プラットフォームの成長において重要な一極集中戦略

“Big things have small beginnings” — 大事は小事から起こる

オスマン帝国からアラブ人を率いて独立闘争(アラブ反乱)を起こした、イギリス人陸軍将校 T. E. ローレンスの言葉である。アカデミー賞作品でもある「アラビアのロレンス」の題材としても、お馴染みの人物だ。ちなみに私は無類の映画好きで、通算で10回くらいは観ている映画の1つだ。

なぜ彼の言葉を持ち出したかというと、プラットフォームが成長する上で非常に重要な戦略だからだ。より判りやすく言うと、「最初は“一極集中” (node saturation)して、攻略できたら狙うセグメント2つ3つと徐々に増やして、全体のマーケットを取りに行く」戦略のことだ。

特にシード/アーリー期のスタートアップは、Product/Market Fit(PMF)の際に広くセグメントに見るケースが多い。そのため、PMFが見えてきたシリーズA/Bに、1セグメントに絞った一極集中は勇気がいる。しかもネットサービスの特性として、不特定多数にリーチできるので、一気に全体に広げようとするのは自然な発想だ。

しかし、急がば回れで、一極集中で伸ばして行く方が、最終的な成長にはつながると個人的には思う。そこで今回は、Uber、Tinder、Facebookなど、”一極集中戦略”で成長した事例を見つつ、なぜそれが重要なのか、Marketplace academyの記事を元に紹介したい。


プラットフォームの”一極集中戦略”って何?

多くの起業家は、市場全体の大きな課題を解こうと野心を持って、一気に市場全体での拡大を狙うケースが多い。しかし、ここで陥りがちなワナとして、ユーザー数にばかり気が取られ、薄く広げてしまい、中途半端なユーザー体験しか創りだせず、営業/マーケティングコストを増やしても広がらない現象が起こる。

一方で成功しているプラットフォームは、薄く広くの”全体分散”ではなく、”一極集中(node saturation)”を戦略的に実行して成長しているケースが多い。ここ言う極(node)とは、地域、業界、企業規模、性別×年齢など、一部の同じ特徴を持ったサブセグメントのことを指す。

この一極集中戦略を一言で言うと、一部の集中した顧客セグメントの課題を深く解決して、”Wow”と言ってくれる熱烈なファン層(コミュニティ)を作る戦略、とも言える。この熱烈なコミュニティがプラットフォームの自律的な成長を創りだす。以下に2つの例を見てみよう。

Uber

Uberは創業の最初は、Bay Areaの富裕層向けの chauffeur(お抱え運転手)サービスに過ぎなかった。しかし、Uberは当初からこのセグメントの攻略は、次のセグメントへの一手としてしか捉えておらず、そのセグメントを取りきった後、New Yorkで富裕層向け chauffeurサービス、そしてUber X(低コストなride sharingサービス)へと広げていった

Tinder

前回のポストでも書かせて頂いたが、Tinderは金持ちの子供が集まるUSC(南カリフォルニア大学)でイケてる男女に向けてパーティを開き、熱狂的なファン層を創り上げた。このブランドをテコに、他大学にも”college campus rep”を置いて、1校1校攻略して広げていった。

“一極集中”でなぜ成長できるのか?

この一極集中戦略がどのようなメカニズムで、プラットフォームの成長に寄与するのか、いくつかのポイントについて説明したい。

#1: コミュニティ化することで、よりスティッキーになる

成功しているプラットフォームは、どこも強いブランドと共に、熱狂的なファン層(コミュニティ)がいる。そしてこのコミニティこそが、重要なアセットになる。

なぜなら、コミュニティはユーザーに帰属意識をもたらし、リピートしてくれる。それに加えて、プロダクトにフィードバックももらいやすく、これに丁寧に対応していくことで、更にコミュニティを熱くさせることができる。一方、ユーザーが分散している場合、柔軟で丁寧な対応ができなくなり、ユーザーが離れて行ってしまう

一極集中戦略でコミュニティ作りに注力したスタートアップとして、有名なのがFacebookだ。

Facebookはいきなり世界に広げず、ハーバード大学の学生に限定したプラットフォームとして始めたことはご存じの通りだ。しかしそれは、創業者のMark自身が、プラットフォームの特性を良く理解していたからだ。

“プラットフォームは、ユーザー同士のインタラクションが高くないと、価値を生まない”

なので、身近なリアルのコミュニティ-ハーバードの学生-向けにオンラインのコミュニティを盛り上げることに集中していた。

#2: 口コミでの紹介が増え、自律的にリード創出ができる

また、似たようなユーザーへの口コミによる紹介(リード創出)が自然と増えるのも一極集中戦略のもう1つのメリットだ。所謂、マーケティングのk-factor(=口コミも合わせて獲得できた総ユーザー数/広告でリーチしたユーザー数)を1以上に持っていきやすい。

この一極集中で口コミを増やした例として、クラウド電話帳アプリのTruecallerが挙げられる。Truecallerは最初Blackberryのみに絞り、プロダクトを磨き込んで、熱狂的なファンが200万人使うようになった。そのタイミングで、Android/iOSにも展開した結果、口コミだけで一気に2,000万人まで広がった。

#3: ネットワーク効果が上がり、サービス効率が上がる

最後に、一極集中はネットワーク効果(ユーザー数が増えるほど、ユーザーの便益が上がる効果)を生みやすく、サービス自体の効率も上がる

特にUberのような地域性の高いマーケットプレイスがイメージしやすいが、エリアを絞って、需要側(ユーザー)と供給側(ドライバー)を増やした方がマッチングの確度が上がる。マッチングの確度が上がると、供給側(ドライバー)もお金が儲かるので数が増え、結果、需要側(ユーザー)は注文後のリードタイムが短くなって、より使いたくなる。

シード/アーリー期のスタートアップの方は、一極集中も含めた、全体の山の登り方と狙うセグメントの粒度/順番については、ぜひ注意深く考えて頂くのが良いと思う。

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