Web3とは何か?(翻訳版)

Masa | Secured Finance
34 min readJul 12, 2019
Periodic waves change the coastline over time.

ブロックチェーンの登場によって、これからのウェブとインターネットはどのように変わってゆくのか。

2018年にベルリンで開かれたWeb3 Summitにて、InterPlanetary File System (IPFS)の考案者であるJuan Benet氏がWeb3.0について明解な解説をし、わたしたちが次の時代をどのように心がけて創ってゆくべきかの指針を与えてくれました。

あまりにも素晴らしく、多くの人に知ってもらいたいと思ったので、本人に許可を得て、スピーチ全文を日本語に翻訳しました。是非YouTubeのプレゼンと一緒に読んでいただけると嬉しいです。15,000字以上ありますが、スマホでも見やすいレイアウトにしました。

追記英語文字起こしバージョンも作成しました。日本語版のレイアウトと一対一の対応になっているので、合わせて読んでいただくことで英語学習の一助となれば幸いです。

最後にちょっとした告知もあります。それではどうぞお楽しみください。

What Exactly is Web3? by Juan Benet at Web3 Summit 2018

調子はどうですか?
今日は楽しんでいますか?
素晴らしいイベントですね。

さて、私が話したかったのは
Web3とは何ぞやということです。

というのも、今日ではなく過去に
多くの人が混乱しているのを
聞いてきたからです。

多分今日ここにいる人たちはついに
何がWeb3なのかをしっかりと理解
できていると思います。

なので私はこのトークをほぼ自分の
ために考えをはっきりとさせようと
書きました。

つまり私がWeb3についてどう考える
のか、他の人がそれについて話す
のをどのように見ていたか。

そして、コミュニティが全体として
原則や属性を中心にまとまっていく
のをどのように見てきたか
などについてです。

最初に注目することは、
Web3がはるかに大きなフェーズ
トランジションの一部であり私たちは
そこを通り抜けようとしている
ということです。

今まさに大規模な変化が起きていると
言われています。インターネットでは
たくさんの改良が展開されていますが
それよりもっと重要なのは
非常に大きな影響をあたえるような
変化が私たちの種に起こっている
ということです。

つまり私達が
プリコンピューティング文明から
ポストコンピューティング文明へと
移行しつつあるということです。

ほとんどの人たちはこのことを良く
理解していません。私たちは
インターネットとともに育ったため
今できていることが当たり前の
ように知っています。

私たちはたとえば周りのみんなや
その周りの人と話すことができる
能力を持って生活しているので、
それはほとんど瞬間的な速さだと
知ってしまっています。

そのため、私たちにとって理解が
非常に難しいのは、それらのことが
先祖にとってどのようなもので
あったかということなのです。

たとえば百年前、もちろん千年前は
言うまでもないですがこれは驚異的
なことです。それが私たちの種に
起こっているのです。

その中でも最も驚愕なのは、スピードが
極めて早いということです。この移行は
ずっと予期できないスピードで
おきています。

それはまた私たちには遅いように
感じます。これは奇妙なあいまいさを
伴っており、非常に早く起こる一方で
非常にゆっくりしたものです。

私たちにとっては前の年と比べた
ところで大してその違いには
気づきません。

しかし、10年前と後を比べた場合
あるいは50年前と後を比べてみると
劇的な変化が見られます。

だから是非こうしたフェーズの移行
について考えるときは周期的な
波の中で私たちに知らせてくれる
ものと考えましょう。

例えるなら、メインフレームから
パーソナルコンピューター
グラフィカルインタフェース
インターネット
Web、Web2.0、モバイル
ブロックチェーン、Web3.0
と続きます。

これらすべてのコンピューティングは
直近の約80年で起こりました。

あなたはそれが80年後に
どのようなものになるか
想像できますか?

あなたはそれが今から40年後に
どのようなものになるか想像
できますか?そのほうがもっと
簡単なはずですよね?

