こんばんは。さて、トークンエコノミーはブロックチェーンで実現されるべきなのかどうか?についてです。
そんなの、やりたければ好きにすれば?の世界だと思いますが、これまでに色々なブロックチェーンと暗号通貨のテーマや背景があり、折角なので先人の軌跡を振り返りたいと思います。
それらを整理していたら、意外とビットコインの始まりのところまで戻ってしまったり、DLTに関するワーキングペーパーに戻ったりと、やっぱり10年とは思えないほどの歴史の積み重ねと、色々な立場が重なり合って形成されてきた、改めて奥深い世界だなぁと思いました。
整理だけで何回も使ってしまう気がするので、一つひとつを非常にシンプル化していますし、引用させていただくものも多くまとめ的なものになっていますが、ご容赦ください。
まずブロックチェーンは、以前も少し触れましたが、非常に簡単に言ってしまうと、全世界にノードが分散しており、自律的に記録・更新がされていく台帳です。ノードを持つ人たちは、流れてくるトランザクションを含めたデータに不正がないかどうかを検証し、そしてマイニングによってnonce(ナンス)を求め、ハッシュ値を計算し、またブロードキャストされたものを検証して、自分の持っている台帳に追加していく。パブリックなブロックチェーンであれば。プライベートブロックチェーン、コンソーシアム型というのもあり、それらはJPXさまのワーキングペーパーに実証実験とともに書かれており、大変勉強になります(以下、引用)。
https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/working-paper/index.html
金融市場インフラに対する分散型台帳技術の適用可能性について2016 年 8 月 30 日 Vol.15
金融市場における分散型台帳技術の活用に係る検討の動向 2017 年 9 月 14 日 Vol.20
今ある金融のシステムを置き換えようとすると、どうしてもパブリックなチェーンそのままでは、大量のトランザクションを処理できないとか、公開されているので秘匿性が担保できないなどの理由から、特定のノード間だけでトランザクションをやり取りできるようにしたのが、コンソーシアム型のチェーンの特徴です。Hyperledger FabricやCordaなど色々な規格がありますが、ここでは割愛します。
ただそうすると、本来の分散型ではなくノード数が限定されており、中央集権型に近いのですよね。悪意をもったノードは排除できるかもしれませんし、処理速度は速くなるかもしれないし、ファイナリティも確保しやすいのかもしれませんが、従来の分散型の良さである、中央集権ではないからこそ改ざんができないという最大のメリットが、失われてしまうようにも思います。突き詰めていくと、既存にあるデータベースと、あまり違いがなくなってしまうのではないか・・・?というのが懸念です。ただこの辺りは意見が分かれるので、あくまで一つの見方とします。
ブロックチェーン上のトラフィックが増えるに伴い、処理に時間がかかってしまうこと、送金手数料が高くなってしまうといった問題に対しては、スケーラビリティ問題といって、様々な論争がなされ、実際に色々な手が打たれてきました。ちょうど1年前のビットコインのハードフォークによるチェーン分岐や、そのあとのSegwit(セグウィット)の実装なども、その一つの解決策だったと思います。
そしてSegwitが実装されてからは、スケーリング対応が進み、オフチェーン技術も発展しています。常にビットコインのブロックチェーン上でトランザクションを完結するのではなく、ブロックチェーンの外でトランザクションを実行し、チャネルを開いて閉じる時にまとめてブロックチェーン上に記録するペイメントチャネルや、それを活用し複数間でのやり取りを可能にするライトニングネットワーク、また第三者機関を介さずに、異なるブロックチェーン間での取引を可能にしたアトミックスワップといったプロジェクトが続々と動いています。
ビットコインに次ぐ規模のブロックチェーンであるイーサリアムも、Plasma(プラズマ)というサイドチェーンを構築しようと頑張っていますね。これはかのOmiseGoのロードマップにもかなり影響を及ぼす認識です。以下medium記事での予定では2018年の3Q構築だったかと(以下、引用)。
https://blog.omisego.network/omisego-roadmap-update-94819e20ada2
