ステレオタイプを乗り越えていくコミュニティ#ILookLikeAnEngineer

今年の夏休みにサンフランシスコを訪れていた。滞在していた8月上旬、ちょうど一人の女性エンジニアがリードする#ILookLikeAnEngineerムーブメントが盛り上がっていた。

#ILookLikeAnEngineerについては、当事者であるIsis WengerさんがこのMedium上の投稿で語っており、日本語でもこちらの記事にすでにでている。内容を短く箇条書きすると、このような話だ:

  • サンフランシスコのテック企業が、エンジニアの採用キャンペーンポスターに、自社の女性エンジニアであるIsisさんの写真を、他の男性エンジニアの写真とともに使用した。
  • ポスターが市内の地下鉄に貼り出されると、「彼女がエンジニアなわけがない」「エンジニアにみえない」などの反応がソーシャルメディア上で湧き上がった。
  • それに対し、Isisさん自身を含む多くの女性エンジニアが#ILookLikeAnEngineerというハッシュタグとともに、ツイッター上に自分の写真を投稿。エンジニア=男性という、アメリカでもまだ根強いステレオタイプの打破するための波を起こした。

Isisさんのブログの最後にもでているが、この動きを受けて、別の女性エンジニアであるMichelle GlauserさんがIsisさんを中心としたトークイベントを企画した。私は、幸運なことに、このイベントに立ち会うことができた。Michelleさん自身もMedium上に動画入りでイベント記録を投稿しているが、私も日本語で遅ればせながら少しだけ書かせていただく。Michelleさんの投稿も参照させていただいている。

アンコンシャス・バイアスに立ち向かう、6人の多様なスピーカーたちによる経験談

会場には女性エンジニアを中心に数百人がいた。Michelleさんによると、チケットはすぐに売り切れたらしい。多分初めて会った同士の人も多かったのだろうと思うが、みんな写真を撮ったり、話に花を咲かせていた。

メーンイベントであるトークが始まると、Michelleさんの紹介で最初のスピーカーであるIsisさんが登壇した。

Isisさんは地下鉄で最初に自分の写真がポスターになって張り出された時、大きな帽子をかぶっている同僚のピーターの写真ほうが注目を集めると思ったそうだ(結果は違ったわけだが)。彼女は「ある人の外見や性別を、その人の能力や可能性を狭めてしまう理由にしてはいけない」と強く訴えた。

Isisさんのポスターをきっかけに起こった一連のムーブメントは、彼女が自分の経験をMediumに書いたことからはじまっている。そのため彼女は「皆さんも是非、自分の経験を他の人と共有してください」と語った。また逆に、他の人の経験に耳を傾け、その人の視点からみると世界がどのようにみえるか知ろうとすることで、無意識に持っている先入観(アンコンシャス・バイアス)を乗り越えることができるはずだ、とも話していた。

Isisさんに続いて、5人の多様なスピーカーたちが次々マイクを持ち、それぞれの経験談をプレゼンしていった。テック・スタートアップ界のダイバーシティ向上のために、リーダーシップをとっている人たちばかりだ。特に印象的だったコメントを記しておく。

  • Alicia Morgaさん(ヒスパニック系の女性起業家・ベンチャーキャピタリスト)

「日常の小さな差別に対して、嫌なら嫌と言う勇気を持とう」「だって自分の本質と引き換えにしなければいけないほど大切なことなど、存在しないのだから。あなたはあなたをやっていればいい」

  • Wayne Suttonさん(黒人の男性起業家・ベンチャーキャピタリスト)

「そこに問題があるということを、自分自身で気がつくことが大切」「これはIsisさんだけではなくてみんなの問題だ」

  • Dom DeGuzmanさん (クイアーの女性エンジニア)

「仕事もあるのになぜ、たくさんトークイベントに出て自分の経験を語るのか?と聞かれる。でも、以前自分と同じ立場の人が、もっと孤独な場所にいることを知って、発信し続けようと思った。私はだれにも孤独になって欲しくないから」

「会社案内に出てくれないか?と言われることがあるが、広告塔になる気はないから断るんだ。一方で隠れる必要も全くない」

「黒人の女性エンジニアはユニコーンだって呼ばれるのだけれど、好きじゃない。疎外感と孤独を感じるから」「私は人間。カテゴライズしないでほしい」


Isisさんは#ILookLikeAnEngineerのことを、「メディアが報じてきたような単純なジェンダー・ムーブメントよりも、ずっとラディカルに開かれたものだと考えている」と話していた。それぞれが違うジェンダーや人種のバックグラウンドを持つ5人のスピーカーのパワフルなプレゼンを聞き終えると、私自身は本当に圧倒されていた。また、おそらくこの日ここに来なければ得られなかった多様な視点を獲得するきっかけも、もらえたように思う。貴重な経験をさせてくれたMichelleさんには心から感謝したい。