物事は今も進行中です。ただし
それを予測することは極めて難しい。
そして私たちはその大きな役割を
果たしているのです。

私たちが行う選択
私たちが構築する技術
私たちがそれら技術に与える特性
これらは劇的な意味合いを
もたらします。

それは自分自身だけのためでなく
将来の多くの人々のためになります。

このことは重要で、身の引き締まる
思いがしますし、あなたに多くの
責任を与えるでしょう。

そしてあなたはこのことを
次のようにも考えるべきです。
つまり世界から選ばれた一部の
人達だけに影響を与える
ということではなく、
次第にこの地球上のほとんどの人々に
影響を与えるということです。

私たちはまだ、地球上のほとんどの人が
コンピュータへアクセスできる状況では
ありませんが次第にそうなって
きています。私たちはこれからさらに
何十億人もの人々を迎えるのです。

今後数年間でますます私たち人間が行う
すべての事は何らかの形で
コンピューティングと
インターネットと関係してきます。

ソフトウェアが世界を飲み込んでいる
といわれます。古いシステムが根本的に
新しいシステムへと転換されています。

新しいシステムのおかげで私たちは
以前はできなかったことが
できるようになります。

そしてテクノロジーの新しい波が来る
たびに私たちは強大な力を手にします。

しかしこれらの強大な力は
定義され制約を持っています。

すなわち私たちのテクノロジーの
性質によって、私たちが構築する
ソフトウェアシステムの特性によって
それらがどのように動くか
どの程度信頼できるか
どの程度正確か、どの程度早いか
どの程度オープンにアクセス可能か
どの程度安全か、どのように失敗するか
誰がそれらをコントロールするか
どうやって運営するか、こうした諸々が
劇的に私たちに影響を与えます。

また私たちだけではありません。
世界中のほかの人々つまりやり方が
わからなくてまだこれらを
作ることのできない人もです。

あなた達は幸運な事にどうすればよいか
分かっている人たちの一部です。

したがって、あなた達にとって
特に重要なのは、あなたがこれから
何か作ろうと決めるときに
非常に注意深くなることです。

私たちが構築する技術が
できるだけ良いものになり
できるだけ人間の能力を
最大限に引き出せるようにすること。

またそれだけでなく
慎重に権利に関して注意を払い
人類の長期的な繁栄を促進する
ようにすること。

そして誤って途中でもしかしたら
予期できたかもしれないような大惨事を
引き起こさないようにすること。

もちろん私たちは物事を
正確に予測することはできません。
おそらく試験には合格するかも
しれませんが、我々はしっかりと
何を作ろうとしてるのかに関して
何が待ち受けているのかに関して
用心深く考えるべきです。

そんなところで、真面目な
前置きはこの辺にして
どうぞリラックスしてください。

大丈夫です。こうした事は
過去に何度も起こりました。
毎回、コンピューティングの波は
このように重いものです。

それはあなたが、今日できること
について考えることであり
自分の能力について考えることであり
何かを作る人について考えることであり
今使っているものを作るときに
しなければならなかった決断について
考えることです。

実際に、この部屋には何人かの
そうした人達がいます。

その直近の波を築いた人達へ
どうもありがとう。
私たちすべてにこんなにも
大きな力を与えてくれました。

そして、私たちは一生懸命取り組んで
いこう。より多くの権利が人々に
与えられるために。

よし、それでは行きましょう。
Web3とは何か?

テクノロジー進化の中で
最も最近の波はWeb3です。
それは偉大な新しい力を
もたらすだけでなく
既存の仕組みを大幅に改善します。

そのことについて詳細に論じるために
ここで私はWeb3に至るまでの
進歩について確認してゆきたい。

まずはインターネットの登場です。
インターネットは物理的な配線であり
ネットワークプロトコル
つまりコンピュータがいかに互いに
通信するかを規定するものです。

そうしてインターネットが
構築され始めたのが
60年代、70年代になります。
それ以来、ずっと成長し続けています。

当初は主に学術および軍事的なもの
でしたが、それから商業用途に開放
されたのが90年代で、大きな
タイムラグがありましたが、他にも
たくさんの人がすでにつながっていて
色々なことに使い始めていました。

例えば掲示板やチャットシステムや
Eメールなど様々なものがありました。

それから、Web1.0と呼ばれるものが
やってきます。それは同じ時期に
商業利用が爆発的に進んだことに
関係しています。

ウェブは単に文書と
アプリケーションプラットフォーム
にすぎません

単純なページとして始まったものが
ほかのページとリンクして、クリック
可能なハイパーリンクになりました。
それはとてつもなく成功しました。

インターネットで入手可能な
情報のほぼ全ては、今日ウェブを
通じて利用可能になったものです。

地球上の人々の半分以上が利用したり
何らかの方法でウェブを頼りに
しています。

ほとんどのインターネットユーザーは
ウェブを使うので、もはや
インターネットとウェブの違いを
理解しないという状況になっています。

これらのことを区別するのは
やや難しいのですが
インターネットはワイヤーと
接続のためのプロトコルであるのに
対して、ウェブは、Webページであり
Webアプリであり、Webサイトであり
Webブラウジングです。

