フェミニスト・ハッカー・バービーのこと

2014年秋ごろ、私はFeminist Hacker Barbie(フェミニスト・ハッカー・バービー)という名前のインターネットミームのサイトがとても面白いと思っていた。一体それは何なのかというと、こういうものだ:

「私はデザインのアイデアを考えるだけ。あとはスティーブンとブライアンにやってもらうわ!」となぜか堂々と話す自身がコンピューター・エンジニアという設定のはずのバービー(Feminist Hacker Barbieサイトより)
  • 2010年に発売のバービーが主人公の絵本 “I Can be a Computer Engineer”(和訳すると「私もコンピューター・エンジニアになれる」)を、脚本家のPamela Ribonさんが2014年秋、友人宅で読んだ。
  • 絵本のなかで、バービーはコンピューターゲームを作る。しかし、エンジニアという設定のはずのバービーはゲームのデザインはするものの、技術面は全て二人の男友達(ブライアンとスティーブン)に頼り、しまいには彼らの手柄を横取りするという展開になっている。
  • Pamelaさんは、この絵本が発していた「女の子は男の子がいないとプログラミングができないし、アンフェアなことをする」というメッセージに対し、自身のブログの投稿でフラストレーションを表明。「女性達はこのストーリー展開について怒りのミームを作るべき!」と綴った。
  • それに対し、女性エンジニアのKathleen Tuiteさんが、実際に元の絵本のテキスト部分を誰もが書き換えられるサイトを作り、多くの人が“改善”に参加した。
“改善”の一例。左側の元のテキストでバービーは妹のスキッパーに「ブライアンとスティーブンの力を借りないとゲームは作れないわ」といっている。それに対し、右側の“改善”されたバージョンで、バービーはコンピューターのセキュリティについてレポートを執筆し、スキッパーにその重要性を説いてさえいる。

テクノロジー業界におけるジェンダー問題の記事は、アメリカのネットメディアではちょこちょこ見かける。そんな中でも、問題をユーモアによって参加型プロジェクトに昇華させたFeminist Hacker Barbieは、とても気が利いているな、と思った。そして、これを作ったKathleenさんとは一体どういう人なんだろう?と気になっていた。

そこで、#ILookLikeAnEngineerのイベントと同じタイミングの昨年夏、せっかくサンフランシスコにいたので、ダメもとでシリコンバレーにいるらしいKathleenさんにメールしてみた。すると、幸運なことに快く時間を作っていただけた。その時にKathleenさんに伺ったお話を少しここに書いておく。

Kathleen Tuiteさん(Photo by Momoko Shimizu)

どういう流れでこのサイトを作ることになったのですか?

Pamelaさんのブログを見た友人の一人が、フェイスブック上に「このバービーの絵本に新しくつけるテキストをクラウドソーシングするべき!」という投稿をしていて、私をタグづけしていたんです。それをみて「私はクラウドソーシングは得意だし、ウェブサイトも作れるから何かできるんじゃないか」と思って作り始めました。

それで、ピンク色だらけのサイトの原型ができました。「そうそう、この感じ、これでいい!」って思って(笑)。フェイスブックにサイトのスクリーンショットを載せたら反応がよくて、そのまま、どんどん作業をすすめていきました。朝11時に初めて、夜8時ごろには最初のサイトをローンチしていました。すると、みんなが新しく考えたテキストが入ったコンテンツも、サイトにどんどんアップされていきました。友人達が投稿した“改善”バージョンの画像は面白くて、本当に最高だなって思いながらみていました。

いくつくらいの“改善”バージョンが投稿されたのですか?

ローンチから24時間で3000は投稿されました。そのあとはサイトがハックされて、全然違うもの(リチャード・ストールマン氏の画像など)がたくさんアップされたりする出来事もありました。対処はしていたけれど、途中で抜けなくてはいけなかったりして、とりあえずアップロードできないようにしたら、みんなツイッターに“改善”した画像とテキストをアップして、シェアしていました。

Feminist Hacker Barbieは、とてもバランスが良くて、楽しいプロジェクトだと思いました。

何か一つのことを攻撃するのではなくて、まっさらなキャンバスを用意して、みんなに好きなように遊んでもらえたからかもしれません。サイトをピンク色だらけのバカバカしい雰囲気にして、ユーモアの要素が出せたから、参加するためのハードルを下げられたかなと思います。

Kathleenさんご自身が投稿した“改善”はどんなものですか?

バービーが「スキッパー、PyLadiesに行こうよ!」と言っているシンプルなものを投稿しました。私の母もエンジニアで、よくイベントに一緒に連れて行かれそうになったから(笑)、それを思い出しました。

私はシリコンバレー育ちで、両親は二人とも電気工学のエンジニアです。それに反発して私はハードではなくソフトウェアのほうに行って、計算機科学を勉強しました(笑)。だから、私にとっては、女性がエンジニアリングが苦手という発想は全然ないんです。そんなの、当然できるでしょ、って思っていました。

シリコンバレーの女性エンジニアであるご自身について、どうお考えですか?

私自身もブログをやっていますが、書いているのは、ほとんどが技術的な話です。私は「エンジニアである自分が、たまたま性別が女性である」というスタンスです。ジェンダーの問題はとても重要ですが「自分は多面的な存在である」という姿勢でいることが、この問題をシリアスにしすぎないようにする一つの方法なんじゃないかな?と私は思っています。