TwitterやAirbnb等にみる Minimum Viable Productの4つのタイプと作り方
皆さんも良く聞かれていると思うが、スタートアップの90%以上は失敗することはご案内の通りだ. 特に失敗の理由として挙げられるのは、初期の市場の課題やプロダクトのPoCが十分に検証されてないことにより起こるpremature scaling(72%)や、結果として市場のニーズが無かった(42%)といった内容が主だ. 別の良い方をすると、起業家が多くは以下のような想定を検証しないまま、拡大を急いで失敗していると言える.
「プロダクトは、ユーザーの課題を解決しているはずだ」
「プロダクトが解こうとしている課題は、ユーザーにとって重要だから、ユーザーはきっとお金を払ってくれるはずだ」
「プロダクトは、ユーザー目線で競合よりもイケてるはずだ」
従って、スタートアップの成功確率を高める上で、まず取り組むべきは、”お金を掛けずに短期間で、自分の前提とする想定を検証する”ことだと思う.(”イケてるプロダクトを作り、早く広げる”ことではない.)つまり、Minimum Viable Product(=MVP)での検証を正しく進めることだと思う.
Minimum Viable Product(MVP)とは何か?
MVPとは、Lean Startupの著者Eric Ries氏の言葉を借りると以下の通りだ.
ここで重要なのは、MVPの最大の目的は、仮説検証による学びの獲得だということだ. 繰り返しだが、顧客に売れる最低限のプロダクトを作ることではない. 過去の海外の失敗事例を具に見ていると、ここを近道しようとうまくいかない起業家が多いように思う. (責任の一旦はVCにもあるかもしれないが)
そこで今回は、MVPのタイプや作り方をFacebookやDropbox、Twitter等の代表的なネット企業の例を見ながら紹介する.
4つのMVPタイプと代表例
MVPと一言で言っても、事例を見ているといくつかのパターンがある. ここでは、Cobloom社の記事や海外の起業家のブログ等を参考にしつつ、以下の4つMVPタイプを代表例と共に紹介する.
1.仲間内/社内のツール as MVP
代表例: Facebook, Twitter, Slackなど
起業のアイディアとして、自分達がユーザーとして使いたいサービスが無いため、より優れたサービスを開発しようと起業するケースがある。その場合、まずはMVPとなるプロトタイプを仲間内だけで使い、フィードバックを反映しながら仮説検証を進めることがある。主にSocial Mediaやコラボレーションツールなどのサービス領域で、良く見られる。
映画 「Social Network」でご覧になった方も多いと思うが、FacebookはMark Zuckerburgがハーバード大学の学生限定で始めたのは有名な話だ (当時の名前は”thefacebook”). ローンチ後、あまりにも反響が大きかったため、数カ月で他のトップ3校(スタンフォード大学、コロンビア大学、イェール大学)に開放し、US内そして海外の大学へと拡大していった.
Twitterは、Podcastコンテンツを作っていた、Jack Dorsey率いるOdeo社の経営陣4人が「少人数でSMSができるサービス」を思いついたところから始まっている(当時の名前はtwttr). そこで、プロトタイプをOdeo社内限定で展開し、従業員に有志で開発やフィードバックをもらうことで仮説検証を繰り返した. その結果、今あるようなニュースリンクの共有や知らない人同士でもチャットできるツールに進化させていった.
その他の例として有名なのは、Slackだ. Slackの起源もTwitterに非常によく似ている. Slackは元々ゲーム会社だったが、良い社内コラボレーションツールが無かったため、自社開発し、これがあまりに使いやすかったため、ゲームからピボットしたのは有名な話だ.
2. ランディング・ページ(LP) as MVP
代表例:Airbnb, Buffer, Spotify, Lyft, Unsplash, Angel Listなど
次に良くあるMVPの作り方としては、実際のサービスまで落とし込まず、ランディング・ページ(LP)のみで仮説検証を進めるパターンがある. このケースは、特にサービスの提供価値に対して、本当にニーズがあるのかを市場に問うことを目的に行われる. 具体的な進め方は、以下の3ステップ.
