさらだ。

ただ、日本の大企業がドラスティックに生産性の向上や、新しいビジネスの創出に踏み切れるかというと、難しいだろう。いや、ずっと言われてきているのに、ここまでできないとなると、ずっと難しいかもしれない。

何で変わらないのだろう、と考えると、ものすごくシンプルに言ってしまえば、日本の組織は、減点主義だから、というのが大きいと思う。一定の売り上げが上がる仕組みや体系があれば、それを壊すことが良しとされるわけはなく、前例のとおりにまずはやってみなさい、礼儀やマナーに沿って、やってみなさい、となるのが普通だし、自分もそのやり方すべてを否定するつもりはない。

そうやって売り上げを保つか少しでも上げることでしか株価が維持できないのであれば、なおさらそうなると思う。変わることで、変えることでのリスクが大きく、明確に未来が保証されていないなら・・・そのリスクをあえて取ってまで新しいことに踏み切る日本の特に大企業の経営者や管理職はなかなかいないし、いても潰されてしまうのが普通。

もちろん、ちょっとずつ、ちょっとずつ変わろうとしている兆しのようなものはあるが、その変化は亀のごとく遅いので、少しでも環境に不安要因があればぴたっと止まってしまう。

そして最も不思議で仕方がないのが、誰もが「変わらなくてはいけないことは認識しているが、自らが本気で変わろうとせず、誰かが変えてくれるであろうと、外に期待をすること」なのだ。

そんな中にいると、これからの時代を創れるのは、政府はおろか、大企業ではないのでは、と思うのは、自然なことだろう。

そう確信するに至ったきっかけが、暗号通貨とブロックチェーンとの出会いだった。

次回につづく