Slack、Dropboxなど成長するSaaS企業から学ぶ!SaaSの重要な戦略ツールであるプライシングモデル

サブスクリプション型サービスの利用する機会が、ここ数年で一気に増えてきた。私生活では、NetflixやAmazon Videoで映画を観て、Apple MusicやSpotifyで音楽を聴いて、Amazon Primeでお急ぎ便で日用品をする。ビジネスでは、AWS上でアプリ構築をして、Salesforceで顧客/セールス管理をし、Dropboxでファイルを共有する。

先日のBig Thinkで、WIRED誌の創業エディターのKevin Kelly氏が「モノの所有の終わり-サブスクリプション・エコノミーの始まり」の話をしていた通り、既に当然の流れとも感じる。

この拡大するサブスクリプション型ビジネスにとって、最も重要な戦略レバーがプライシングだ。サブスクリプションの代表格であるSaaSでは、以下3つの成長手法が基本になっている。その成否において、プライシングは最も重要なマーケティングツールであり、結果にインパクトの大きいことが予想できると思う。

1. 新規顧客の獲得/エクスパンジョン

2. アップセル/クロスセル

3. チャーンコントロール

そこで、今回はサブスクリプション型ビジネスの代表格であるSaaSの4つのプライシングモデルとその強みと弱みについて紹介させて頂く。


SaaSの4大プライシングモデル

1.フリミアムプライシング― Freemium Pricing

Drift HPより

フリミアムとは、SaaSのコア機能のみを無料で提供するプライシングモデルだ。Slack、SalesforceやDropboxなど、数多くSaaSで採用されており、最も一般的になっている。フリミアムは、SMBやB2Cの一般消費者のような広いターゲット層に対して、スピーディーに広げる上で有効なモデルだフリミアムを採用する否かで重要なのが、市場特性として口コミでの広がりが期待できるかどうかがポイントになる。

また、フリミアムには3つのサブモデルが存在し、市場/サービスによって使い分けが重要になってくる。

・容量限定フリミアム

特定の容量やユーザー数までは無料で提供するモデル。容量2GBまで無料提供している、Dropboxはこの代表例だ。

・機能限定フリミアム

一部の機能のみを無料提供するモデル。ビデオチャットのSkypeは、VOIPコールのみ無料で提供し、携帯や固定電話での課金するモデルが好例だ。

・セグメント限定フリミアム

あまり一般的ではないが、教育機関やNPO等の一部のユーザーセグメントに対して無料提供するモデル。学生に無料提供するAutoDeskやAdobeが代表例だ。このモデルは、企業のブランディングや学生のような将来の潜在ユーザー層の早期刈取りが主な目的となる。

【参考】フリミアム vs. フリートライアルどちらがいいのか?

一部機能を一定の条件で無料提供するフリミアムと良く比較検討されるのが、期間限定で(全ての)機能提供するフリートライアルだ。よく混同されがちだが、狙う市場の特性やプロダクトのパッケージングにより適正が異なる。上で述べた通り裾野が広いユーザー層がターゲットにした場合はフリミアム、ニッチなユーザー層がターゲットにした場合は期間限定のフリートライアルを採用するのが一般的だ。特にフリミアムにおいては、いかに有料版が無料版に対して、いかに魅力的なパッケージングができるかがSaaSの成長にとってはキモとなる。

Zuora記事をベースに独自作成

2. 階段型プライシング―Tiered Pricing

Hubspot HPより

エンタープライズ向けSaaSのプライシングモデルとして、歴史が最も長くかつ最も普及しているのが、階段型プライシングだ。基本的な考え方は、ユーザーセグメント毎に提供価値(機能の数等)を設定し、価格差別(price discrimination)を行うことで収益を最大化することが狙いになる。

このモデルの優れた点は、大きく2つだ。1つ目は客単価が安定しやすいため、将来のMRRが読みやすいことだ。2つ目は、既存ユーザーの使用状況によって適切なアップセルがかけやすいことだ。これは低いCACで既存ユーザーのLTVを向上改善できるため、全体のユニットエコノミクスを改善できる効果が期待できる。

逆に、難しい点も大きく2つある。1つ目は適切なユーザーセグメンテーションと価格設定の見極めが難しく、またユーザーの進化/SaaSの進化により繰り返し見直しが必要であることだ。2点目は、アップセルを行う上で強いカスタマーサクセスのリソースが必要になることだ。

階段型プライシングのモデルとしては、以下の例がメジャーだ。

・容量/ユーザー数ベース ―Per unit/user (例 :Dropbox)

Dropbox HPより

・機能ベース— Per function(例: Evernote)

Evernote HPより

3. 使用量ベースプライシング — “Pay as you go”

階段型プライシングの応用系として、多くのSaaSで採用が増えているモデルが、ユーザーが使った分だけ課金する、使用量ベースプライシングだ。Twilioや(SaaSではないが)Amazon Web Servicesに代表例である。このモデルは、ユーザーは使った分だけ支払えば良いため、ユーザーの満足度が上がりやすく、チャーンがしにくいことが一番優れた点だ。一方で、ユーザーがどの位使用するかの見通しが立てにくく、将来のMRRの予測が立てにくいことが難点だ。

この使用量ベースの弱点を、階段型と組み合わせることで補うプライシングをしている企業がSlackだ。Slackは使える機能の幅により、3つの価格設定の階段(Free、Standard、Plus)と月次のアクティブユーザー数をベースにした使用量ベースの課金を組み合わせている。そうすることでチャーンを抑えつつ、将来のMRRの予測が立てやすくしている。

Slack HPより

4. 定額フラットプライシング

最もシンプルなSaaSのプライシングモデルが、1プロダクト・1価格の定額フラットプライシングだ。古くからあるライセンス課金の考え方の発展系だが、課金がシンプルなので売りやすく、営業リソースが少なくて済む反面、ユーザーセグメントによるWillingness-to-payを価格転嫁できないため、収益機会の取りこぼしが多くなる。B2CではAmazon Primeや、B2BではEC向けSaaSを提供するCartHookが代表例だが、SaaSのプライシングとしてはかなりレアでほとんど見かけない

CartHook HPより

プライシングは、プロダクトと共に、SaaSの強力な武器なので、スタートアップの各ステージの成長戦略により、常に進化させていくことが求められる。Zuoraの記事によると、Zendesk、Box、Hubspot等の成功しているSaaS企業は、市場や狙う顧客セグメントの変化により、プロダクトのみならず、プライシングを戦略的に進化させることで、年50%以上の成長を継続させてきた。

今後、日本でもSaaSを拡大させていく上では、スタートアップのみならず、投資家にも、様々なプライシングモデルの強み・弱みを理解した上で、適切なプライシングの設計ノウハウが求められると思う。

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