クルマに乗らない田舎者のハナシ

MACHIDA Hideki
Nov 12, 2016 · 4 min read

子どもの頃、自分は大人になったら自分の父親のような大人になるのだろうと漠然と思ったものだ。
会社通勤には自動車をつかい、たまにはクルマを使わずに会社帰りに焼き鳥屋によってくるような。

そして実際に中年も半ばをすぎてみると、今でも自分は自動車にはほとんど乗らず自転車で動き回っているし、会社帰りには焼き鳥屋などみかけもしない。まるで中学生の頃と大差のない生活をしていることに気がついたりする。

最近ネットでこんな記事をみた。

若者の車離れの一方で地方では車依存が進む 群馬では4人に1人が100mの距離を車移動 | キャリコネニュース

地方では歩いて移動するだけで「不審者扱い」は本当? 「車も買えない変わり者と思われたくない」という声も | キャリコネニュース

先日のPodcastでも言ったとおり、ここに書かれていることは自分の感覚では事実である。イイトシこいてクルマにも乗らず、歩いたり自転車乗ったりしている自分は完全に「変なヒト」として、自宅の近所でも勤務先でも有名人である。とくにおまわりさんに不審者扱いされることが多かった。最近年寄りになって声をかけてくるおまわりさんより年上になったせいかあまり呼び止められ少なくなったが。また、近所の公営団地に住む、こどもの同級生の母親の奥様方が、ウチの奥様に「ちょっとあんたみたよなにやってんのあんたんちの旦那!」とよく言ってきたらしい。余計なお世話であるが、それだけ奇異に見えるということなんだろう。

ウチの奥様もたいそう恥ずかしかったらしいが、こどももでかくなってそういう奥様と縁がなくなってきたので最近あまり言われなくなった。

それにしてもこれまでウチの奥様にはしつこく「クルマを買え」と言われ続けた。イイトシしてみっともない、恥ずかしいと繰り返し言われた。これもさすがに20年近くたった最近は諦めたようだが。

普通に「あのウチのダンナは男のくせに軽自動車なんかに乗ってる」とか、「あのウチはいいクルマ乗ってる」とか、乗っている自動車によって相手を評価する文化がいまだにある。だからこそ、オレがクルマにも乗らずにいることで恥ずかしい思いをさせてしまったのだろう。迷惑をかけて申し訳なかったけれども、過ぎたことである。

「ナガノのひとはクルマに乗るのが当たり前」の唯一例外は「長野駅周辺に勤めているひと」である。もしかしたら松本駅近辺もそうかもしれない。さすがに駐車場代金がそこそこかかるので、電車などの公共交通機関で通勤しているひとが少なくない。しかしそれには「自宅周辺から電車に乗れるひと」というさらなる条件が付加される。公共交通機関がどんどん衰退していく地方ではかなりハードルの高い条件である。

たしかに自家用車がなければ生きていけない世界ではある。ウチは平野部だからまだいいものの、山間部に住んでいるひとは徒歩や自転車で市街地に出るなどということは難しく、また、このご時世公共交通機関もどんどんなくなっていく。食料品や生活用品の買い物はもちろん、医者にかかるにしても絶対に必要であり、特にこどものいる家庭では命にかかわるハナシである。

映画「君の名は。」で、ヒロインの父親が民俗学者としてその地の巫女の家に婿入りしたものの、妻を失ってからは家を出て政治家になった経緯にピンとこないひともいたかもしれないが、つまりあれは治療すべき医者・病院が近くにいないことによって妻の命が失われ、その村の現状をなんとかせねばと思ったということなのだろう。

クルマがなくて田舎で生きていけるかと問われれば、死んでしまうわというのが間違いのない事実である。なのでもちろんぼくも免許はもってるし、クルマもいちおー所有しているけどね。

しかし、普通に考えれば自家用車なんてものが一般化したのはせいぜい80年代以降のハナシのハズだ。こどもを医者につれていくようなことならともかく、現代の世の中で、わずか100メートル先にあるコンビニに1人で行くだけのためにクルマに乗ったりするのが「あたりまえ」などというのはおかしなハナシではないか。

多様性がないことによっていちど獲得した手段以外の選択肢を採用することができなくなっているだけなのではないか。そしてそれは年齢とは別の意味の「老化」ではないだろうか。地方ほどいろいろなことの「代謝」ができなくなっているため、習慣を捨てることができなく、新たな考えを入れることができなくなっているだけなのではないか。とぼくは思う。

そして、ただなんとなく、そういうひとになるのはいやだな、と思っている。

別に強いエコ思想や信仰があるわけでも、スポーツ最高!などとも思ったことはないが、なんとなくてれてれ自転車で生き続けているのは、漠然とそんなことを考えているからだったりする。


Originally published at 静的に動的な日々.

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