【記事編】未来をプロトタイプする長門市の社会実験。#日本版タクティカルアーバニズム

間瀬 海太
11 min readOct 10, 2017

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3連休最終日は、山口県・長門市をぐるぐるしてきました。

今日も案内人は、長門市Nセンターの事務局長・のむさん(= 野村勇希さん)。

1日前の記事もあります。よかったらぜひ。

長門市ってどこ?何があるの?

長門市、ってそもそもどこにあるの?何があるの?

ってことで地図で示すとこんな感じ。ありがとう、Google Map。

この赤いところが「長門市」。

自然がいっぱい、きれいな景色が多い。

白浜がきれい
昨日は海水浴場に言ったり、
CNNで”Japan’s 31 Most Beautiful Place”に選ばれた「元乃隅稲成神社」に言ったり、
湯本の温泉街に行ったり(この後、温泉入りました)

1日かけて長門市を満喫してきました。

満喫しすぎて、のむさんとカメラ好きのなのもお休み。
でもって、起きたら足湯。

長門を満喫してたんですが、実は最後、温泉街の駐車場でこんなものを発見。

社会実験実施中。

社会実験・・・? ってことで、周りを見てみたら・・・

「駐車場はこちら」の上に注目。

どうやら1ヶ月近くやっているらしい。

とりあえず、足を踏み入れてみた。

「温泉街」のイメージを変えるプロジェクト。

温泉街と聞くと、何を思いつきますか?

山の中の静かな街、温泉の湯けむり、旅館、お土産屋さん。

とか。そんなものですよね。

次の写真は昨日の湯本の温泉街の様子。

温泉街の道沿いに並ぶ、何かの箱、箱、箱。
その中身はこんな感じで休憩スペースになっていたり、
その隣には黒板と卓球台を合体させたようなものが。
卓球台の横には、卓球のラケット(?)とチョークが。

何が起きてんだ!?

ってことで、しばらくこの通りを歩いてみた。そこで見つけたのがこれ。

おとずれリバーフェスタ・・・。

近くで見ると

温泉街のみら未来に向けた3つの社会実験。

未来の温泉街を体感する「おとずれリバーフェスタ」なるものが行われていました。

おとずれリバーフェスタは、これから数年かけて大きく変わろうとしている長門湯本温泉を舞台に、ここに遊びに来る人、住む人、働く人が、楽しく豊かな時を過ごせるよう、未来の温泉街をイメージして体感する取り組みです。

ベンチや屋台などの様々な設えも設置されていますので、是非体験してみてください。

どうやら、これが社会実験の正体のようです。

調べてみた。

どうやら、長門市が「長門湯本みらいプロジェクト」として行っている取り組みの一つだったようです。

温泉街を「古い温泉街」のイメージから遊びに来る人、住む人、働く人誰もが楽しく過ごせる場所に変えていこうという社会実験。

実際に、湯本を歩いて回って見てみました。写真が膨大になってしまったんでこちら、別ページでまとめます。

日本版タクティカルアーバニズム

湯本のプロジェクトを生で見ていて、すぐにピンっと来たのはまちづくりの考え方として、最近ホットな「タクティカルアーバニズム」という言葉。

タクティカルアーバニズム(= tactical urbanism)。日本語に直訳すると戦略的な都市設計(tactical = 戦略的な、urbanism = 都市設計)という意味。

僕自身、タクティカルアーバニズムとても面白い考え方だと思って注目している。

タクティカルアーバニズムの考え方を簡潔にまとめると、

  • まちづくりには政治席・社会的・財政的なリソースが必要。相当時間をかけて大規模な開発をするものばかり。
  • それじゃあ、効果的な開発もできないから結果的に使われない施設が多く残る。
  • そこで、仮設のものづくり(= プロトタイピング)の考えを取り入れて、まちづくりをプロトタイプするのが「タクティカルアーバニズム」という手法。
  • 大規模な予算を投入するんじゃなく、計画的 and 段階的変化を含んだまちづくりプロジェクト。

もっと知りたい、詳しく知りたいという人には、こちら。

タクティカルアーバニズムのNYの例。

「まちづくりは簡単じゃない。」そこに住む人々や働く人達の合意形成が必要だったり、予算が必要だったりでなかなか前に進んでいかない。

そこで、小さい実験プロジェクトから少しずつ関係するコミュニティにアプローチを重ねて、プロトタイプの効果を検証しつつ、データを集め、かつプロジェクトのねらいをまちの人達に浸透させて、大きなうねりを生み出す。

そのための手法として注目されているのが「タクティカルアーバニズム」です。

例えば、アメリカ、ニューヨークのタイムズスクエアにこんな事例があります。

Photo from Invigorating Tactical Urbanism Talk Inspires Action
  • 車社会のアメリカ。街を人々のもとに取り戻そうと、車中心の社会から人が歩ける街に作り変えようとプロジェクトが立ち上がりました。
  • 最初に人々がやったのは信号が赤のときにベンチを出して座るというゲリラ的なプロジェクト。
Photo from Invigorating Tactical Urbanism Talk Inspires Action
  • その次に、正しい手続きで場所を使う許可を得て、公道に椅子やパラソルを置いてみた。
Photo from Invigorating Tactical Urbanism Talk Inspires Action
  • こういった活動から得られた情報やデータをメディアで発信。
  • 自分達のプロジェクトのねらいを発信し、人々から共感が得られるように。
Photo from Invigorating Tactical Urbanism Talk Inspires Action

最終的に人々の支持を得て、NY市の行政を動かしたそうです。

なんとなくわかってもらえましたか? いきなりまちを変えようとしても、それはすごく大変。だからこそ、小さい企画から共感と理解の輪を広げていくイメージのまちづくり手法がタクティカルアーバニズムです。

ただ、日本では行政が公共空間(パブリックスペース)に多くの規制をしていて、なかなかまちなかでパイロットプロジェクト(社会実験)ができないと言われ続けていました。

繰り返しになるが、目下のところ日本では、交通管理者との交渉の難しさやCenter for Urban Pedagogyのような中間支援組織の不在など、さまざまな理由からタクティカル・アーバニズムは「社会実験」か「歩行者天国上での設置」のような一時的イベントになりつつある。

日本では難しいと言われていた。だからこそ、(偶然3連休を満喫していた長門市で)タクティカルアーバニズムの生の現場を自分の目で見られて僕はすごく興奮しています!

(・・・・なんか解説っぽく記事を書いてしまいましたが、僕も専門家ではありません。)

長門湯本みらいプロジェクトも、まだまだ始まったばかり。これからがどうなるか静かに非常に楽しみです。

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間瀬 海太

あっちに行ったり、こっちに行ったり。フィールドトリップやワークショップを作っています。◆肩書◆学校法人角川ドワンゴ学園 / (一社)小布施まちイノベーションHUB / (NPO)Seattle iLEAP社会起業家育成プログラムAmbassador