世界のSaaSトップ250社に見る、コンテンツマーケティングの実態と威力

Masayuki Minato
7 min readAug 31, 2017

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http://www.trend.media/2016/09/30/content-marketing-getting-right/

「潜在顧客のリードをいかにして獲得するか?」

B2Bのスタートアップの方とお話させて頂く中で、日々よく話し合うトピックの1つだ。特に、創業初期のスタートアップの場合、リソースも無く、名前も知られていないのでチャレンジは大きい。言わずもがな、直営業や展示会、リファーラルでの紹介は重要。ただリソースも少ない中では、集められるリードの数は限られるし、何よりも効率が悪い。

そんな中で、個人的に「もっとやったらいいのに…」と思うのが、ブログ配信に代表されるコンテンツマーケティングだ。私もVCと言う、B2B向けサービスをやっている中で、コンテンツマーケティングの威力と重要性は痛感させられることが多い。ブログを書き出してからは、大企業/VC/起業家の方から「なんかB2Bのブログ書いてる人ですよね?」とお声を掛けて頂いたり、色んな登壇の場に呼んで頂いたり、非常に助けられている。

ただ、ブログを書いている自分が「コンテンツマーケティングが重要」というのも完全なポジショントークになってしまうので、SalesforceやHubspotなど、世界のSaaS企業トップ250社のコンテンツマーケティングの実態をまとめたcobloom社の「The State of SaaS Content Marketing 2017」より、客観的な数字で見たコンテンツマーケティングの実態と威力について紹介させて頂きたい。

コンテンツマーケティングの実施状況

まず世界のSaaSトップ250社の実態を見てみると、驚くべきことに250社中、227社が自社ブログを持っており、全体の89%を占める。250社のリストの中に、Siemensや富士通のような歴史のあり、ブログを持たない企業が少なからず混ざっていることを踏まえると、SaaSスタートアップでブログをやっているのは、ほぼ100%に近いと想定される。またPodcastをやっているSaaS企業も18%にまで昇る。

コンテンツマーケティングのROI

では、なぜ多くのSaaS企業でブログ等のコンテンツマーケティングが常識のように取り入れられているのか?その答えを端的に言うと、「旧来のマーケ手法より圧倒的に顧客獲得のROIが高い」からだ。下の図を見て頂きたい。訪問セールスやTV広告等の旧来からあるアウトバンドマーケティングと比べて、ブログなどのコンテンツマーケティングは顧客1リード獲得当りのコストが68%低い。更に、コンテンツマーケティング主体の方が、7.8倍のトラフィックを獲得できるという、メリットもある。つまりざっくり言うと、コンテンツマーケティングは「約1/3のコストで8倍の効果」がある強力なマーケ手法と言える。

SaaSブログのコンテンツと効果

次に、SaaS企業のコンテンツマーケティングの主流である、ブログについて深掘りしたい。SaaSのブログのコンテンツの中身を見てみると、大きくは、お役立ち系とPR系に分けられる。

お役立ち系:顧客の課題に対するハウツーの紹介や最新のマーケット動向に関するレポート など

PR系:企業の新たな取り組みの紹介やプレスリリースの詳細 など

特にブログでのパフォーマンスの高いトップ25社に絞ってみてみると、お役立ち系とPR系の両方の内容を提供している企業が40%を占め、続いてお役立ち系コンテンツのみ提供している企業が36%と多い。これは、後段で紹介するが、お役立ち系コンテンツの方がPR系より、リード獲得効果が得られるためだと考えられる。

そして、ブログで流入してきた潜在顧客が実際にどのような行動をとるか、その効果について見てみると、全体の33%はリード情報獲得にまでつながっており、非常に効果が高いことが判る。

その他、ブログをやっているSaaSトップ企業のトラフィックの詳細については以下の図に示す。もしブログをやられているSaaS企業の方はベンチマーク情報として、ぜひ活用してほしい。

世界のSaaSトップ企業から見るブログ投稿のミソ

続いて、SaaSトップ企業のブログの統計データから見た場合、SaaS企業がブログ投稿によるリード獲得を加速化する上でのtipsを紹介する。以下の図に示す通り、大きく3つの示唆がある。

  1. 「PR系よりお役立ち系コンテンツを」
  2. 「文章は競合より少し長めに」
  3. 「バックリンク数より参照ドメイン数に注意を」

1つ目は、SaaS企業が良く陥りがちだが、自社サービスの導入事例や会社の取組みの裏側など、PR系のコンテンツを作りがちだ。顧客からしてみれば、スタートアップに対して親近感を湧くかもしれないが、PR系のコンテンツでサービスを選ぶことはほぼ無い。顧客がSaaSなどのパートナー企業に求めるのは、「自分の業界にいかに精通していて、課題をいかに解決してくれるのか?」だ。なので、顧客視点のお役立ち系のコンテンツは実際PR系より7倍リード獲得に効果がある。(別の統計では、PR系コンテンツの場合、ユーザーから何も反応が無いケースが、お役立ち系の3倍ある。)

2つ目は、ウェブ検索での訪問数が多いブログは平均的なブログより12%長い。これはGoogleのアルゴリズムを踏まえた、SEO視点での効果のためだと考えられる。

3つ目は、ウェブ検索での訪問数と①バックリンク数(ブログ記事が他のサイトで引用されている数)と②参照ドメイン数(ブログ記事を引用しているドメイン数)の相関関係を見てみると、①バックリンク数の相関係数は0.22と相関が弱い一方、②参照ドメイン数の相関係数は0.72と強い相関がみられる。これも2つ目同様、Googleのアルゴリズムの影響だが、考えるべき重要なポイントと言える。

コンテンツマーケティングの王者:HubSpot

HubSpot社ブログ

最後に、SaaS企業にとって参考となるSaaS企業のブログとして、HubSpotを紹介したい。以前、私も記事で取り上げたが、HubSpotはインバウンドマーケティングのSaaSの雄であり、月次のブログ訪問数180万回とトップ企業の平均の約3,000倍もトラフィックを持つ怪物企業だ。是非、ブログ記事を書く参考にして頂くと良いと思う。

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Masayuki Minato

Venture capitalist@Salesforce Ventures. Focus on investing and empowering B2B startups. Worked for GREE Ventures, BCG and BASF. Carnegie Mellon MBA