はじめての「Plasm Networkとは?」

Masaharu UNO
12 min readMay 12, 2020

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BUIDL(買収により途中でSecuritize)から、4月にStake Technologies(ステイクテクノロジーズ)のCOOになったサウナ好きのMasaです。Stake TechnologiesはWeb3.0の実現を目指しているブロックチェーン企業です。以前からグローバルマーケットに果敢に挑戦していているのを見て応援していました。

現在、Plasm Network(プラズムネットワーク、以下Plasm)というプロダクトを開発しています。2020年5月1日にメインネットローンチしましたが、まだ開発は続きます。このPlasmですが当初の私の認識と違っており、かつ、それなりにややこしいので他にも勘違いしている人がいるのではと思い平易にまとめようと思います。

想定読者

ブロックチェーンの仕組みや課題、基盤の状況などをある程度知っていることが前提になります。現在、ブロックチェーン企業で働いている、事業会社でイノベーション部や、経営企画室でブロックチェーン事業の検討をしている方は問題ないと思います。

さて、順に見ていきましょう。

解決しようとしている課題

Plasmは(特にパブリック)ブロックチェーンの課題の一つとされているスケーラビリティ問題の解決に取り組んでいます。

ブロックチェーンでは、ブロックに格納可能な情報量に上限があるためにブロックチェーン上で稼働するアプリケーションの増大によって記録容量が超過しそのデータが格納されず送金が遅れたり、手数料が上がったりします。また、ブロック生成間隔によってデータ処理が遅くなる場合もあります。このようなトランザクションの処理能力の不足をスケーラビリティ問題といいます。Plasmはこのスケーラビリティ問題の解決をします。

Plasm Networkとは何か?

それではここから具体的にPlasmの理解を進めていきます。

Plasmは、Plasmaでは無い。

ここ最初につまづきます。私は、OmiseGOがPlasmaの実装していて、Plasmaのホワイトペーパーの日本語翻訳お願いしたり、PlasmanというPlasmaの最新状況を追うイベントやってたりしてたのでこの先入観から入ってしまい、つまづくどころか大コケしました。。。

スケーラビリティ問題を解決する→Plasmという名前→Stakeの記事読んでもLayer2ソリューションと書いてある→なるほど、Plasmaの開発しているのか。

というように理解してしまいます。しかし、(全く間違いではないですが)違うのです。PlasmはPlasmaでは無いのです。では何か?

Plasmは、PolkadotのParachainとして稼働(予定)するLayer2スケーラビリティソリューションを実装可能なパブリックブロックチェーンです。

これを読んですぐ理解できた人は素晴らしい!それ以外の人は一つ一つ見ていきましょう。

  • Plasmは、パブリックブロックチェーンです。

PlasmはEthereumやBitcoinなどのブロックチェーンと同じLayer1と呼ばれる層にあたるブロックチェーン基盤です。ブロックチェーン基盤ですので他のブロックチェーンと同じように単体でも動きます。PLMというトークンを持ち、コンセンサスアルゴリズムは最終的にNPoS(Nominated Proof-of-Stake)を採用する予定です。初期はPoAです。

レイヤー1のイメージ
  • Plasmは、Layer2スケーラビリティソリューションを実装可能なパブリックブロックチェーンです。

Plasmはパブリックブロックチェーンなのですが、スケーラビリティ問題の解決を目指していると言いました。実際にどうやって解決するかというとOVM(Optimistic Virtual Machine)というプロトコルを実装することによって実現します。

OVMはブロックチェーンにおけるLayer2アプリケーションのロジックを統一的に記述するためのプロトコルです。OVMによって記述された内容はそれぞれアプリケーションロジックとしてLayer1/2向けのコードとしてそれぞれコンパイルされます。Plasm NetworkではOVMをスマートコントラクトと切り離してモジュールとして容易することでより簡潔に便利にOVMを利用できるようにします。 (Plasm Networkホワイトペーパーより)

OVMで実際に実現できるソリューションにはPlasma、State channel、Optimistic rollupがあります。上述したようにPlasmはPlasmaでは無いのですが、Plasmaを実装できるブロックチェーンということになります。

「Layer2スケーラビリティソリューションを実装可能な」と書いているように実装可能なだけであって、実装せずともアプリケーション構築はできます。

技術的な正確性は省略しています。レイヤー3をアプリケーション層にするかは諸説あり。
  • Plasmは、PolkadotのParachainとして稼働(予定)するLayer2スケーラビリティソリューションを実装可能なパブリックブロックチェーンです。

この辺りになるとPolkadotの知識が必要になってきますので簡単に説明します。

Polkadotとは

Polkadotは、異なるブロックチェーンのインターオペラビリティ
(相互運用性)を実現するブロックチェーンです。Layer1のブロックチェーンは様々ありますがそれぞれのブロックチェーンは独立して動いており、数が増えれば増えるほどサイロ化していきます。Polkadotは、各自で独立して動いているブロックチェーンの相互連携を可能にします。

PolkadotにはRelaychain(リレーチェーン)いう唯一のチェーンと、Parachain(パラチェーン)というRelaychainに接続する複数のチェーンがあります。