そういったオルトコイン、オルトチェーンが生まれる中で、既存の仮想通貨取引所(エクスチェンジと呼ばれる)も、例えばQUOINE(コイン)であれば大きな流動性を持つ一つのLIQUIDというプラットフォームを作ろうとしています。全世界で、ありとあらゆる銀行やエクスチェンジをつなぐマッチング・エンジンを搭載したWorld Book(ワールドブック)とそれに付随したPrime Brokerage(プライム・ブローカレッジ)が、2018年の2Qにリリース予定とされています。予定どおりいけば、もうすぐですね(以下、引用)。
流動性は、暗号通貨業界にとって大きなテーマですね。世界のどこにいても、どの暗号通貨であっても、いつでも、適正に近い価格で取引ができる。要求の二重の一致を満たすものです。これが保てなくなると取引所としての競争力が低下してしまいますし、エクスチェンジの立場から規模を拡大しようとするのは自然な流れなのかなと思います。
一方、2014年のマウント・ゴックス事件によるビットコインの流出に端を発して、取引所に資産を預けると破綻リスクがあるという観点からも、既存のエクスチェンジとは異なり、第三者機関=サードパーティに資産を預けず、ユーザー間で直接取引を行うDEX(Decentralized Exchange)が出てきましたし、いまや0x(ゼロエックス)やBancor(バンコール),kyber(カイバー)はかなり大きなベンチャー企業に成長して期待がされています。Bancorはつい最近流出事件がありましたが・・・。
そして彼らの提供するサービスでは、やはりすべての取引をオンチェーンで実施するのではなく、例えばマッチング(売買の掲示板での取引)はオフチェーンで実施するが、決済はオンチェーンで実施する0xや、すべてのトレードをリザーブによる自動マッチングで、オンチェーンで実施するkyberなど、アプローチも異なり、だからこそ見ていて面白いのではないでしょうか。
既存のエクスチェンジやDEXが、アプローチは異なりますが皆、流動性の担保をゴールの一つとしてめざしている中で、最後に触れておきたいのが、ステーブルコインもその流動性への一つのアプローチなのかなと思っています。
USDT,Dai,BitSharesなど、色々な形でのステーブルコインが存在します。これらについては、LCNEMのキムラユウさんや@yamarkzさんが大変素敵なまとめを書かれているので、もはや・・・、いや、かなり参考になります(以下、引用)。
https://twitter.com/YuKimura45z/status/1015556136534065153
https://twitter.com/yamarkz/status/1016483063855845381
そしてトークンエコノミーを語るうえで切っても切り離せないのがこのステーブルコインというテーマなので、次回以降、ゆっくり触れたいと思います。
以上、見てきましたように、現実世界で暗号通貨の取引を増やす、そしてこれがやりたいことですが、決済手段として普及していくには、暗号通貨における各種課題を、クリアしていくことが求められます。先ほど引用させていただいた@yamarkzさんの記事でも触れられていましたし、キムラユウさんの記事でもトリレンマとステーブルコインの関係性が取り上げられていました。
これは本当にそうだなぁと思いますし、あえてこだわりの流動性も追加し、5つの課題=テーマにしてみるのではいかがでしょうか。自分的には、真ん中に流動性があって、それを4つが囲んで相互に影響を与えているようなイメージです(プライバシーはちょっと異なるかもしれませんが)。
・流動性(リクイデティ)
・スケーラビリティ
・セキュリティ
・非中央集権性
・価格安定性
ただ、ブロックチェーンのトリレンマといって、このうちの、スケーラビリティ・非中央集権・セキュリティは同時に2つまでしか成立しない、という有名な説もあるのですが・・・。
ただ、やはり分散型で、改ざんができないブロックチェーンを利用するという点は魅力的ですし、利用し、育てていくのが社会にとってイノベーションにつながるのではないかと信じています。
なので、パブリックなブロックチェーンはぜひ、トークンエコノミーに利用したい。
では、暗号通貨はどう捉えるのか?という点は、ステーブルコインの話と合わせて、次回に持ち越したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。