深圳訪問記(2018前編)
深圳に行ってみたくなり、実際に行ってみた私が辿った10のステップ(前編)
【Seeed Studio Advent Calendar 2018寄稿記事】
今年初めて深圳を訪問した。何故行ってみたくなったのか?その過程や深圳での体験を振り返ってみた。寄稿記事として書き始めたが、思いつくまま10のステップとした。
STEP1. 子供の頃電子部品に興味を持つ。
子供の頃、壊れかけのラジオ*を分解して見つけた様々な部品の配置は、整然と並んだ電子回路がまるで未来都市や巨大コンビナートのようにも感じられた(*徳永英明/作詞作曲、壊れかけのRADIOとは無関係)。イメージ的には以下の Tube Map Radioという作品が近いかもしれない。
学研電子ブロックのセンサーを使ったアナログ回路を組んだときや、中学の技術家庭の授業で手書きの基板パターンからマスキング、エッチング処理して出来上がったプリント基板に、電子部品を半田付けして、電源を繋いで動いたときの驚きや興奮は忘れられない。
STEP2. 大人になってarduinoに興味を持つ
4年前、セカイカメラの井口尊仁氏の話を聞くため参加したIoTセミナーイベント後の即売会でarduinoをはじめようキットとO’reillyの”arduinoをはじめよう”を手にし、Lチカをしてみた。子供の頃の驚きや興奮はなかったが、しばらく触ることもなかった電子部品に久しぶりに触れるきっかけとなった。
子供の頃は理解力不足もあったが、わからなかった電子部品の仕様、基板の寸法やソフトウエアの仕組みもarduinoではオープンソースハードウェアとしてオンラインで比較的容易に検索できる。時代は大きく変わっていた。
STEP3. 久しぶりの電子工作
arduinoを使ったハンズオンが、DIY好きの有志で構成されたMaker Labo Nagoyaで開催されていることをSNSで知り、Lチカ止まりから抜け出したくて参加した。実際に使っている参加者に色々と聞けるのは大変有り難かった。
翌年にはEagle CADで設計したPCB基板のデータを深圳にオンライン経由で製造依頼する機会も得た。 Charlieplexingという手法で少ない入力用配線数[N=5]でarduino以外に別途制御用マイコンを用意しなくても多数のLED[N*(N-1)=5x4=20]個を制御できるものだ。エッチング処理なしで自分で設計した基板が出来上がるのは便利だし嬉しい。ブレッドボードを使えば半田付けも必要ない。arduinoを使えば学研電子ブロックのような手軽さで高度なスケッチも簡単に流用できるのも魅力的だ。
更にはSeeed Studio のGrove対応センサーやモジュールを活用すればプロトタイプにブレッドボードすら省くことも可能になることもある。
STEP4. 深圳のエコシステムについてイベントや書籍で学ぶ
そうこうしているうちに、Maker Labo Nagoya、DIY、Maker界隈で聞く深圳の噂に好奇心が徐々に高まっていた。
秋葉原の30倍の電気街、自分で設計したPCB基板をオンラインで格安に製造できるサービス、街を行くセグウェイのような乗り物、LED電飾ビル群、街中の公園や広場で飛ぶドローンの光景。購入直後の厳しい規制で飛ぶ機会を失って埃を被る私のドローンとは対照的な何処か遠くの異世界のように感じられた。自分の目で確かめてみたいが、深圳はまだ敷居が高く感じられた。
ヤフー Lodgeで開催されたイベント:”深圳IoT界のフロントランナーに学ぶ 「メイカースペースの可能性と、世界最高の分業体制の秘訣」”に参加し、即売会の書籍を手にしてみて「これは実際に自分の目で確かめないと」という気持ちが強くなった。
STEP5. 深圳初訪問。
そしてようやく深圳を訪れることができた。大阪から香港へはLCC、香港の鉄道を乗り継いで深圳の羅湖駅に向った。越境の橋を徒歩で渡るとスマホの電波が切り替わり、徐々に越境した実感が湧いてきた。
英語もGoogle Mapもまともに使えない世界では移動もままらなかったが、駅員に筆談で訊ねると乗り換え案内のメモを書いてくれた。普通に読めるのが嬉しかった。スマホを持った若者に道を尋ねようと英語で話しかけても通じなかったが、地図を見せるとタクシーを捕まえてくれて運転手に伝えてくれた。とても有り難かった。深圳人は親切な人が多い。
噂に聞くLEDが豊富に使用されたイルミネーションもあちこちで確認できた。しかし後でみるとこれは序の口だった。
深圳市内では歩道や店先に不用意に放置されたQRコード付き自転車を良く見かける。スマホアプリのカメラにかざすだけで開錠できて、乗り捨ても可能だ。そのスマホアプリを使用するためには現地simカードが必要で、更に外国人にとっては決済システムの関係で現地口座が必要で簡単ではない。現地の人達が乗りこなしているのを横目で眺めるしかなかった。(Mobikeは2018年現在日本国内アプリで使用可能)こうしたシェアサイクルは深圳以外の内陸都市部でも見られる。当初数十社が競合したが次第に収斂していった(以下、シェアサイクルの関連記事)。
またセグウェイのようなホバーボードを良く見かけた。公園では小さな子供達も乗っている。
たまたま見つけたサイゼリア@深圳を見つけて店内に入ってみた。メニューや味、価格、店舗レイアウトは日本のそれとあまり変わらない。一瞬日本にいるかのような錯覚を覚えたが、もちろん周りで聞こえるのは全て中国語だった。
華強北の電脳街では、USBケーブルやスマホケース等の周辺機器、LEDが多く陳列されている。無数の小規模店舗の集合体のようだ。
【後編に続く】