HubSpot流 ”Success as a Service”の作り方

HubSpot社資料より

インバウンドマーケティングSaaSで有名なHubSpot。

日本での認知は高くないが、Salesforce.comやZenDeskと並び、米B2B SaaSの優良企業の1社として認知されている。HubSpotは2014年にNYSEに上場し、現在の時価総額は約2,400億円に達している。世界90か国以上で23,000社以上への導入実績があり、’16年通期売上は、約300億円(対前年比+50%)で高成長を維持している。

このHubSpotの成長の秘訣について、共同創業者兼CTOであるDharmesh Shah氏は、「HubSpotはSoftwareではなく、顧客の成功を売る”Success as a Service”を徹底してきたことにある 」と語っている。

今回は同氏の寄稿をベースに、HubSpotがそもそもどういう企業なのか、”顧客の成功”を売るために何をしてきたのかについて、説明する。


HubSpotってどういう企業なのか?

HubSpotは、2004年に当時MITに在学していた、創業者のBrian Halligan氏(右)とDharmesh Shah氏(左)の二人の出会いから始まる。それから2年後の2006年に、「TV CMやテレアポのような、旧来のPush型(Outbound)のマーケティング手法は既に機能しなくなっている。これからはSEO、ブログやSNSのようなPull型(Inbound)のマーケティングが重要になってくる。」というビジョンから、HubSpotを創業した。

HubSpot社HPより

このビジョンに基づき、HubSpotは現在、3つのSaaSプロダクト(以下)を提供している。

■HubSpot MARKETING: 企業のHPやブログ、SNSアカウントのマーケティングファネルを一元管理できるSaaS

■HubSpot SALES :顧客の個人情報や過去のメールでのやり取りを自動で見える化、適切なタイミングでe-mailを配信できるSaaS

■HubSpot CRM:顧客のコンタクトリスト管理や、見込み客へのコンタクト時期と方法のレコメンド、営業チームの進捗モニタリングができるSaaS


HubSpot流 “Success as a Service”への取組み

HubSpotは、どうやってこのような高成長を維持し続けているのか?
その秘訣を、共同創業者兼CTOであるDharmesh Shah氏は、以下の通り語っている(意訳)。

“SaaSとして長く生き残り続けるには、ソフトウェアを売るのではなく、
顧客の成功体験を売ることが重要だ

オンプレミスの時代は、顧客にソフトウェアだけ提供すれば、ビジネスが成り立った。なぜなら、顧客が成功するか否かに関わらず、先払いで多額の売上を上げることができたから。

しかし、SaaSでは(ソフトウェアの先にある)顧客の成功体験まで提供しなければならない。なぜなら、顧客はソフトウェア導入によって成功できなければ、簡単にchurn(退会)しまう。結果、売上を上げられなくなる。”

Dharmesh氏の言う、顧客の成功体験を売る(=Success as a Service)ことを実現する上で、HubSpotは顧客に向けて3つの観点で取組みを行っている。

  1. 自社のマーケティングが機能しているか、”気付き”を与える
  2. マーケ担当者がインバウンドマーケティングを”学ぶ”機会を提供する
  3. マーケ担当者同士が”つながる”コミュニティを作る

ここで面白いのは、これらの取り組みが”顧客の成功体験”につながるだけでなく、HubSpotの優良なLeadを継続的に産み出すマーケティングチャネルになっており、成長のドライバーになっていることだ。

本稿では、主要な取り組み4つを紹介させて頂く。

■Website Grader/Twitter Grader

企業のHPやTwitterアカウントのパフォーマンスを、調べられる無料診断ツール。当時、顧客となる企業では、自社のSNSアカウントやウェブサイトがどれだけ機能しているか、意識が薄かった。従って、まずはこの無料診断ツールで、インバウンドマーケティングの必要性への気付きを与えることを目的としていた。
これは、顧客企業とHubSpot双方にとって、Win-winのツールになっている。顧客企業にとっては、自社のパフォーマンスを無料で見える化できる。HubSpotにとっては、無料のコンサルテーションツールなので、営業の自動化/リソース削減に寄与しつつ、優良なLead創出ができるようになり、営業の効率的なアプローチに一役買っている。

■HubSpot’s Blog

HubSpot’s Blogは、マーケティングトピック別に5,000以上の記事がまとめられており、30万人以上の購読者がいる。トピックは、「Twitter Momentの作り方:ステップバイステップ・ガイド」や「より良いLPを作るための11のTips」のような、マーケター向けのハウツー集が中心。このブログの面白い点はマーケター向けの教材であると共に、マーケターから他のマーケターに記事がシェアされることで、結果、HubSpotのLead総数の20%を占めるほど、有力なメディアになっている。

■HubSpot Academy

マーケター向けe-learningプラットフォーム。「企業ブログの書き方」や「ウェブキャンペーンの作り方」等、全35コースから無料で学ぶことができる。HubSpotのユーザー以外にも、見込み客やマーケターを目指す学生も無料で受講することができる。これは学ぶ機会を提供するだけでなく、HubSpotがマーケターの成功を後押しをしてくれているという認知を広げる、HubSpotのファン作りの基盤になっている。

■Inbound.org

現在までに20万人以上のマーケティングプロフェッショナルが登録している、マーケター専用のソーシャルプラットフォーム。有料な記事コンテンツを探したり、マーケティングのトピックを議論したり、求人や応募もできる。これにより、Blogやe-learningには載っていないような、相談を他のマーケティングのプロに出来たり、マーケターのキャリア形成のツールとしても役立っている

このHubSpotの取組みは、非常に示唆に富んでいる。ソフトウェアだけで顧客の成功につながることはほぼない。”顧客の真の課題は何か?”、”顧客がSaaS導入で達成したい成功とは何か?”を常に考え、ソフトウェアに縛られず、リアル/ネット問わず、顧客が成功するサービスを作り上げることが、SaaS企業としての成功につながると思う。

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