Web1.0は当初からWebを指すために
使用される用語として1990年に
始まりました。

Web1.0の期間を逆算してみると
1991年から2000年初頭にかけての
期間になります。その間、ウェブは
主に静的な読み取り専用コンテンツ
として作られました。

それからWeb2.0が2000年代初頭に
登場してWeb上のコンテンツが
だんだんとよりインタラクティブ
になりました。

Web2.0の主な特徴はその動的で
対話型の性質にあります。それはよく
読み書き可能なWebとして
説明されていました。

つまりユーザーは情報を読むことが
でき、また自分の考えを書いて公開
することができるということです。

今日私たちが使用しているWeb
アプリケーションを考えてみましょう。
モバイルのもの、Webのもの、あらゆる
種類の双方向性や参加型システムや
あらゆるネットワーク
とりわけソーシャルネットワークは
Web2.0の大きな部分ですが
他にもそのようなアプリケーションは
あります。

たとえばマーケットだったり
UberやAirbnbなどのような
システムを考えて見ましょう。
それらはWeb2.0にプラグインする形で
新たな経済を生み出しています。

さて、Web3において私たちが
得るものは信頼です。私たちは
読み書きと信頼を獲得します。

私たちはコアレイヤーにおいて
検証能力を構築しています。
これからそれについて
もっと深く掘り下げていきましょう。

すこし目を細めて見るとWeb1.0は
コンテンツをインターネットを介して
リンクさせることでした。
静的なものについてです。

Web2.0はプログラムをそうした
コンテンツにリンクさせることで
動的で豊かなアプリケーションを
色々なデバイスに向けて
作ることでした。

そして今起こっていることは
関係性が逆転しようととしています。
私たちはコンテンツとプログラムを
仲介機構を経由することなく
お互い直接にリンクさせます。
仲介者を取り除きつつ公開での
検証能力を獲得しています。

つまりWeb3.0は中央型*アプリを
分権型*のプロトコルに転換します。
分権型プロトコルを構築するのは
はるかに難しいものです。
(*訳者注を参照)

ここにいる人々はもちろん
そのことを知っているでしょうけれど
これは本当に重要なことで、
アプリケーションユーザーに対して
Web3.0が与える権利や特性
によるものです。

それはまさにビットコインが
お金に対して行ったことを
あらゆる種類のサービスや
アプリケーションを通して
行うことなのです。

それでは、もっと深く
掘り下げてみましょう。
これはインターネットです。
すごくいいですね。

さてWeb1.0です。ここにいる何人が
これらのサービスを使っていますか?
ありがとう。これらがどれぐらい
今でもあるか見てみると面白いですね。

これはWeb2.0です。沢山の素晴らしい
アプリケーションがあります。
また一方で沢山のデータロックインや
データレントシーキング、そして
データの独占が起こっています。

Web2.0では一つ非常に大きな問題
があります。それは広告モデルです。

広告を使ったビジネスモデルは
システム全体の中でも
最もトリッキーなもので、それは
大規模な経済的圧力を作り出すことで
人々をできるだけ惹きつけておき
人々をページに留めておこうとします。

そして、何がおきたかというと、
あなたを怒らせるようなコンテンツは
もっとあなたの関心をひいて
しまうのです。

だからこれらすべてのシステムは
ただ最適化して人々を怒らせている
だけなのです。

もしあなたが直近3–5年間で怒りを感じ
ていて、あなたがソーシャルメディアを
沢山使っていたとしたらおそらく
そうしたことが原因です。

ここに反映されていないものも
沢山ありますしこれらは現在起きている
ことの単なる一部分にしかすぎません。

Web3の世界には沢山のものがあるので
これは単なるサンプルです。

Web2.0も同様で、ここに紹介されて
いなかったものも沢山あります。

さて、Web3について考えるならば
それは様々に起きている多くの事象の
合流点であるということです。

ビットコインは扉を叩き
再びピアツーピアの世界を開きました。

つまりピアツーピアの冬の時代に
雪解けをもたらし、すべての人に対して
私たちはピアツーピア分散システムを
作れるんだと思い出させてくれました。

同時かそれよりやや遅れて
というよりビットコインが
盛り上がってきたのと同じ時期
それは2012-13年のことです。

多くの人々が、私たちが現在
分権型ウェブとして知っている
ようなものを作りはじめました。
それは全体的な動きで非常に
重要な活動でした。

多くの異なるグループが
考えようとしていたこと
もう一度やり直そうとしていたことは
どのようにウェブがブラウザを
通じて動作するかということ。
そして私たちが情報を取得して処理
する方法を変えようとしていました。

