ICO(Initial Coin Offering)の衝撃

Masahiro Sameshima
5 min readJun 5, 2017

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つい先日Braveがわずか30秒で約40億円を調達したとして話題になっている新たな資金調達の手段としてのICO(Initial Coin Offering)。野口悠紀雄氏の著書「ブロックチェーン革命」の言葉を借りると"クラウドファンディングやソーシャルレンディングを通じて資金調達できる主体は限定的であったが、ICOは場合によっては零細企業や個人も資金調達できる可能性を秘めており、「資金調達の民主化」である"と。

そんなICO関連の最近のトピックについてちょっとまとめてみた。

(1)仮想通貨市場の急激な拡大

まず、世界の仮想通貨の市場規模は現時点で$90B(約10兆円)に達し、なんと1年前の10倍以上に拡大。日本では、NTTドコモ、三菱UFJ、ソフトバンクなどの時価総額が約10兆円であり、ここまでの規模に拡大しているとは驚きである。

また、Nick Tomaino(Runa Capital、以前はCoinbaseでbiz devとmarketingを担当)は5/22のポストで、「Y Combinatorが輩出した全スタートアップの時価総額とデジタルアセットの市場規模が同程度になっている」とコメントしている。

(2)VC vs ICO

それでは、ビットコインやブロックチェーンのスタートアップに対してVCが投資した金額とICOで資金調達した金額はどうなっているのだろうか。2016年ではVC:$550M(70%)、ICO:$230M(30%)であったのに対して、2016/2017年の直近12か月ではVC:$140M(30%)、ICO:$331M(70%)とICOによる調達金額がVCを上回るのみならず全体に占める比率が逆転した、との衝撃的なデータが出ている(注:2016/2017年のICOの調達金額はNickによる試算)。

また、NickはVCからの資金調達に比べてICOでは25倍の金額の資金調達が可能と推定しており、今後益々ICOを通じた資金調達は増加するものと思われる。

(3)VCはどう進化するのか?

参照元である上記ミートアップにて、今後VCに起こりうる事として以下の二点が言及されている("VC will adapt, new players will be born")。(1)トークンに投資するヘッジファンドへVCが出資する。例:Polychain Capital(a16zやUnion Square Venturesが出資)。(2)ICOを通じて資金調達するVCやヘッジファンドが出現する。例:Blockchain Capital。

今後ICOによりVCがDisruptされる可能性はあるが、そうなると資金供給以外の機能が益々VCに求められ、a16zのようなHR・PR等の機能に特化した人材をフルラインナップで揃えるVCが生き残り、Benchmarkのような少数精鋭で投資パートナーのみによって運営される旧来型のVCは淘汰されてしまうかもしれない。

一方で、Blockchain Capitalのように中小規模のVCがICOをファンドレイズの際に活用して大型のファンドレイズに挑戦するなどのVC業界内での下克上も起こるのではないだろうか。

最後に、Chris Dixonの最新のポストでは、「ICOに注目が集まっているが、あくまでネットワーク上でトークンモデルが技術革新した中の複数の例の1つに過ぎない。」とコメントしており、さらなる構造変化が起こる可能性がある。

このような破壊的な技術革新が起きている現状下、自分達にも何ができるのか今後も考えていきたい。

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Masahiro Sameshima

VC/ANRI/#NestHongo/Web is boring. High-Tech is interesting.