Relaychainを囲んでいるのがParachain

Polkadotはシャーディングではありませんが、Eth2.0のビーコンチェーンをRelaychain、シャードチェーンをParachainとイメージすると理解しやすいかもしれません。

Polkadotは、RelaychainもParachainも合わせてPolkadotブロックチェーンです。したがって、Parachainとして稼働するPlasmもLayer1のブロックチェーンになります。(繰り返しになりますがParachainにならなくても、Plasmは独立したブロックチェーンとして稼働します。)

ParachainとしてのPlasm

Parachainになれる数は制限されているので、Polkadot系のプロジェクトはみんなParachainになることを狙っておりStakeもParachainの一つになるべくプロジェクトを進行しています。Parachainになることによって、Relaychainのセキュリティを利用することができます。そして、インターオペラビリティが実現した際にはRelaychainを通して、様々なブロックチェーンと繋がるようになります。

2020年5月12日現在では、PolkadotはまだメインネットローンチしておらずParachainオークションが開催するのはまだ先になります。これがPolkadotのParachainとして稼働(予定)の意味です。

私は最初Plasmはレイヤー2ソリューションだと思っていて、なかなか理解が進みませんでした。これでみなさんの理解も進んだのではないでしょうか?さて、もう一度。「Plasm Networkとは何でしょうか?」

将来的に(予定)が外れることを願います。

Plasmの機能

ここからは私が興味深いと思っているPlasmの機能を紹介します。

Dapps Rewards

私はブロックチェーンが新しく生み出したレベニューモデルはマイニングだと考えています。これまでブロックチェーンはPoWであればマイナーが、PoSであればバリデータが報酬を得ていましたがアプリケーションは人気のあるアプリケーションを開発してもマネタイズが難しいという問題がありました。

Dapps Rewardsは簡単に言うとこのマネタイズ問題を開発して、アプリケーションの開発者にも報酬がいきわたるようにする仕組みです。Plasmではチェーンから支払われる報酬の50%がアプリケーションの開発者に分配されます。人気のあるアプリケーションを開発すれば、手数料などの課金モデルを導入しなくて収益が入ります。

Dapps Rewardsに関する解説記事は以下になります。

Operator Trading

PlasmにはOperatorというスマートコントラクトの持ち主がいます。通常は開発者/社になると思います。

上述したようにDapps Rewardsの仕組みにより、人気のあるアプリケーションが動いているスマートコントラクトのOperatorには報酬が入ります。それは、「多くの報酬が入るコントラクトには価値がある。」ということです。価値のあるコントラクトは、誰かが欲しがるかもしれません。

Operator Tradingは、スマートコントラクトの所有者をブロックチェーン上で移転できる仕組みです。支払いはブロックチェーン上でもオフチェーン上でも構いません。

将来的には、価値の高いスマートコントラクトを担保に、そのコントラクトを別のDeFiプロジェクトにロックすることにより資金の借り入れといったことができるかもしれません。

Operator Tradingに関する記事は以下です。

さて、Plasm Networkの概観を説明しました。Stakeチームは日本発のパブリックブロックチェーンとして日本ならびにグローバル市場で活躍していきたいと思ってます。

Plasmに関して、「もっと詳しく知りたい」、「使ってみたい」という方はぜひご連絡ください。

email: masa@stake.co.jp

Twitter:

Appendix

ここからは蛇足です。

Plasmのユースケースは?

やはり処理能力が求められるようなものが最適です。

決済、送金、ポイント発行、DEXのシステム、IoT、ゲームなどがあります。

Plasmのトークンのティッカーは?

PLM(ピーエルエム)です。

PLMはどうやったら手に入るの?

現在、Lockdrop(ロックドロップ)という新しいトークン配布の仕組みで配布中です。取引所では取り扱われていません。

Plasm Network Lockdrop への参加ガイドライン

Lockdropのスケジュール

バリデータに興味がある

Plasmではバリデータになることでブロック生成報酬が得られます。バリデータに興味がある方はこちらのガイド(英語)をご覧ください。

Plasm Networkが目指している世界感は?

先日のミートアップより。

Polkadotがコケたらどうするの?

ここに気づく人はするどい笑。独自のブロックチェーンとして稼働ができるとはいえ、かなりPolkadotに力を入れているのでPolkadotがコケたら大変ですね。同じくPolkadot側の開発進捗にも左右されます。外部要因リスクです。

もっと技術を詳しく知りたい!

ホワイトペーパーの一読をおすすめします。誤字が多くてすいません。

最新情報はどこで手に入る?

DiscordまたはTelegramです。英語が多くなってますが、Discord内には日本語チャンネルがありますのでそちらをご利用ください。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

昨年から実ビジネスへのブロックチェーン技術適用が国内外問わず急速に進んできたように感じます。技術ありきではなく、何の課題を解決するかを進めていくことを常に念頭においています。

ただ、ブロックチェーンはEthereumを筆頭に、DeFiやインターオペラビリティの達成やら話題が尽きず楽しい業界です。

アイデアなどありましたらお話させてください!

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