このことはなじみのあるように
思えます。Web3の一部のように
聞こえますが、これには沢山の
共通部分があっていくつかの
違いがあります。

最も大きな違いは私が思うに
分権型ウェブとブロックチェーンは
類似のものではないということです。
両者の間には大きな違いがあります。

ブロックチェーンが何をするかというと
経済学や法律などを体系化します。
ソフトウェアが金融を飲み込み
ソフトウェアが法体制を飲み込みます。
中央型ウェブではその方法は
とっていません。

さらにはブロックチェーンに
関するものはウェブの中から
始まったものではありません。

あなたはビットコインのことを
ウェブとは呼ばないでしょう。
ビットコインはプロトコルであり
実行するためにはウェブとは
別の環境で行う必要がありました。
ブラウザでは動かなかったのを人々が
膨大な工夫をこらしてブラウザで
動くようにしたのです。

すると何がWeb3の大きな部分を占める
仕事なのかというと、それはこれらの
ギャップを埋めることです

それは分権型ウェブとブロックチェーン
が互いに話すことができるようなもの
を作ることです。

そうすることですべての
ブロックチェーンシステムを
人々にアクセス可能にします。

あらゆるソフトウェアシステムが
作られていて、それらを使って
人々はトランザクションを発行し
プロトコルやアプリケーションを
使えるようになります。

最後の1つは後のサプライズとして
残しておきます。

これらすべての大部分を
担っているのは検証能力です。
物事を検証可能にしたことは
Web3の世界すべてに通じる
基本的性質だと私は主張したい。

つまりはある物事が真実であることを
確認することができるということです。
このシンプルなことが他の
膨大な性質を可能にします。

それは誰が持ってきたものでも
確認できるし、もし誰かが
検証可能なサービスを提供して
いればあなた自身でチェックする
ことが可能だし、彼らが正しく
サービスを提供しているかどうかを
確認できます。

もし誰かのとあるサービスが
私たちのデータを見ていないと
保証していて、彼らがそれを
検証可能な方法で行っている場合には
あなた自身で確認することができます。
それは本当に素晴らしいことです。

それはハイパーリンクのようなもので
つまりハイパーリンクが最初に
発明されたとき多くの人が
理解できませんでした。

一部の人はその意義すなわち
あるページから別のページへと
コンピュータを介してジャンプ
できることの重大性を理解しましたが
多くの人は理解していませんでした。

つまり検証可能になったことは
それに類するような発明です。
これは直感に反するようなもの
ですし、すぐにユースケースに
発展するものではありません。

例えば「検証能力ってなに?」
「それはどうやって使うの?」
といったようなものです。

ですので、あなた達がアプローチする
方法としては次のように言うことです。

「いかなる時点においても
私がアプリケーションを作るとき、
そしてある種の社会的契約をユーザーと
行うときには、私はユーザーに対して
ある性質を保証したい。」

理想としてはそれを検証可能にする
ことです。もしそうすることが
できたなら、あなたはずっと安全、
弾性のある、さらには倫理にかなった
プロトコルを作ることができます。

そしてこうした諸々の努力は
オープンサービスとして考えられる
試みの一部というように考える
ことができます。

これらの検証可能な
システムは次のような実用性を
生み出しています。

デプロイ可能なオープンソースの
コードシステム。それはある種の
オープンな方法でデプロイされており
全体がフォークして複製可能
であること。そこに参加するための
許可は不要。また長期にわたって
サービスが提供されること。

ビットコインやイーサリアムや
Polkadotまたはあなたが
知っているあらゆる
ブロックチェーンシステムを考えて
みたときに、ある要素に関して
過去の他のシステムと
異なっていることがわかります。

違いは、ある程度の自律性に
あります。完全なる自律ではなく
多くの人が動かしていますが
経済モデルこそが劇的に信頼性を
高めるものであります。
ピアツーピアの世界において、過去に
見たシステムと比べて違いがあります。

ピアツーピアは中央型システムに
敵いませんでした。ピアツーピアでは
インフラを維持するため、あるいは
ニーズが向上したときにスケール
させるために、24時間週7日、人々に
支払う余裕はありませんでした。

しかしブロックチェーンの経済モデルは
それらを可能にしました、このことは
極めて強力です。

Web3の世界にはまた別の部分も
あります。それは市場のための
プロトコルのようなものです。
それはオープンサービスの基礎を
なすと思いますし、また人々にあらゆる
商品の取引ができるようにします。

今手に入るものから売買できる商品
を作り出すということを考えるならば
それは固定的な資源となります。
例えばストレージや計算量や帯域幅など
ようにあらゆるものがあります。

