Dropbox, Airbnbなどの巨大スタートアップから学ぶ!初期のユーザー獲得方法とは?

Masayuki Minato
11 min readJun 19, 2017

シード~アーリー期の、名もないスタートアップにとって、初期のユーザー獲得は、大きなチャレンジの1つだ。アプローチは、狙う市場、競争環境等によって異なるが、個人的に1つの大事な考え方としては、Y-Combinator創業者のPaul Grahamの言葉にあると考える。

Do Things that don’t scale ―スケールしないことをやれ

DropboxやAirbnbなど、名だたる欧米のスタートアップも初めは名もないスタートアップで、常に順風満帆だったわけではない。初期のユーザー獲得/拡大には頭を悩ませ、さまざまな(スケールしない)アプローチをトライし、あの手この手でユーザー数を積み上げて行った。そこで今回は、代表的なUSのスタートアップがどのように初期のユーザー獲得をしていったか、B2B、B2C問わず面白い事例を4つほど紹介したい。

#1 Tinder — ヒップな大学生を集めたパーティーやミートアップの開催

現在、Tinderは世界でDAU 1,000万人を超えるdating serviceだが、創業した2012年当時はPCベースの類似サービスが数多く、競争環境が非常に厳しかった。そのため、初期のユーザー集めは簡単ではなかった。そこで、元Tinder共同創業者兼CMOのWhitney Wolfe(写真、現Bumble CEO)は2つの発想で、初期の顧客獲得をしていった。

“Going Local(ローカルに行く)”

“50 users in small space is a lot better than 5,000 spread out users(分散した5,000ユーザーより1地域の50ユーザーの方が圧倒的に良い)”

https://www.referralcandy.com/blog/tinder-marketing-strategy/

Whitney達は、US有数のrich kidsが集まる南カリフォルニア大学(USC)に訪問して、イケてる女の子達を集めた招待制パーティーを開いたり、女子サークルでプレゼンしたりして、アプリをダウンロードさせた。次に、その女子グループと仲の良い男子サークルにリーチして、アプリをダウンロードさせた。これを繰り返すことで口コミが広がり、ユーザー数5,000人未満から、一瞬にして15,000人を超えるユーザー数に増やした。

【類似事例】Alibaba、Uber、Airbnb、Groupon、Foursquare 他

Uber:2013年にボストンでバス運転手がストをした際に、公立小学校の生徒向けに無料乗車サービスを提供して地域の初期ユーザーを獲得。このHyper local strategyが奏功し、1年で12→35都市まで一気に拡大させた。

Groupon:ローカルの製品/サービス会社だけに的を絞り、自社の1Fにあるピザ屋で「サインインするとピザ半額キャンペーン」を開催した。結果、初期の500ユーザーを獲得した。

Alibaba:2000年頃、CEO Jack Maは中国の主要な工場地帯にセールスを配置し、工場1軒1軒を回らせ、eBayを超えるネットワークを構築した。

#2 Airbnb — 既存プラットフォームからのユーザースイッチ

Airbnbはgo localの戦略と共に、既存プラットフォームを活用して初期のユーザーを獲得した好例と言える。創業当初、既に同様のバケーションレンタルを提供する巨大なプラットフォームが存在した。それがCraigslistだ。

創業者のBrian Chesky(写真)は、Craigslistにレンタルオファーを出しているユーザー情報をかき集め、以下のようなメールを1通1通送り、ユーザー層を構築した

“I am emailing you because you have one of the nicest listings in Craigslist in the Tahoe area, and I want to recommend you feature it to one of the largest vacation rental marketplaces on the web, Airbnb. The site already has 3,000,000 page views a month! Check it out here: http://www.airbnb.com

それに加えて、Airbnbに掲載してくれたユーザーに対して、「より売れるように良い写真の撮り方を教えますよ」と説き、コンテンツのクオリティを上げる取組みを人力でやった。結果、ユーザー側も提供するレンタルの単価も上げることができ、着実にファンを作っていった。

【類似事例】Etsy、Thumbtack、Flexport 他

Etsy:ハンドメイドのECであるEtsyは、 サービスローンチ前から、既にあったgetcrafty.comやCraftster.org等のオンラインコミュニティにリーチして、オフラインのイベントを開催して初期のユーザー層を構築した

Thumbtack:「オンライン版イエローページ」のThumbtackもAirbnb同様にCraigslistを活用した好例だ。Craigslistに掲載している水道修理や屋根修理業者をリスティングして、直接メールでリーチし、自社にスイッチさせた。

#3 Quora —”見せかけ”の 巨大なコミュニティ作り

Quora HPより

オンライン掲示板など、UGC(User Generated Content)の量が重要なサービスでは、最初に乗り越えるべき「ニワトリと卵問題」がある。それは、空のサイト→回答するユーザーがいない→質問するユーザーが来ない→空のサイトのまま、という問題である。

