YC Sam Altmanからテクノロジースタートアップへのアドバイス

Masahiro Sameshima
7 min readOct 25, 2016

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Yコンビネーター(YC)のSam Altmanからテクノロジースタートアップ(原文では"Hard Tech Startups")へのアドバイスをまとめてみましたので、技術シーズをベースに起業を考えている方、既に起業した方のご参考になれば幸いです(原文は以下です)。尚、本郷にてテクノロジースタートアップの創業支援やシェアオフィスを無償提供しておりますので、ご関心ある方はtwitter等でご連絡ください。

YCはソフトウェア関連のスタートアップしか投資しないのではと誤解している方もいるかもしれませんが、そうではありません。YCのこれまでの最大のExitは自動運転関連スタートアップCruise Automation社(2016年3月推定1,000億円以上でGMに売却)ですが、他にもGingko BioworksやRigetti Computing、uBiome等、数多くのテクノロジースタートアップに投資しています。我々は今後もより多くのテクノロジースタートアップに投資していきたいと考えていますし、YCが如何にテクノロジースタートアップを支援しているか説明したいと思います

創業間もない初期の頃は、テクノロジースタートアップとソフトウェア関連のスタートアップとの間には、皆さんが思うよりも多くの共通点があり、スタートアップは一般的に、初期投資が少なく、またiterationサイクルが速いとうまくいきます。ソフトウェア関連のスタートアップに取っては、少ないコストで速くサイクルを回して軌道に乗せることは比較的簡単ですが、テクノロジースタートアップが効率的にできると、しばしば驚かれます。

多くのテクノロジースタートアップは、大学などのアカデミアや大企業の研究所から生まれますが、そこでのプロジェクトは金額が大きく時間をかけがちです。そこで、我々は、彼らがより速くiterationサイクルを回せる様なマインドセットに持っていきます。

我々が最初に行うことは、創業者の描く大きな将来像の中で、速く検証できて、且つ比較的少額のコストで可能な小さなプロジェクトを見つける支援です。このプロジェクトはしばしば、彼らの将来像の一部ですが、実際に何人かのユーザーが欲しいと思えるものです。一見すると、遠回りのように見えますが、創業者に対して、彼らの為/従業員を雇う為/投資家にアピールする為、チームとしての勢いを生み出すきっかけとなります。

そしてまた、我々はテクノロジースタートアップに対して小さなプロジェクトから開始するようにアドバイスする一方で、創業者が大きな将来像を描くことが好きです。必要とあらば、彼らの技術を発展させ、大きなインパクトを与える為の長期計画の立案を手伝います。YC卒業生ではありませんが、「小さなプロジェクト + 長期の将来像」が成功している良い例はTeslaだと思います。彼らのビジョンは「安価な電気自動車を大衆に届ける」、というものですが、最初に彼らは真逆の、高級なRoadsterを製造し、その利益で以ってModelSを製造しました。そして、ModelSの利益によりModel3の製造を開始しました。

次世代型原子炉を開発しているOkloはYC卒業生の良い例です。彼らが最初YCに来た時は、全く異なる幾つかの市場を同時に追いかけていました。我々は、すぐ参入できる市場に絞り、一度に多くのことをしないようにアドバイスしましたが、一方でインパクトを最も大きく与えられる将来像について検討するようにともアドバイスしました。

コストの観点から、我々はテクノロジースタートアップができるだけ効率的に運用できるよう手助けします。インターネット関連のスタートアップが爆発的に増加した要因の一つは、ホスティングの費用が一桁以上下がり、操作が容易になったことです。今これはテクノロジースタートアップにも起きている現象です。バイオ分野やエネルギー分野、ロボティクス分野やその掛け算となる分野において、基盤となる多くのコンポーネントやサービスのコストが劇的に現象しています(DNAシークエンサーが有名な例です)。我々は、創業者が最初のビジョンを作り、会社に必要なコンポーネントを早急に探せるよう支援します。また、創業者のニーズに合わせてサプライヤーやサービスプロバイダーと契約し創業者が使えるようにします。

また、我々は複雑な規制類をクリアーすることを支援します。テクノロジースタートアップはしばしば規制で守られた市場で活動していて、規制をクリアーする為の負担は彼らにとって凄まじいものがあります。最も規制を受けている市場で、すぐに創業者の仮説を検証する手段があったとしても、我々はトラブルに巻き込まれないよう支援します。

適切な時期に、スタートアップが販売候補先を探す手伝いをします。他に集中すべきことがあり、適さない時期もあります。しかし、その他の場合には、小さなプロジェクトを見つけ、更にチームの勢いをつけるには有効な手段です

Gingko Bioworks社(微生物から調味料や香料を製造)はこの良い例です。YCに参加する前は、約6ヶ月という長期間の販売サイクルで、幾つかの大きい取引を成立させていました。しかし、YCのプログラムに参加した際に、大きな取引を少なくし、もっと速く販売できる方法を考えるようアドバイスしました。その結果、プログラム期間中に、この戦略を取り3社との新たな契約を成立させました。彼らはこの戦略により勢いがつき今に至ると言っています。

テクノロジースタートアップも他のスタートアップと同じ三ヶ月のバッチプログラムに参加します。三か月の間に、ハードウェアの日とバイオの日、があり、テクノロジースタートアップは先輩起業家が特定の課題をいかに解決したかを聞きます。

ハードテックスタートアップは、他のスタートアップと同様に3,000人以上のYC卒業生ネットワークに加入します。卒業生はアドバイスをくれたり、最初の顧客となりえます。例えば、Transcriptic社(ロボット等で自動化することにより化学試験を低費用で代行するサービスを提供)は、彼らのサービスを使いたいというYC出身のバイオ関連のスタートアップに対して$20K(約200万円)のクレジットを提供します。これにより、他のYCのバイオスタートアップが助かるだけでなく、Transcriptic社自体も助かります。(ちなみにこれは日本の企業で古くからある「系列」という普通の考え方で、KPCBが日本に来て「Keiretsu」という考え方を研究しアメリカのベンチャー業界に持ち込んだという話もあります。)

YCの卒業生は現役生からの心理カウンセリングも行います。特にハードテックスタートアップは課題が困難で、また投資回収に至るまで長い時間がかかってしまうこともあります。同じ課題を抱えている他の創業者と同じグループに所属することは大いに役に立ちます。

最後に、我々は特にテクノロジースタートアップの資金調達が得意です。創業者が取り組んでいることは、投資家に理解しにくい為、特にハードテックスタートアップの創業者にとって資金調達は困難です。しかし、YCの審査を通過したという事実は投資家にとってプラスに働きます。

我々は今後も多くのテクノロジースタートアップを支援します。将来、テクノロジー領域で多くの1兆円企業が出てくるでしょうし、そうなりうる多くのテクノロジースタートアップを支援したいと考えています。

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Masahiro Sameshima

VC/ANRI/#NestHongo/Web is boring. High-Tech is interesting.