ソフトウェアが世界を飲み
込んでいます。インターネットに
関してこの新技術、つまりWeb3と
ブロックチェーンは私たちの
やり方を根本的に変えるでしょう。

コラボレーションの仕方
ビジネス構築の仕方
ガバナンスシステムの設計方法
およびグローバル組織の運営
などについてです。

ソフトウェアが経済を飲み込み
ソフトウェアが法体制を飲み込んで
います。

そしてこれら二つのことは、あらゆる
システムに関して重大な示唆を
与えてくれます。

しかしやや現実離れした感があります。
それは次のような類のものです。
すなわち、あるテクノロジーが
初めて現れたとき、いくらかの人々は
そこに未来をみて何かを作ろうと
し始めます。最初のうちは
それは不格好なものに見えます。
それらはごく当たり前のことを
やるだけのものだったりします。

たとえば、「僕もちょっとした
スマートコントラクトが書けた!
これで僕も価値を動かすことが
できるし、誰かにデジタルアセット
を送れるようになったぞ」
というように。

しかし何がそんなにこの
スマートコントラクトシステム全体
において素晴らしいかというと、これが
司法権の基礎となっていることです。
それは原始的な法域であり
それは計算可能な法であり
そもそもインターネットに由来
するものです。

したがってこれは極めて強力です。
私たちはその可能性をまだ
引き出せていません。それには
この先何年もかかるでしょう。

ですので、あなたがもし
未来を良くしたいならば
権利をこのシステムに取り入れたい
ならば、分権型ウェブのムーブメントが
目指すように、ウェブをオープンなもの
として定着させたいならば
是非、考えてみてください。

どうすればそれらをコードに
落とし込んでインターネットの法域
とするか、それはつまりこれらの
ブロックチェーンシステムのことです

そうすることで、インターネットは
国家になりつつあります。
これは奇妙なことです。

ここにいる方で誰か
ジョン・ペリー・バーロウの
「サイバースペース独立宣言」
を覚えている方はいますか?
何名かいらっしゃいますね。
手を挙げなかった皆さんへ
是非それを見る必要があります。
これは本当に重要な意味をもちます。

この素晴らしい宣言はつまり
サイバースペースとインターネットが
通常の物質界と比べていかに異なって
いるのかについてです。

また幾分のタイムラグが
サイバースペース独立宣言がなされて
から今に至るまであるとはいえ
私たちは法域を得つつあるように
思います。少なくとも非常に単純な
ものではありますが、時間を経て
順調に動き出し始めるでしょう。

それには5年ないし15年かかる
かもしれない。しかしやがてそれは
非常に強力なものとなり、それ自体が
主張するようになるでしょう。

だから私たちは非常に慎重に
考えなければなりません。
何をそれに組み込むのか
どのような性質を導入するのか。

現在は分岐があり道が分かれています。
私たちはそのうちの一つの道を選んで
今は非常に安全だと考えられる方向へ
進むことができます。

たとえば極めてプライバシーを考慮した
もので、システムを非常に不透明にして
誰にも見ることもコントロール
することもできないものです。

素晴らしいように聞こえますし
私たち全員が賛成しているようです。
ところがその先にどんな危険が
あるのでしょうか。

もしかしたらそれらが誤って
違った大失敗を引き起こして
しまうかもしれません。

ですから我たちは非常に慎重に
考えるべきです。つまり私たちが
これらのことすべてを考慮した上で
それでもなお、他の選択肢よりも
望ましいかどうかということ。

他の選択肢には
テクノ全体主義的なものなど
これにはまったく別の大きな
議題があって、たとえば私たちが
構築しているものはどういった
ものであるのか、機械学習や
ロボット工学などに関連するものに
関して言えば、私たちは国家のツールを
作りながら恐ろしい方向に向かって
しまっているのではないかなど。

今言ったような両極端な選択肢が
ある中で、私たちはできる限り先を
見越して考え決断をしないと
いけません。

そして今から権利を書き込んで
ウェブをオープンなものとして
定着させましょう。

それよって人々が情報交換でき、
つながることができ、保護される
ように。これはまさに私たちに
かかっているのです。

これはGavによるWeb3.0の説明ですが
私が思うにGavはリードしている人の
一人でWeb3.0ムーブメントを
生み出した人です。

“Web3は包括的なプロトコルの集合
であり、アプリケーション作成者に
ビルディングブロックを提供することで
まったく新しいアプリケーションの
作成方法を提示します。
こうしたアプリケーションは今日の技術
と構築のされ方が違っています。
これらの技術はユーザーに対して強力で
検証可能な保証を付与します。それは
ユーザーが受け取っている情報について
彼らがどんな情報を送っているのか
そして彼らが何を支払い、何をその
対価として受け取っているのかに
関しての保証です。”

