『サピエンス全史』を読んで気付けた3つの思い込み
人類の誕生秘話、国家という存在、自由という価値観についての思い込み
話題の本『サピエンス全史』、上下巻に分かれていて、やっぱり長かったですがようやく読破しました。
読んでいて自分の思い込みに気付くことができたので、ここでご紹介します。
その思い込みとは、
・私たち現代人類種は、ネアンデルタール人から入れ替わるように進化したと思っていた
・ 国家や貨幣や有限会社といった現代の制度は、宗教や原始的なまじないとは一線を画するものだと思っていた
・自由や平等や人権、自分らしく生きるといった価値観は普遍的なものだと思っていた
の3つです。今日はヘビーになりそうですね。
私たち現代人類種は、ネアンデルタール人から入れ替わるように進化したと思っていた
この本によれば、ホモ・サピエンスと呼ばれる私たち現代人類はネアンデルタール人と同時代を過ごし、生き残りに勝って今に至っていました。
つまり、人類はネアンデルタール人から現代人類へと直線的に進化してきたんじゃありません。ホモ・サピエンスにとある強みがあったおかげで、私たちがたまたま生き延びて唯一の人類種になったのです。
その強みが、虚構を創作し、それを共同で信じるという力でした。
国家や貨幣や有限会社といった現代の制度は、宗教や原始的なまじないとは一線を画するものだと思っていた
虚構とは、(当たり前だけど)現実には存在しない、架空の物事のことです。そして、私たちは、そうした虚構を一人ではなく集団で信じることで、圧倒的なチームワークを得てきました。
サルやゾウなど他の動物も群れを組んで協力しますが、それができる個体数に限界(だいたい150個体)があります。ですが、私たちホモ・サピエンスだけは、群れを超えて、数千や数万の単位で協力し合えたのです。
虚構の例として、伝説や神話や宗教が比較的イメージしやすいですが、それだけではありません。国家や貨幣、司法制度や有限会社といった現代の制度も、等しくすべてが虚構であり、大勢がそれを信じることで成り立っているという点で、何も変わりありません。
例えばある国の国民が、「祖国を守るため!」と、力を合わせて戦えるのは、国家という虚構や、国民という虚構、国旗が象徴するものの存在を、みんなが信じているからです。
日本人が日本経済の将来について憂い、何とかしようと努力できるのは、日本という国・日本人というグループ・円という貨幣という存在や、それが将来にも存在し続けることを、お互いに信じ合えているからです。
今まで当たり前と思っていたものまで虚構にすぎないと気付けたことで、これまで以上に幅広い範囲の物事が、再設計できる対象として見えるようになりました。起業家にとってはプラスな特性です。
そして、ここまで多くのものを創作し、それによって繁栄してきた現代人類、すごいなーと感服しました。種としての自画自賛ですね。
自由や平等や人権、自分らしく生きるといった価値観は普遍的なものだと思っていた
ここまで虚構だらけだともう驚かなくなってきますが、次は価値に目を向けてみます。
例えば、自由や平等、自分らしさといった価値を、私たちは普遍的なもののように扱います。自由を勝ち取るために命をかけて戦ったり、自分の心に従って生きようと訴えかける映画に感動したりします。
こうした自分たちの生活や行動を決めている価値は普遍的な真理であるように見えますが、実際のところは生まれた瞬間から放り込まれている、想像上の産物にすぎません。
自由(自由主義)も、自分らしさ(ロマン主義と消費主義)も、昔からずっとあるわけではなく、ただの主義です。主義ということは、自分と違ったものに価値を感じる主義も同時に存在しますし、時代によって主流は変わっていきます。資本主義と共産主義があるように。
数十年しか見えない私たちには真理の様に思える価値観も、実際のところかなり不安定な存在で、これからも様々に変化していくことがわかります。
まとめ:7万年の歴史旅ができて、新しい視点をいくつもくれる本
これまでは自分の人生数十年、長くても自分の親と子の生きる100年ちょいくらいしかイメージできなかったけれど、この本は7万年のイメージを持たせてくれます。
100年の視点の自分と、ホモ・サピエンス誕生からの7万年を神視点で擬似見学した自分では、物事のとらえ方が大きく変わってきます。
真実だと思っていたことが思い込みにすぎないと知り、「目からウロコ体験」が何度もできる、とても面白い本でした。