カンバセーショナル・ジャーナリズムとは?

読者とチャットする未来がくるのか?

by Johannes Klingebiel

This is a Japanese translation of the article titled and subtitled, “What is Conversational Journalism? Is chatting with your reader the future?”, published by Johannes Klingebiel on Feb 15, 2016.

以下は、2月15日に Johannes Klingebiel 氏が『カンバセーショナル・ジャーナリズムとは? 読者とチャットする未来がくるのか?』のタイトルで Medium に寄稿した文章を日本語に訳したものです。

Chris Messina 氏により広められたカンバセーショナル・コマース のトレンドでも注目されているカンバセーショナル・インターフェース。この投稿では、そのニュースメディアでの活用について、いくつかの実例を紹介しながら未来を予測しています。

先日 Quartz がリリースした会話型インターフェースの iPhone 版ニュース・アプリは非常に画期的なプロダクトですが、それ以外にも日本ではあまり知られていない、ニューヨーク・タイムスや BBC での試み、Purple というニュース・サービスについてなど、非常に興味深い情報が得られます。

それでは本文をお楽しみください。


テクノロジーは、たまに不思議な時間の逆戻りをして、チャンネルやメディアを再発明します。この回帰的な進歩の最新の事例は、トレンドとして拡大しているカンバセーショナル・コマースでしょう。Chris Messina 氏が作った言葉ではありませんが、彼により流行になったこの言葉は、一つのとても簡単な図で説明することができます。

簡単に言えば、カンバセーショナル・コマースとは、ビジネスの構築に店舗、ウェブショップ、ホームページではなく、単純なチャットのインターフェースを利用しようとする試みです。このインターフェースは、スマートフォンの Facebook Messenger、WhatsApp、WeChat 、または SMS アプリのような、すでに一般的に利用されているアプリ上で使えますし、また、独立したアプリ上で存在することも可能です。さらに、メッセージの先にいる相手が人間である必要はなく、出来の悪いプログラムから、少し優秀なボット、さらには本格的な AI まで、どのようなものでも構いません。唯一重要なのはインタラクションの媒体:チャットです。

会話上手になることには、ジャーナリストや報道機関も間違いなく関心を持っていおり、いくつかの現場では、すでに読者へリーチする手段としてチャットを利用しています。

Quartz はニュースを「テキスト」します

最新の事例は、先週 Quartz が公開した第一弾の iPhone 専用アプリです。アプリに送られる事前プログラムされたメッセージのコースから、ユーザーはニュースを受け取ることができます。それぞれの新しいメッセージの最後に、読者にはさらに詳細を読むか、次のトピックを表示するかの2つの選択肢が与えられます。またアプリにはテキストだけでなく、図、gif、そして — もちろん— 絵文字 🎉📰✌も送られます。
Quartz のアプローチは、いくつかのレベルで興味深いと思います:

  1. ニュースにユーザーを引き付けます。ユーザーがもっと詳しいことを知りたいのか、次のトピックに移りたいのか?このような基本的なインタラクションは Quartz によりトラックされていると推測しても間違いではないでしょう。
  2. メッセージはとても気楽な体裁で書かれており、世界で何が起きているのかを友達が話してくれているかのように感じさせます。
  3. 広告さえも邪魔にならない手法でアプリに組み込まれています。この手法は成功しそうにも思えます。

Quartz アプリは単に会話をシミュレートしているだけとの主張も可能ですが、それでも、それは非常に上手く出来ています。

Niemanlab のスクリーンショット

NYT の選挙 Slack ボット

もう一つの興味深い、もっとおしゃべりなアプローチは、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の選挙 Slack ボットです。簡単に言うと、このボットは選挙に関する NYT 記事へのリンクを専用チャンネルに投稿してくれます。あなたの Slack チームからのクリック数を稼ごうとする、NYT が行った安易な試みに過ぎないと、これを簡単に切り捨ててしまうかもしれません。しかし、このボットには素晴らしい小さな機能が組み込まれています。

