古い理論だが、よく参照される組織論のモデルとしてダニエル・キムの「成功の循環」モデルがある。
この手の組織系のモデルは、無数の因果関係の一部を切り取ったものでその中身が原理的にどうこう言っても始まらない。科学では、モデルの正しさは、その結論が事実によって検証される。
もう少し厳密でない、ビジネスの世界における理論では、そのモデルが何をもたらすか、どんな視点をもたらすか、を評価すればよいのではないかと思う。
成功の循環モデルは、基本的に、ビジネスでフォーカスされがちな行動や思考だけでなく、関係性の質が思考や行動に影響する、という視点を提供する、という点で有意義だと思う。
一方で、じゃあ、上手くいかないマイナスの循環に陥った時、どこから手を付けるべきか、ということについては何も言ってくれていない。
心理学をバックグラウンドにもつ組織開発の専門家は、「関係の質」に直接アプローチしようとすることを好む傾向があるように思う。ダイアローグや研修やコミュニケーションツールの導入など。
ただ、これは日本の文化特性もあると思うが、単に仲良くしましょう、で終わるリスクも高い。
プログラマの自分はもう少し明解なアプローチを好む。関係の質が結果にのみ依存する、というのは循環を変容させることを考える場合は修正したほうがいいだろう。不遇の時代を一丸となって乗り越える組織だっているはずだ。キーとなるのは、コミュニケーションも含む様々な行動だと思う。
さらに、良質の行動を生む思考には、偏見や誤解に基づかない良質の観察が不可欠と思う。また、組織で交わされるコミュニケーションの何をどのように受け取るのか、という情報入力の質は関係の質に左右されると思う。関係が破綻した中ではちょっとした行き違いが大きな誤解を生み、適切な思考や行動を妨げる。
この場合の観察は、数値化できたり、精緻なものだけでない。不平不満が多い、とか、人の表情だとか、「行動の直接観察」(ワインバーグ)も含む。
自分が好む介入は観察と思考のスキルを向上させること。
個人的な見解では、デイビット・ボームのダイアローグやピーター・センゲ流の組織開発手法の多くは直接的には、思考と観察の質の向上を目指している。
自分が尊敬するG.M.ワインバーグは、まさにこの、思考、観察、行動を変革し、組織をアップグレードする方法について書いている。
追記
こんなサービスがあるみたい。価格も安いので導入しやすいかも