Product/Market Fitについての6つの学び

Masayuki Minato
6 min readJun 12, 2017

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日々、スタートアップの方とお話をさせて頂く中で、Product/Market Fit(以降、PMF)の話を聞かない日は無い。シード~アーリーステージの投資家としても、次のファイナンスを見据えるとPMFをいかにうまく持っていくか、価値提供していくか、は頭を悩ませる大きなテーマの1つだ。

PMFの方法論に関しては、素晴らしい先達の方々がまとめられている(例えばこちら)ので深くは触れないが、ここではPMFに関するUSスタートアップ業界の賢人の言葉に触れつつ、PMFを進める上で覚えておくべき6つの学びについてまとめておきたい。

#1: プロダクトより、どのマーケットで闘うかが圧倒的に重要

Andreessenの言葉を借りると、Product/Market Fit(PMF)は2つのピースから成り立つ:「市場を満足させるプロダクト」と「正しい市場(=Good market)」。良く起こりがちな間違いとして、前者の「市場を満足させるプロダクト」に集中し過ぎることで、「正しい市場」を見定めることを忘れることだ。間違った(規模の小さな)市場で素晴らしいプロダクトを作っても、(良くて)ゾンビ企業になってしまうことは明白だ。(これは多くの著名キャピタリストが強調している点だ。)

極端な話、スタートアップの良し悪しを決める三つの要素(チーム、市場、プロダクト)の中でも、市場が最も重要だと説くキャピタリストは多い。なぜなら、PMFが進んでステージを重ねてくると、チームやプロダクトは変えることができても、市場を簡単に変えることは難しいからだ。

#2: 最初にプロダクトを上市した者ではなく、PMFに腰を据えた者が勝者になる

プロダクトローンチ後に、(PMFが完成していると錯覚をして)PMFよりセールスに意識が強く向いてしまう起業家の方を少なくないように思う。

しかし、Andy Rachleff氏が論ずる通り、成功したネット企業では、セールスではなく、PMFを愚直にやり続けた成功事例は枚挙に暇がない。GoogleやFacebookはその好例だ。GoogleもFacebookも業界の最初のプレイヤーでもなく、セールスに強みを持つ組織でもない。巨大なマーケットに対して、愚直にプロダクトを進化させていったことが今日のポジションを築く礎になっている。つまり、PMFにフォーカスし、いかに顧客がファンになってくれるプロダクトを最速で作れるかが、勝者になるための早道であると思う。

逆に、短期的な視点でPMFが中途半端なまま、セールスに走ると、顧客が満足するプロダクトに仕上げられず、焼き畑(チャーンが高い)状態に陥ってしまう。結果、チャーンの火消しとPMFを並行して走らざるを得なくなり、リソースが肥大化し、身動きが取れない状態になるリスクが高まる。

#3: プロダクトの作り込みにフォーカスし過ぎない

エンジニア出身の起業家やエンジニアが強いチームに、たまに起こるが、大枠のソリューション検証をする前に、細かいUI/UXの磨き込みにカネとリソースを投入してしまう。結果、PMFのPDCAサイクルが遅くなり、資金がショートして繋ぎ資金が必要になるケースもままある。

#4: PMFは「顧客が口コミしたくなる」プロダクトかどうかで測る

AndreessenのPMFの定義にある「市場を満足させる/Satisfy the market」をいかに観測するか、はPMFのフィードバックループを回す上でも一番難しく、定性的になりがちだ。そこで、定量化アプローチとして用いられるのがNPS(Net Promoter Score)だ。PMFの達成はNPS 40以上が良しとされているが、NPSも万能ではない。そのため、結果指標のMRRやアクティブ率等を組み合わせ、市場とプロダクトの特性に合わせて作り込む必要があると、個人的には思う。

#5: 中途半端なPMFで組織をスケールさせない

アーリーステージの資金調達時点で、「PMFは完璧です」と胸を張って言えるスタートアップは極めて稀なように思う。(一投資家として、私も耳が痛いが)スタートアップの多くは、上の2名が言うように、「PMFの積み残しは多いのだけれど、徐々にトラクションも上がってきているし、スケールのために資金調達をしています」というパターンがほとんどのように感じる。

ただ、彼らが言う通り、PMFが定まらず、プロダクトも狙う市場もぼんやりとしたまま、組織を肥大化させてしまうと、あとのツケの方が大きくなり、スタートアップにとっては致命傷になるリスクがある。曰く、90%のスタートアップが失敗すると言われる理由は、このPMFができないことにほぼ集約される。

スタートアップがPMFをしっかりやり切るよう、伴走できるか否かがシード/アーリーの投資家に最も必要な素養なのではないか、と思う。

#6: PMFに終わりはない

PMFはやれば確実に進むが、終わりがある訳ではない。なぜなら、市場も競合(大企業、ベンチャー)も常に動いていて、PMFを維持/向上するにはコンスタントに適応していく必要があるからだ。特に模倣されやすいネットサービスなら猶更だ。

従って、いかにスタートアップの組織風土レベルでPMFを織り込めるかが、勝者になるか/なり続けられるかの明暗を分けるように思う。

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Masayuki Minato

Venture capitalist@Salesforce Ventures. Focus on investing and empowering B2B startups. Worked for GREE Ventures, BCG and BASF. Carnegie Mellon MBA