/asknytelection

このコマンドで、NYT 編集部へ選挙についての質問を送ることができます。回答は—もしあれば — その後、ボットのチャンネルにも投稿されます。

そうです。あなたの Slack チーム上で直接 NYT のジャーナリストと会話ができるのです。

BBC での WhatsApp の利用

数日前、WhatsApp は10億人の月間アクティブ・ユーザー数をアプリで記録したと発表しました。Facebook のコミュニケーション・アプリの覇権の一部でもあるこのサービスを永久無料化する発表も1月中旬に行われました。巨大なユーザー数は、これらのユーザーへどのようにリーチするかというパブリッシャーからのさらなる大きな関心を引きつけます。

BBC は、ニュース配信にメッセンジャーを使った最初の機関ではありませんが、それに最も成功した例の一つです。インドでの選挙期間中、ショートテキストメッセージ、写真、オーディオ、ビデオクリップを配信したり、顔文字を使いフィードバックを集めたりして、BBC は WhatsApp と WeChat 上で世界最大の民主主義プロセスを報道しました。

エボラ熱が西アフリカを襲った際には、BBC は病気に関する情報、健康上の注意や情報図をアプリを通じて公開しました。逆にユーザーは現地の情報、流言、質問などを送り返し、編集スタッフがその回答や調査をできるだけ素早く行いました。

API の不足や複雑な購読プロセスのため、まだ WhatsApp ではとても限られたことしかできないにも関わらず、BBC は読者に届けるだけではなく、編集部と現地で起きているイベントをつなげる興味深い方法を見つけ出しました。

Purple

Purple を説明するには、新しいバズワードを作るのが一番簡単です:メッセージング・ファースト・ニュースルームですRebecca Harris により創業された Purple は、Quartz のようにニュースをテキストしますが、本当のテキスト・メッセージを利用します。サービスは特定アプリではなく SMS アプリ内に存在し、事前準備された2つの応答を選択する代わりに、読者がトリガーになる単語を返信すると、その結果として、新たなメッセージが送信されます。(ただ、共和党討論会のケースでは、トランプ氏の gif 画像が送信されます)

このアプローチでは、Purple が最も純粋なカンバセーショナル・ジャーナリズムの一例でしょう。BBC のように、Purple は継続的な編集コンテンツではなく特定のイベントをカバーしようとしています。サービスは米国内の携帯番号に限定されていますが、WhatsApp、Messenger、Slack 拡張機能へも対応中のようです。

ニュースはどこに向かうのか?

私は、ニュース・メディアでのメッセージング利用の将来を決める2つの大きなトレンドが現れると思います:AIプラットフォームです。

Facebook がアナウンスしてテスト中の「ビジネス・オン・メッセンジャー」やデベロッパー向け非公開 API により、市場でアクティブなチャンネルとしてメッセンジャーの利用を開始するための土台は年末までに整備されるでしょう。WhatsApp も同様な計画を発表していますが、詳細はまだ明らかではありません。ただ、どちらのサービスも中国の WeChat からの影響を強く受けることは確実でしょう。これらのプラットフォームだけで、合計の月間ユーザー数は約18億人に達します。

第2のトレンド — AI — は、見極めるのが非常に困難です。私たちは、インテリジェントなニュース配信 AI がニュースを解説している姿を近い将来に見ることは無いでしょう。しかし、ジャーナリストの仕事を支援するプログラムやボットは登場するでしょう。それは、ジャーナリストが過去に回答した質問に対して自動的に回答するボットかもしれません?または、私たちの位置情報や好みに応じてアルゴリズムが関連があるとみなしたニュースを自動的に配信してくれるかもしれません?

単にリンクを人々に送りつける目的でなければ、とてもパーソナルなアプローチは、一部の報道機関にとっては非常に大きなチャンスになり得るでしょう。他のすべてのメディアやソーシャル・ネットワークと同様な注目と対応がメッセンジャーにも必要になり、私たちはスタートアップや様々な場所で、より多くの試みを見ることになるでしょう。それはジャーナリズムの未来とは言えないかもしれませんが、1つの可能性になるかもしれません。