そしてここからが私の好きな部分です。

“Web3を実行可能なマグナカルタ
だと考えましょう。それは個人の
自由の基礎となるものであり
君主の独裁的な権力にも
対抗しうるものです。”

素晴らしいです。
これも司法について語っていますよね。

私はちょっとしたアイデアを
思いついて、もしウィキペディアで
Web3に関して詳細に載せると
したらどんな風になるかなと。

これは自分の見方です。
できるだけ広範囲になるよう
そしてできる限り包括的に
なるようにして、私たちやこの
システムの知識を全く知らない人も
アプローチしやすいようにしました。

Web3は幅広いムーブメントであり、
それに関連する技術と人々の集合です。

ウェブやインターネットをより
分権型にし、検証可能にし、
安全にすることを目的とします。

Web3のゴールは次のようなものを含みます。

トラストレスな構造ーすなわち
それを使えば取引相手が
期待に反したりするような心配をせずに
信頼することができます。

仲介者を排除することーつまり将来
レントシーキングを行うことのない
団体に頼る必要がなくなります。

ユーザーに自己のデータに関して権限と
所有権を与えること―すなわち
アイデンティティや証券、
取引記録など、他にも本当に沢山の
ものがあります。これらは短時間で
ちょっと書き留めたものです。

そしてもっと詳しく
この場にいても、これらに関して
馴染みがなかったり、まだあまり
理解していない人達のために説明
すると、これらの技術は能力と機能を
追加するもので、それによって
データとプログラムを安全に
リンクさせます。

言い換えるならば認証された
リンクがデータとプログラムを
結びつけてどこかでそのプログラムが
実行されます。

それらは検証能力を追加し、自律的に
トランザクション処理を行います。

そしてピアツーピアで接続ができます。
すなわちすべての私たちが持つ
デバイスはお互いに通信する
ことができます。

私たちのすべてのデバイスは
地球の反対側にいる人々と
直接にやりとりすることができ
それには仲介者を使う必要が
ありません。

そしてトラストレスな
相互運用性があります。
この性質は本当に重要で
Polkadotプロジェクトは
他の多くの人たちに比べてずいぶん
この点で先をいっています。

libp2pプロジェクトは
私が取り組んでいるものですが
それもまた同じ方向です。

ここで素晴らしいことは
自動的に相互運用ができる
システムを作ることです。

お互いの間にいかなる種類の
やり取りも必要としないし
いかなる種類の行動やシステム的なもの
を構築することを必要としません。

これらはオープンな形で動きますし
そこにはすでにインフラがあって
誰もが接続してトラストレスに
使うことができます。

結局のところ、Web3にまつわる
さまざまなバズワードが
雲のように生じてきましたが
それが行うことというのは
分散的な計算とストレージを提供
することです。つまりあなたが
コンピューティングを行うのに
必要なすべてです。

そしてそれは完全に自律的な
アプリケーションを実現させます。
それらはあなたが将来
それらを実行するためにそこに
いるかどうかに関わらず動きます。

このことは非常に重要な性質で
過去にそうしたシステムは
存在しませんでした。

過去のすべてのシステムは
継続的な動作に関心をもった
組織だったり人々のグループによって
維持される必要がありました。

さて、それはどうして
可能になったのでしょうか?
非常に強い経済的インセンティブです。

ビットコインは検証能力について
イーサリアムも検証能力についてです。
Polkadotも検証能力についてですし
IPFSも検証能力についてです。
これは巨大なエコシステムです。

ところで、このインフォグラフィック
これは素晴らしいですね。
2つの側面があって
各列に2つ側面があります。

一つは旧世界のもののようなもの
もう一方の右側にはWeb3や分権型Web
やその周辺のプロジェクトがあります。

私はこんなにも多くのことが
起こっているのを見て驚きました。
ちょうど4年前の2014年と比較するなら
そこにはたぶん5つか6つしか
なかったでしょう。

ですのでこれは非常に
強力なムーブメントで
大きな勢いを伴っています。

是非このまま続けましょう。
正しい方向を目標にしましょう。
そして4年後に私たちが
どこにいるか見てみましょう。

ここで閲覧を再開させて
一時停止です。

もう一つのWeb3はどうなった
のでしょうか?

