トークンエコノミーと暗号通貨の矛盾⑦
前回までは、「自分の持っている貨幣を、明日も明後日も受け取ってくれる共同体」の信任の源泉は結局は安定した中央銀行にあり、それを抜きにした共同体とは存在できるのか、というのが疑問でした。
中央のない共同体、とはそもそも何でしょうか。
中央・中心を、国庫や中央銀行とします。そういった第三者、サードパーティが存在しないという意味では、暗号通貨のビットコインやエセリウムは皆そうです。
ビットコインやエセリウムといったブロックチェーンにおいては、発行や管理をする主体は存在しませんが、皆がその貨幣(あえて貨幣と言います)を欲し、売り買いしていますよね。
そのような形態を果たして、共同体と呼べるのでしょうか。
広義には、呼べるかもしれません。まだまだ少ないですが、お店によってはビットコインでの決済が可能なモノ・サービスもありますし、ビットコインで送金ないしは会計の割り勘をする人たちが増えてきていることも事実です。
しかも何がすごいかって、決済にはまだまだ使用できる場所は少ないのに、暗号通貨においては、それを欲している人が多くいるということです。これは、今まで登場してきた貨幣形態とは大きく異なる点ではないでしょうか。
貨幣は、商品から交換可能性を与えられるか、自ら与えるか、その繰り返し、無限の循環論法で成立しているという岩井先生の貨幣形態Zを通り越して、ビットコインは皆から欲されるから価値があるという、まさに岩井先生の「貨幣は皆が欲するから貨幣として成立する」という帰結を身をもって示している存在といえます。
ビットコインを愛して止まない人たちにとっては、まさにそれが共同体となっていると言ってよいでしょう。

ただ共同体というものは、これは私が岩井先生の書籍を読みすぎたからかもしれませんが、「自分が持っているモノを与えることで貨幣を手に入れ、自分が持っている貨幣を与えることでモノを手に入れる」というのが根源的な共同体の在り方なのではないかという感覚が、どうにもぬぐえないのです。
要は、共同体へは、自分の意思を持って参入し、自分の意思で退出することが可能であり、それが共同体の成立条件だとするならば、どうでしょうか。
ただ、上記だけであれば、ビットコインとエセリウムでも同じことが言えるのですが、より狭義の共同体、あえてプリミティブと表現させてもらいますが、そこでは人間の行動における生産と消費が、その共同体の中で行われ、その受け取りの媒介として何らかの貨幣を用いるのです。
参入する際には、自分の持っているモノをその共同体の構成員に売ることで貨幣を手に入れ、その共同体で売っているモノを、手にした貨幣で買うのです。
ビットコインやエセリウムといったパブリックなブロックチェーン上で流通する暗号通貨は、皆、単に暗号通貨それ自体を欲し、それ自体を売り買いすることで生じる利益に喜びを感じているように見えます(もしくは、将来値上がりするであろう期待から購入して一定期間保持する、価値の保存目的)。
その貨幣を媒介とし、その先にある商品に魅力を感じて欲している、というのではなさそうです。それはまさに純粋な貨幣への投機ではないでしょうか。そこでは、岩井先生の貨幣形態Zなるものは存在していません。
一方で、発行主体が存在し、発行した暗号通貨をトークンとして、コミュニティ内での使い道を設けた「トークンエコノミー」についてはどうでしょうか。いわゆるユーティリティトークンという呼び方をされているものです。
それがまさに本来の共同体に近いように思います。そのトークンに限定した使用用途が存在し、その先にある商品やサービスに魅力を感じた人たちが、そのコミュニティに参入してくるわけですから、自分の意思をもって、そのコミュニティを選び取り、トークンを欲し、参入しているということになります。
日本円やUSドルよりも、プリミティブな共同体と言えるのではないでしょうか。何をもってしてプリミティブというかって、やはり価値形態論をこれまで追ってくると、貨幣が商品に影響を与えたのが先か、与えられたのが先か、貨幣の成立起源はどっちでもいいのですが、何かしら、モノと貨幣の交換が発生したということは、そこには間違いなく共同体が1つか2つか分かりませんが、存在していたということになりますよね。共同体の成立には、貨幣は欠かせない存在だったのでは?とも思うわけです(この辺はかなり素人くさい考え方かもしれませんが)。
また話は戻りますが、トークンエコノミーについては発行主体の中央が存在する共同体です。
参入・退出は自由ですが、その共同体ではとあるトークンが使用され、それによってモノ・サービスが売買されます。その共同体の外では、そのトークンを使用したいといっても使うことはできません(もちろん、買い取ってくれる外部の取引所があれば、トークン自体の売買はできるでしょうが)。そういった意味では、基本的にはクローズドな共同体です。
ただここまでくると、トークンエコノミーと暗号通貨には、いくつかの矛盾が生じているように思います。
あえて、これまでの話を否定するような話なのですが、何が矛盾なのか、整理していきたいと思います。
続きます。
ありがとうございました。
