数字でみる!米SaaS企業の最新動向Part II: M&A編

Masayuki Minato
Sep 6, 2018 · 7 min read
Hacker Newsより

米SaaS企業のM&Aも活況なのか?

スタートアップのExitの1つであるM&A。SaaSの上場マーケットが活況の中、M&Aはどのようなトレンドなのか?今年6月にMicrosoft社による、ユニコーン企業のGitHub社への、$7.5Bn.のM&Aが発表されたのも記憶に新しい。他にも、Workday社によるAdaptive Insights社への$1.5Bn.超のM&Aなど、18年前半はSaaS企業の大型M&Aが目立った。

SaaS企業のM&A全体のトレンドは、上場マーケット同様に活況なのか?今回は、前回の記事に続き、USを中心としたSaaS企業のM&Aの最新のトレンドを数字を中心にまとめてみたい。


SaaS企業のM&A件数のトレンドは?

初めに、直近18年2Qまでのトレンドを見てみると、SaaSのM&A件数は年々増えており、活況であることが判る。直近では+10%超で増えており、2018年ではおおよそ1,000件弱のM&Aに達する見込みだ。また、ソフトウェア企業全体のM&Aディールの内、SaaSの比率も年々増えており、今年は約40%にまで達する見込みだ。

M&AでのSaaS企業のマルチプルはどの位か?

SaaS企業のM&Aが活発に行われる中、M&AでのSaaSの売上マルチプルも同じく伸びているのか?答えは、NOだ。SaaS上場企業のマルチプルの中央値が7.6xまで増加傾向に対し、SaaSのM&Aでのマルチプルは一貫して4.5x前後を推移している。

これはなぜだろうか?

M&Aの対象となるSaaS企業の多くは、創業年数が20年以上も珍しくなく、資金調達も継続的にできておらず、上場企業に比べ、成長率が緩やかなSaaS企業が多いためと考えられる。これは、左図の売上規模別でのマルチプル比較からも読み取れる。売上10~100億円の間は、売上規模に応じてマルチプルが上がる一方、100億円以上になると一気に下がる。これも上記と同じ理由で、売上100億円以上のSaaS企業で買収対象となる企業は、創業年数が古く、成長率が鈍化している企業が多いためだと考えられる。

ちなみに、SaaSとオンプレとの比較(左図)をすると、上場、M&A関わらず、オンプレのマルチプルは、SaaSの約1/2と低くなっている。言わずもがな、オンプレの方が利益率/成長率共に伸ばしにくい構造なので、ある意味当然の結果とも言える。

どのようなタイプのSaaSが多いのか?

左図を見ると一目瞭然だが、SaaSで最も発達しているCRM/マーケティング系が最も多く、第1位。これは17年通年でも同じ結果である。続いてデータ分析/BI系が多く、これも17年同様に第2位、HR系が第3位についている。これらは、SalesforceやTableau、Workdayなど、プラットフォーム化しているSaaSの大型プレイヤーがひしめく領域のため、比較的マイクロSaaS系の企業も多く、M&Aが多いと想定される。

一方、SaaSのタイプ別でM&Aでのマルチプルはどう変わるか見てみると、件数の多いSCM/マーケティング系は2.4xと全体の中央値(4.5x)より低く、Eコマースやデータ解析/BI系が全体より高い傾向が見て取れる。過去3年のデータのため、トレンドでの議論はしにくいが、競合の多さ、市場の成長率の高さ、売上成長率の高さのバランスによって異なると想定される。(あくまで予想)

ホリゾンタル vs. バーティカルでは?

SaaSのタイプを別の切り口で、ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSではどうか?17年通年対比で、18年2Qは大幅にバーティカルSaaSのM&A案件の比率が増えている。当然ながら、USを中心にSaaSが普及している市場ではより業界の課題に沿ったソリューションを提供するバーティカルSaaSが増えるので、今後も同様にバーティカルSaaSのM&A案件は安定して多くなると思う。

もう少し突っ込んで、どの業界向けのバーティカルSaaSがM&Aの対象になりやすいか見てみる。トップ3はヘルスケア、金融、不動産の様な巨大産業で、かつ比較的利益率の高い、キャッシュリッチな買収プレイヤーがいるバーティカルSaaSの案件が多い。日本ではまだあまりSaaS自体のM&Aも中々無いが、今後SaaSが普及してくると、同様の領域でのバーティカルSaaSのM&Aが増えてくると予想される。

SaaS企業の買い手は誰か?

では、SaaS企業は実際どのようなプレイヤーが買い手なのか?下図を見てみると大きく2つ読み取れる。

1つ目は、上場企業のM&Aの比率が上がっていることだ。この背景には、 USでの本国送金税減税の影響が大きいと予想する。特に海外売上比率の高い、MicrosoftやCiscoなどの大手IT企業では、他国でのソフトウェア売上への減税により、膨大なキャッシュが生まれているので、そこを原資に上場企業のM&Aが活発化していると想定される。(これついては、毎度おなじみTomasz Tunguz氏も18年年初に語っている。)

2つ目は、PE(プライベート・エクイティ)に関連するディールが全体の50%弱と多いことだ。USではSaaSの上場マーケットが成熟しており、バリューアップの手法も見出しやすく、またPEのExitの際の企業価値評価が読みやすいため、PEもSaaSのエコシステム(特にVCのExit)の中で重要な役割を果たしている。日本では、まだPEからのSaaS企業の買収の話はあまり耳にしないが、今後日本でもSaaSマーケットが育ってくれば、同様の現象が起こると思われる。(期待を込めて)

18年2Qの大型ディールは?

最後に、18年2Qでの大型のM&A案件を見てみたい。$200M(約200億円)以上に絞ると、判明分だけで14件、内$1Bn.超のディールは7件含まれている(一部、バイエルの事業売却はSaaS以外も含まれているので、除くと6件)。17年通年の判明分だけで$1Bn.超のディールが7件であることを踏まえると、大型ディールが増えているとも言える。

上記14のM&Aディールの詳細は以下の通り。買い手としては、KKR等のPEもいるが、多くは上場している大手IT企業が約70%と多数。買収対象のSaaS企業のタイプは、ホリゾンタル中心だが、大型ディールではバーティカルSaaSも目立つ。

以上、直近の米SaaS企業のM&Aのトレンドを見てきたが、SaaSのM&Aの件数の増加と大型化、特にバーティカルSaaSへのシフトが起こり、M&AマーケットでもSaaSが盛り上がっていることが判る。また、米SaaSのM&Aにおいては、プライベート・エクイティ(PE)が重要な存在であるという特徴もある。今後、日本でもSaaS企業の上場が増える中、同様のエコシステムが今後発達していくと予想する。

次回のPart IIIとして、未上場(スタートアップ)のトレンドを見てみる。

    Masayuki Minato

    Written by

    Venture capitalist@Salesforce Ventures. Focus on investing and empowering B2B startups. Worked for GREE Ventures, BCG and BASF. Carnegie Mellon MBA

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