暗号通貨とそれらが織りなす経済圏について⑨

前回に引き続き、仮想通貨担保型のステーブルコイン、Dai(ダイ)について、今回はその発行の仕方を見ていきます。

2.Daiの生成方法

イーサリアム(以下、ETH)が担保でありコラテラル、担保金・証拠金です。Daiがローン・借金・負債です。

一言でいうと、証拠金のETHと引き換えに、Daiを借金しましょう!という仕組みです。イーサリアムのブロックチェーン上で動いているんですね。

Daiを欲しいユーザーは、ETHを支払い、代わりにDaiを生成します。

すると預けたETHはロックされ、返してほしければ生成した分のDaiを返す必要があります。このようにして、プールされたCDP内にロックされたETHのことを、PETHといいます。Pooled Etherの略です。はいシンプル。

Daiを返すとETHが取り出せます。その取引を自動で可能にするのがCDPというスマートコントラクトです。略さず言うと、Collateralized​ ​Debt​ ​Position​だそうです。Maker DAOが提供している、契約自動執行の仕組みです。

スマートコントラクトに持っているETHを入れると、予め決められた割合に応じたDaiが出てくる。そんなイメージです。

例えば以下。

100ドルの1ETHをCDPに入れると、ロックされたETHと引き換えに66Dai受け取ることができました。ETHがDaiに対して、150%の割合です。

そして預けた側は、1ETHを取り戻したければ66Dai払わなければなりません。かつそれだけではダメで、+αとしてMKRというDaiとは別のトークンでのみ支払いが可能な、Stability Feeというフィーが必要です。

で、この状態を言い換えれば、100Daiは1.5ETHによって裏付けされていることになります。これが結構大事です。

預けた担保金のETHと、それによって得られる借金のDaiの比率は、先ほど決められた割合があると言いましたが、collateral-to-debt ratioと呼ばれています。日本語で、担保率とでも言いましょうか。これが、裏付けの割合です。DaiはETHによって裏付けられています。別名、裏付け率(そう覚えた方が楽・・・)。

この率はCDPによって異なり、何によって決まるのかというと、投票で決まります。誰の投票かというと、MKRというトークンを持っている人たちの投票です。実はCDPは一つではなく、リスクの高いCDPもあれば、低いCDPもあり、CDPにはそれぞれオーナー(CDPを作成した人)がいます。担保率が高いCDPほど、リスキーという理解でいます。

そしてこの裏付けの割合は、それぞれのCDP内で必ず保たれないといけないのです。これが一番大事なポイントです。塩分濃度みたいなもんです。借金に対する担保の価値が、薄まってはいけないわけです。

ホワイトペーパーにも、

meaning​ ​that​ ​the​ ​value​ ​of​ ​the​ ​collateral​ ​is​ ​higher​ ​than​ ​the​ ​value​ ​of​ ​the​ ​debt.

と書かれています。(ただ、この率はETHの値動き見合いで可変らしいのですが・・・どのタイミングで変わるのか、それがユーザーにどう影響するのかまではホワイトペーパーに書いてなかったので分かりませんでした。変えちゃっていいのかよ、と思いましたし。)

で、その濃度が仮に薄まったら、どうなるでしょう。

濃度が下がるというのは、つまりETHの価値が下落するということです。


3.証拠金の価値が下がった場合の希薄化メカニズム

先ほど、100ETHで66Daiを発行した場合、100Daiは1.5ETHによって裏付けされている、という例を出しましたが、もし仮に、100ドルの1ETHが80ドルに下がったとしましょう。その場合、当初1ETH=100ドルの時は、100Daiの価値が1.5ETHあったのに対し、1.2ETHに減ってしまいます。これは、担保率が150⇒120%に下がったということを示す、という理解でいます。Dai=借金の価値が、担保金であるETHと比べて相対的に上がってしまうということですね。

The​​ ​Liquidation​ ​Ratioという割合が、そのデッドラインだそうです。こちらも同じく、MKRホルダーの投票によって決められます。ホワイトペーパーには、150%のcollateral-to-debt ratioに対し、The​ ​​liquidation​ ​Ratioが145%で、それを下回り135%に達してしまった時の例が載っていました。

そのデッドラインに達すると何が起こるのかというと、これもMaker DAOのプラットフォーム上で自動的に執行されるスマートコントラクトに具備されているものだと思いますが、自動でCDPの保有しているETHが買い上げられ、競売にかけられてしまいます。

Liquidationと言われています。ETHのリキャピタルという表現もありました。

この競売で、keepersという、いわゆるトレーダーなんだと思いますが、ETHをDaiで買い漁ります。そしてその時使われたDaiは、Dai全体のサプライからは差っ引かれます。いわゆるバーンという理解でいます。

競売が終わると、CDPオーナーには、元々持っていたコラテラルからDaiの負債分、および先ほどちらっと出てきたETHの取り出し時に必要なStability Feeというフィーとさらにはペナルティーを引いた残額が渡されます。これがどれほどの痛手なのか実感値がわきませんが、結構な罰な感じがします。というか手元に残るのか?

このフィーも、ペナルティーも、投票によって決められます。MKRホルダーの権限は大きいですね。


ということで、以下、まとめです。

Maker DAOの提供するシステムは、CDPの背負うリスクを代償にしているものだということが分かりました。

確かにDaiの価格安定性はありそうですが(実際の値動きをコインマーケットキャップで見ても、確かにほぼ1ドルに貼り付いている)、皆さん言われているように、複雑なシステムですよね。

複雑でもユーザーにとってメリットがあって、理解できて行動に移せればいいのですが。かつ、CDPのオーナーも、これだけペナルティーリスクがあっても、やりたいと思う人がいるということなんですかね。

確かにここまでスマートコントラクトで、自動化しており、中央集権型ではない点については、敬服の念すら感じます。

ただユーザーの視点からしたら、100ドルのETHをコラテラルとし、それよりも低い価値のDaiを手に入れる、という点がどうしても腑に落ちません。そういうもんだと言われてしまえばそれまでですが。

しかも、ETHを取り出す時にフィーも必要なんですよね。そしていつ希薄化(Liquidation Ratioに達してETHが売り払われること)しちゃうか、分からないんですよね。希薄率がMKRホルダーによっていつ変わるかも分かりませんし、希薄化したら預けたETH、取り出せないんですよね。。

なんか、安心して取引できない感じがするのは私だけでしょうか。

この辺りは、実際利用している方や、CDPのオーナーやってるぜ、という人に聞いてみたいです。

以上、ホワイトペーパーや先日あげさせていただいた色々な記事を踏まえた私の理解でした。もし異なる点があればtwitterでご指摘いただけますと幸いです。あと上記仕組みを担保するためのキーとなるオラクルについては、またどこかで触れたいと思います。

次回は、そういったコラテラルを必要としない、無担保型のステーブルコインを取り上げたいと思います。これも結構難しいんですよね。。謎が多いです。

ありがとうございました。