なんと!実はGoogleで
トレンドを検索してみるとWeb3は
新しい用語ではありません。

それは2004年からあり
それが意味したものはリンクデータと
セマンティックウェブです。

ここにいる方でそれが何か
知っていますか?大勢いますね。

ここにいる方で
それがすべての目的を達成して
成功したと考える人は?
笑ってはいけません。
これは重要なことなのです。
なぜだかすぐわかります。

ティムがその活動全体を
始めたときの理想は、これら
すべてをもっともっと
相互運用可能にして
仲介者をシステムから取り除き
情報のコントロールを分権化
させることでした。

とてもおなじみですね。しかし
彼のアプローチは違っていました。

彼のアプローチはオントロジーの
モデル化を中心としたデータモデリング
およびその一連の技術の構築で
コンピュータ同士を接続して
機械が読むことのできる
ウェブにすることでした。
多くの目標は私たちと同じでした。

この絵を知っていますか?
この古い絵にはWeb2.0があります
少数の大規模なウェブサイトが
特定のコンテンツタイプに
特化しています。

したがってもし多くのウェブサイトが
コンテンツを意味的にシンジケート化
することによって、任意の構造を持つ
ことができたら素晴らしいと
考えられていました。

そこには別のあらゆる技術スタックが
ありました。大きな暗号箱もあります。
そう、多くの人が暗号箱をどうすれば
よいのか知りませんでした。

するとどうでしょう。私たちは
その暗号箱の扱い方を知っていますね。
したがってそこが私たちがプラグイン
する場所です。

一番上の部分を見てください。
信頼が大きな部分で全体として成し遂げ
なければいけない目標だったのです。

残念ながらたくさんのリンクデータ
ウェブは結局のところ大規模な
データ独占の波に飲み込まれて
しまいました。

その結果、わかったことは
最も成功したリンクデータシステムは
最終的にはナレッジグラフとFacebookの
オープングラフを強化する事になって
しまったということです。

結局、当初ティムと何百人もの
他の人たちが取り組んでいた
素晴らしい分権化のビジョンとは
異なるものになってしまいました。
しかしわかりますか?こうした事は
時間がかかるものなのです。

ここにハイパーテキストの歴史が
あります。過去のアイデア段階は
考慮に入れていません。

ハイパーテキストは1965年に生まれ
そこからウェブすなわち初めて急進的な
成功を遂げたハイパーテキストシステム
に至るまでには非常に長い時間が
かかりました。

その間、他の重要な成功もありました。
これらはとにかく時間がかかります。

それからどうなったと思いますか?
1980年のEnquirerです。それも確か
ティム・バーナーズ=リーだったと
思います。なのでウェブは彼の最初の
プロジェクトではなかったのです。

ですからもしあなたが彼のことを
リンクデータで失敗してしまったとか
あれはうまくいかなかったから手を引く
ことにしたと考えていたなら
彼は絶対にそんなことはないのです。

見てください。勝利のために再び戦おう
と言っています。ティムは再び
やってきたのです。

ここで重要なことは、ティムと
リンクデータ・セマンティックウェブ
の世界にも沢山の同じ目標がある
ということです。

それはちょっと技術が異なっていた
だけのことです。その技術では多くの
ことがうまく説明できませんでしたが
私たちはそれがどうすればよいか
知っています。

そこにはいくつか重要な統一部分が
あって、それは実現していたかも
しれなかったのです。今さら実現する
とも実現すべきとも言えないにしても
実現し得たものだったのです。

また多くの人々の関心もありました。
そして全く同じ事に対して、私たちも
関心があります。ただしそれはかなり
違った方法でです。

したがって私はこの分権型ウェブと
ブロックチェーンそしてリンクデータの
ムーブメントはそれぞれがWeb3の
一部だと思います。

つまりWeb3はこうした3つの
ムーブメントをサポートすべきもので
それぞれの目標に向かって
なされるべきです。

結局のところ何をもって
ブロックチェーンよりも
リンクだというのかという事に関しては
最高の定義がなされているわけではなく
構造化リンクデータがなくならないと
いうからといって、他に沢山ある
リンクデータシステムよりも
それがうまくリンクデータのビジョンを
満たすといったことでもありません。

私は将来、私たちが次のような
デジタルシステムを持つと期待して
います。それは私たちの権利を考慮して
おり、人々がこれらのシステムを
使うことで、どんな潜在的な問題が
発生しうるかに配慮したものです。

私は私たちがトラストレスで分権型
インフラストラクチャを手に入れ
それをただ使うだけで何も心配が
ないこと。

たとえば私たちが操られていないこと。
心配するような事というのは大掛かりな
誘導を行う宣伝活動であったり、
あるいは将来私たちを所有するものか
もしれないし、存在しなくなって
しまうものかもしれない。

あなたは突然なくなってしまったような
サービスをいったい幾つ使ったことが
あるでしょうか?

