【書評】発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
2002年に発売された、「発想する会社!」を読みました。
「デザイン思考」や「デザインシンキング」といった言葉が最近注目を集めていますが、本書はそれらの言葉を生み出したシリコンバレーのデザインファーム「IDEO」のゼネラルマネージャー トム・ケリー氏が書いた本です。
本書には「デザイン思考」「デザインシンキング」といった言葉は出てきておらず、IDEO自身が彼らのプロセスに名前をつける前に書かれた本です。
しかし、まるで最近書かれた本であるかのような内容で、濃く色褪せていない内容でした。
IDEOのイノベーション技法
これが現在で言うところのデザイン思考になるわけですが、目次に書いてあることが全てと言ってもいいと思います。
- イノベーションは人間観察から始まる
- 究極のブレインストーミング術
- クールな企業にはホットなグループ(チーム)が必要だ
- 迅速なプロトタイプ制作で問題を見つける
- 「温室」のようなオフィスを作る
- 予想外のことを予想する
- バリアを飛び越える
- 楽しい経験を作りだす
- 枠をはみ出して色を塗る
デザイン思考のプロセスとしては、1の人間観察(エスノグラフィ)や、ブレインストーミング、プロトタイピングなどは、よく語られるが、やはりイノベーションには、様々なバックグラウンドを持つ多様性を備えたチームと、その「ホットな」チームのクリエイティビティを最大限に引き出すオフィスも重要であることが述べられているのが注目すべき点である。
チームのメンバーとしてではなく、個人としてものを考え、孤独な天才として自分のアイディアを手放さず人に改良させたりしない人ではいけない。
このあたりは、研究開発職だと、比較的個人で物事を考えてしまう場合が多いので、肝に銘じておきたい。
本書を読む上で、特に印象に残ったことをいくつか挙げておく。
「名詞」ではなく「動詞」で考える
製品やサービスを、ものの名称や機能の名称(名詞)で考えるのではなく、それによってユーザーが実現したい行動(動詞)で考えることで、それらの使われ方に対して敏感になることができる。
究極のブレインストーミング
“ビジネス・コンサルティング会社アーサー・アンダーセンによる最新の調査では、70%以上のビジネスマンが自分の組織でブレインストーミングを活用していると答えている。….同じアーサー・アンダーセンの調査でブレインストーミングをしていると答えた人の76%が、回数は多くても月1回だと認めている。…ブレインストーミングを好調に保ちたければ、月に2回以上はブレインストーミングの筋肉を鍛える必要がある。…IDEOではブレインストーミングはほぼ毎日行っている。”
ブレインストーミングを価値あるものにするには、当然回数を重ねて、鍛えることだ。このあたりは言われればわかるものの、実際にIDEOのように毎日ブレインストーミングをするということは難しいと考える人が多いのではないだろうか。しかし、行動する一歩を踏み出すことが大事なのである。
自らのエネルギーを生み出す
やれなければならない仕事にもかならず楽しいところがある。仕事は遊びなのだ。
仕事は、いくつかの遊びの行為に分割することによって、より感動に満ちたものになる。