Step1: サービスの概要を表現したLPを作る
Step2: Adwordsキャンペーンでトラフィックを作る
Step3: CVRを測る
buffer
Social Media管理のSaaSを提供するbuffer社は、このアプローチで成功したスタートアップとして有名だ. buffer社創業者 Joel Gascoigneは以下にあるようなシンプルなLP(一番上)、価格表ページ(真ん中)、そして問合せページ(一番下)をMVPにした. これにより、「プロダクトのコンセプトに同意してくれるユーザーがどれ位いるのか?」「プロダクトに(どれ位)お金を払ってくれるのか?」を仮説検証を進めた.
Airbnb
Airbnbも(意図的ではないが)LPをMVPとして始めた有名な例だ. ある時、創業者のBrian CheskyとJoe Gebbiaは家賃を払うお金が無く、困っていた. そこで、自分達のアパートの写真だけを載せたLPを作成し、安く提供することで日銭稼ぎをしようとしたことが始まり. そこで思いの外、反響が大きかったため、現在のサービスに展開していった.
他にも、LyftやSpotifyなどの有名なユニコーン企業や、月次6億PVを超える写真サイト Unsplashなど数多くのスタートアップがLPをMVPとしてスタートしている.
3.フェイクデモ as MVP
代表例:Dropboxなど
MVPとしてLPの変化球版として、プロダクトコンセプトの仮説検証の方法として用いられるのが、(プロダクト開発をせずに)プロダクト紹介動画等のフェイクデモによるMVPだ。特にNewsやSocial Mediaを活用して、広くフィードバックをもらうのには優れた手法だ。
Dropbox
フェイクデモをうまく活用した有名な例が、Dropboxだ. Dropboxの創業者Drew Houstonは創業当時、既存のクラウドストレージサービスはユーザーにとって使いにくく、安全性に難があると思っていた. そこで、その仮説検証(&初期のユーザー獲得)のために、プロダクトを開発せずに、Drew自身が30秒のサービス紹介動画を作り、2007年4月のHacker Newsに投稿した. その結果、数千ものコメントがユーザーから寄せられ、仮説検証をした. また、LPも活用することで70,000人ものユーザーの連絡先を獲得することに成功した.
4.ほぼマニュアル運用プロダクト as MVP
代表例:Zappos,Groupon, Uber, Food on the tableなど
最後もLPの発展形にはなるが、LPをベースにサービスを裏側でマニュアル運用するMVPも良く用いられる方法だ.
Zappos
2009年Amazonに$1.2 Bn.で買収されたZapposは、LP+マニュアル運用で仮説検証を進めたスタートアップの1つだ. Zapposの共同創業者Nick Swinmurnは1999年当時、靴のECを始めようと考えたが、オンラインで本当に販売できるか確証が無かった. そこで仮説検証のために、地元の靴屋に商品の写真を撮らせてもらい、それを自社サイトに載せて売れるかどうかをテストした(自社で在庫は持たずに). 実際にオンライン発注が来ると、写真を撮った店に出向き、購入して送付をしていた. このように市場の反応を蓄積することで、「オンラインで靴を売れる」という仮説を検証した.
Groupon
Grouponは別サービスのblogからスタートしたMVPの例だ. 創業者のAndew Masonは”The point”というUGCでのキャンペーン作成プラットフォームを作っていた. しかしサービスは一向に広がらず、何か別のサービスをトライしようと考えたのが、日々の割引クーポンを紹介するGrouponをWordPress上で始めたのがきっかけ. Andrewは割引クーポン情報をマニュアルで集め、ユーザーから引き合いがったクーポンのpdfをメールで送ることで、MVPの仮説検証を進めていった.
(参考)SaaSのMVPステップ
これまでMVPのタイプと代表事例について紹介したが、B2Cサービスの例が多いため、B2B SaaSの典型的なMVPの作り方を紹介する(元記事).
Step1. プロダクトの解決する課題と提供価値を整理する
Step2. フェイクデモを作る(+Sign up動線とGoogle Analytics連結)
Step3. LPのトラフィックを作る
Step4. 定量のCV情報と定性のフィードバック情報を集め、仮説が正しいか判断する
Step5. 上記を踏まえて、プロダクトの本開発をする
MVPをいかに作り、仮説検証を進めるかは多くのスタートアップにとって生命線になるので、プロダクトの本開発を進める前に簡単に検証を進めることを強くお勧めする.