Benedict Evans流:VCの投資リターンとスタートアップの考え方

世界最高のVCと名高いa16zのパートナー Benedict Evansによる2016年8月10日のポスト"In praise of failure"はVC、起業家の方々にとって示唆に富む内容でしたので、その概要を以下の通りシェアしたいと思います。トップのVCはホームラン案件も多いが三振(元本回収が1倍以下)も多いという結果が印象的で、彼らは困難な課題に取り込むベンチャーにこそ投資して、その結果失敗も多いが大成功を収めているということが読み取れます。(例えば最近ですとa16zはFreenomeという、血液から早期ガン診断を行うバイオベンチャーに投資しています)。日本の僕らも、一般的に課題解決が困難なハードルの高い課題に対して、果敢に挑戦する起業家こそ支援しなければと個人的に考えています。

詳細については以下、参照元をご覧下さい。

まとめ

  • VCの投資案件のうち、約半分の案件は元本割れ。つまり”失敗”。
  • VCの投資案件のうち約6%の案件が10倍以上の投資リターン(つまり”大成功”)を出し、それらがすべてのリターンの60%を占める
  • ファンド元本の5倍以上のリターンを出したトップVCは平均的なVC(3-5倍のファンドリターン)に比べて10倍以上のリターンを出した案件の割合が約二倍である一方、元本割れの案件の割合も高い。つまり、トップVCの投資案件はホームランが多いものの、三振も多い。
  • VCから投資を受けるスタートアップは、失敗するかもしれないが世界を変える為に挑戦するもの。仮に失敗したとしても起業家が何かミスをしたということではない。あくまで、挑戦したということに過ぎない。"Failure just means you tried"

Benedict Evansのコラム本文(意訳含む)

多くの大企業において、何か仕事を達成できないとあなたは失敗したということを意味するが、スタートアップやスタートアップに投資するVCにおいては、異なる意味を持つ。

昨年、a16aへの出資者であるHorsley Bridge(1983年設立。運用資産$14B。PEやVCにFoF出資する全米屈指のファンド)が、彼らが出資したVCによる1985年から2014年にかけての投資先7000社を調査した結果をシェアしてくれた。まず初めに、以下の点が明らかになった。

  • VC投資案件のうち約6%の案件が10倍以上の投資リターン(大成功)を出し、それらがすべてのリターンの60%を占める

更にデータを掘り下げていくと、ファンド全体のリターンと各投資案件毎のリターンについて以下の点が明らかになった。

  • 1倍以上のリターンを出せなかったファンドを除いて、全てのファンドの約半分の案件は投資元本を回収できなかった(下記表の左半分を参照)。
  • 5倍以上のリターンを出したトップのファンドは、投資元本を回収できない案件の比率が高いものの、10倍以上のリターンを出した案件の比率も突出して高い(下記表の左半分のうち、>=5x fundsを参照)。つまり、トップのファンドは失敗するかもしれないがホームランに成りうるスタートアップに対してリスクを取って果敢に投資している。
  • 5倍以上のリターンを出したトップのファンドについて、10倍以上のリターンを出したホームラン案件が占めるリターンの割合は全体の90%以上。つまり、彼らは失敗を抑えたからではなくホームラン案件に投資したからファンドリターンを最大化できた。(下記表の右半分のうち、>=5x fundsを参照)

ファンド全体で3-5倍の投資リターンを求める平均的なファンドの投資案件のうち10倍以上のリターンを出した案件の合計リターンは投資金額の26.7倍だった。一方、ファンド全体で5倍以上の投資リターンを出したファンドの投資案件のうち10倍以上のリターンを出した案件の合計リターンはなんと投資金額の64.3倍だった!!(下記表を参照)

つまり、トップのファンドはヒットを量産している訳ではなく、特大ホームランによって高いリターンを出したことが分かる。

もしあなたが、伝統的なPEファンドのポートフォリオマネージャーであり、株価が下落傾向にある会社の株式に投資してしまった場合、他の投資により損失を補填することができない為、あなたは職を失うだろう。そしてまた、仮に上場している会社が潰れてしまった場合、その会社の多くの従業員が失敗してしまったことを意味する。

しかし、VCの場合、多種多様なスタートアップに投資する。スタートアップは、殆どの場合失敗するが、成功すればGoogleやFacebookのように膨大なリターンを生み出す可能性を秘めている。

しかし、大成功する可能性を秘めているものは、失敗する可能性も高い。もし仮に失敗するリスクが無く、成功が明確なアイデアであれば、誰でもそのアイデアを実行しているだろう。GoogleやAmazonにしろ一見悪そうにアイデアに見えるものの、本当は良いアイデアが成功している。しかし、"本当に悪いアイデア"と"悪そうに見えるが本当は良いアイデア"の違いはパッと見では分かりにくい。だからこそ、VCの投資先のスタートアップでも約半分は失敗し、5%は大成功を収めるのだ。

勿論、全てのスタートアアップやビジネスアイデアがこのモデルに沿う訳では無いし、VCからの投資に向いているとも限らない。しかし、あなたのスタートアップはリスクもあるが大成功する可能性もあるのであれば、リスクの大きさと成功した場合のリターンを理解する必要がある。

これはVC、更には起業家にとってチャレンジである。あなたは"失敗しない為にはどうすれば良いか”よりむしろ”成功させる為にどうすべきか”を考える必要がある。あなたは、”普通に考えたら失敗してしまうから、リスクを取らずにやめておこう”という気持ちを一旦忘れ、失敗するかもしれないが世界を変える可能性があることを受け入れる必要がある。

実際、これらはVCというよりは起業家にとって当てはまる。VCが成功するスタートアップにのみ投資したいように、起業家も成功を望む。しかし、起業家は一度に一つのスタートアップしか経営できない。その為、起業家は人生のうち何年かを、大成功する可能性のある“一見悪そうに見えるが素晴らしいアイデア”にかけるのである。そしてこれらの半分は様々なリスク要因によって失敗してしまうが、これは誰のせいでもない。もしあなたが、安定した企業を数年で潰してしまった場合は、あなたは失敗したことを意味する。しかし、スタートアップが失敗した場合は。一般的にあなたがリスクを取ったことを意味する。失敗するかもしれない覚悟を持って起業することは容易なことではない。しかしあなたがこの文章を読んでいるのは、あなたがこの勝負に賭けようとする起業家だからである。

だからといって失敗は良いということではない。誰にとっても失敗は恐ろしく、苦痛を伴うものだ。あなたは最初から失敗するつもりでやっている訳では無いはずだ。また、馬鹿げたことや無茶なことをするのが良いということでも無い。失敗は、あなたが取ったリスクの一つの結果であり、失敗自体はあなたが愚かだったという事では無い。”Failure just means you tried.”

以上

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