テクノロジー関連のYahoo知恵袋サービスである、Quoraの創業者Adam D’angeloがやったことは、自社のメンバーでの疑似トラフィック作りだ。Adam達は、最初の1カ月間、ひたすら自分たちでQ&Aに質問/回答をし続け、コンテンツを増やしていった。これを、ユーザー同士が自然に回答をするようになるまで続けて、初期のユーザー層を獲得した。

【類似事例】Reddit 他

Reddit:Social NewsのaggregatorであるRadditは、Quoraより踏み込んだやり方をしている。大量のフェイクアカウントを作成し、news linkをポストし、大きなコミュニティと錯覚させることで、ユーザー流入を増やした。(道義的には若干問題を感じるが)

#4 Dropbox — 特定のコミュニティに向けた、ビデオコンテンツ配信と口コミキャンペーン

今では誰しもが使っているDropboxだが、創業から1年経った2008年はユーザー獲得に非常に苦労していた。当初はAdsenseでの集客を図ったが、ユーザー獲得に$300/人もかかり、ユーザー数が5,000人で伸び悩んだ。

そこで初期のユーザー数を拡大させるため、Dropbox創業者 Drew Houstonは2つの大きな施策を打った。

1.オンラインコミュニティDigg向けに4分間の紹介ビデオの拡散

2. 紹介者にインセンティブを与える口コミキャンペーンの展開

Dropboxのサービスは、文章ではその良さがユーザーに伝わりにくい。そこでCEOのDrewは、サービスの使用感が伝わりやすいように、サービスを紹介する動画(1)を作成した。その動画をDrew自身もメンバーであったDigg上に展開して、拡散を促した。広げる動画コンテンツ作りのミソとして、誰しも馴染みのある著名人(トム・クルーズ)を使ったり、Diggコミュニティ内のinside jokeを豊富に織り込んで、より身近に感じてもらうようにした。結果、たった1晩で5千→7万ユーザーに一気に拡大した。

また、Dropboxは口コミキャンペーン(2)で顧客獲得に成功した好例でもある。FacebookやTwitterでシェアしてくれたユーザーに対して、無料で追加スペース(128MB)を提供するキャンペーンを実施した。結果、最初の30日間で、280万ユーザーの獲得が進んだ

Dropbox HPより

【類似事例】Evernote, Yammer, Airbnb, Paypal 他多数
SaaS領域では、Freemiumや紹介プログラム等も上記に近いアプローチと言える。今では一般的な初期のユーザー獲得の方法になっている。

Threadless:無数のデザイナーとユーザーが協働して、T-シャツ等のデザインを作るサービスThreadlessも、キャンペーンでの口コミをうまく利用したスタートアップだ。ユーザーも参加しやすいキャッチ―なデザインコンペを企画したり、スポーツイベントのようにSNS/ブログで実況して、場を盛り上げたりすることで、ユーザーの間でバズらせて広げていった。

https://www.referralcandy.com/blog/threadless-marketing-strategy/

Yammer: ビジネス向けSNSのYammerは、口コミ性が高いサービスのため、当初からBasicプランのFreemiumモデルによる展開を図った。また、創業者David Sacksが創業ストーリーを語る動画コンテンツを作成し、拡散を測った。結果、2年間で9万社以上に導入が進んだ

(参考) 一般的なB2Bでの初期ユーザー獲得アプローチ

上記のような例に加えて、特にB2B系のスタートアップでよく行われる、ユーザー獲得のアプローチを参考までに列挙する。

・業界に関するブログを書く
(ユーザー層に対して、業界に関して深い見識があることを示す)

・業界紙/専門誌への寄稿、オンラインコミュニティで積極的にコメントする

・競合サービスについてコメントしている人にリーチし、自社のプロダクトについてもアピールしてもらう

・業界のカンファレンス/展示会に参加する

・業界関係者向けに勉強会/講演会をホストする

・企業のお問合せページにcold emailを送る

・前職の同僚や身近な友人から紹介してもらう

・業界のオピニオンリーダーにリーチして、紹介をしてもらう

・既に使っているユーザーから新しいユーザーに推薦してもらう

etc…

これまで、色々なユーザー獲得のアプローチについて書かせて頂いたが、正解があるわけではない。従って、色々なアプローチを事前に知っておいた上で、どのアプローチがはまりそうか、見極めることが肝要だ。

シンプルに成功要因をまとめると、以下の3つがポイントになると思う。

【初期のユーザー獲得の成功要因】

#1: スケールしないアプローチも、いとわずやる

#2: お金のかからないアプローチは何でも試して、当たりを付ける

#3: 当たりが付いたら、徹底的にやり切る

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Masayuki Minato

Venture capitalist@Salesforce Ventures. Focus on investing and empowering B2B startups. Worked for GREE Ventures, BCG and BASF. Carnegie Mellon MBA