だからこそ私は恒久的かつ安定した
未来をこれらテクノロジーをすべて
使って構築してゆきたいのです。
ここにいる多くの方もそうだと
思います。

そしてそれを実現するためには多くの
協力と相互運用性を必要とします。
思慮分別のあるプロトコルを
構築することです。

すこし前のスライドに戻ってその
スライドに膨大なプロトコルが載って
いたのを思い出してみてください。

おそらく多くの人が複製作業をしていて
同じことを何度も繰り返して
やっている仕事があるでしょう。

たしかに競争が役に立つことがある
一方で、ときに薄く広がりすぎること
によって運動を失敗させてしまうことも
あります。

思い起こしてください。これらの
ことは時間がかかるものなのです。
ハイパーテキストのくだりのところ
で出てきました。

私たちはこの道のりにおいて試金石の
ようになりたいわけではありません。
私たちは最後の一線になりたいのです。

それには多くの協力が必要になってくる
し、多くの妨害もあることでしょう。
そのようなときはそれをチャレンジだと
捉えて、そのプロトコルや
アプリケーションについて、あなたの
作り方をとことん考え抜きましょう。

そしてほかの人々やグループで
似たようなことをしていないか考え
彼らと一緒に働くことを検討して
みましょう。

そして共通している基礎を持ち
寄ってスタンダードをつくり、
共通のプロトコルとシステムを
構築するのです。

Web3 Foundationは素晴らしい
グループです。こうしたことを
手助けしてくれます。

他にも大きなグループがあります。
これは大きなムーブメントで
分権的ムーブメントです。

これはちょっとした皮肉ですが
あらゆる種類の中央化があって
私たちは分権化するためにそれらが
必要なのです。しかしそれを使って
活用すればよいのです。

あなたを助けたいと思っている人は
沢山います。あなたはただ来れば
よいのです。

最後の締めくくりとして、ブラウザ
について話しておきたいと思います。
なぜならこれは私が次の年か2年後に
是非見てみたいものだからです。

Web1.0の世界ではごく少数のブラウザ
しかありませんでした。

ここにブラウザ全体の歴史が背景に
あります。家系図のようなものです。
様々な異なるものがありました。

Web2.0になるとこれらは安定
してきました。ここに登場していない
ものも、もっと沢山あります。

Web3.0のブラウザはかなり違った
ものです。いくつかのブラウザは既存の
ものと同じような見た目で同じように
ウェブを閲覧します。

他のブラウザには実は単一の
ウェブページがどこかのサーバーにあり
それがあなたをブロックチェーンと
つないでトランザクションを送ること
ができます。

その他のブラウザには私たちが
ウォレットと呼ぶようなものであったり
あなたが使っているブラウザの拡張
として使えるようなものです。

したがって私たちはWeb3のブラウザが
どのようなものであるべきかあまり
分かっていないのです。

私たちはいくつかの実験を行って
いますがもっと沢山の経験を積む
べきです。

なぜなら、ここで大事なことは
まだ私たちは良いユーザビリティを
手に入れてないからです。

これは主要な課題ですので、
あなた達に託します。

素晴らしいWeb3を構築するのを
手伝いましょう。安全なシステムを
作る支援をするのです。

あなたが構築しているものの先を
考えて、後になって後悔することの
ないようにしましょう。

今ではたくさんの人が
Web2で彼らがやってしまった
ことについて後悔しています。

ですから、あなたがそうしないことを
確かめつつ、明るい未来を創って
ゆきましょう。

ありがとうございました。

もし、Web3の考え方に共感していただけたら、ツイッターをフォローしていただけますと幸いです。Juan Benet率いるProtocol LabsIPFSチームが来日した時に交流していただけるようなMeetupや勉強会の情報などお伝えします。

また、そうした場でプロダクトをLightning Talkなどで紹介してみたい方も募集しておりますので、お気軽にDMいただければと思います。

(訳者注)Aを中央型、Bを分権型、Cを分散型と表記しました。

Centralized, Decentralized, and Distributed Network Models
Baran, P. (1964). On Distributed Communications, Memorandum RM-3420-PR. Santa Monica, Calif.

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Masa | Secured Finance

Secured Finance Founder | Fixed Income DeFi | Former Head of Derivatives Structuring | Computer Scientist | Task Force Member for Cabinet Secretariat Japan