オープンソースプロジェクトへの資金援助を最適化したCLRマッチングとは?

Mayato Hattori
8 min readMar 27, 2020

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はじめに

今回はGitcoinによって運営されているオープンソースプロジェクトへの資金援助キャンペーンの1つであるGitcoin Grant CLR Matchingについて紹介します。

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Gitcoinはオープンソースプロジェクトのバウンティプラットフォームです。オープンソース開発者がプロジェクトにバグの発見や開発など技術的貢献をすることで、その対価に暗号通貨を報酬として受け取ることができます。

Gitcoin GrantはGitcoinが運営するオープンソースプロジェクトの寄付プラットフォームです。そこでは、プロジェクトを支援をしたい人が単発での寄付またはEIP1337の仕組みを使ったサブスクリプションで毎月自動に寄付することができます。

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Gitcoin CLR Matchingとは?

Gitcoin Grantには通常のファンディングに加えて、CLR Fundという名の基金からプロジェクトに資金を振り分けるCLR Matchingと呼ばれるファンディングキャンペーンがあります。CLR FundはConsenSysやEthereum Foundationなどからスポンサーされています。キャンペーンは四半期ごとに行われ、2019年2月から始まり今回が第5回目となります。元々OSSだけでしたが、第4回からメディアのカテゴリーが追加されました。

Gitcoin CLR Matchingは、クラウドファンディング、マッチングギフト、CLRという3つの仕組みを応用したファンディングの仕組みです。

クラウドファンディングは、特定のプロジェクトに対して個人が資金支援をする仕組みです。これはウェブサイトに掲載されているそれぞれのプロジェクトに、一般の人が寄付することを指しています。

マッチングギフトは欧米ではMatching Donationと呼ばれています。一般の寄付に加えて、政府や企業が寄付で集まった金額(つまりマッチングの量)の一定の比率分を寄付として上乗せするというものです。GitcoinではCLR Fundの基金を各プロジェクトに寄せられる個人の寄付の量に応じて振り分けることをさします。

なので各プロジェクトはクラウドファンディングによる個人の寄付とマッチングギフトからの一定比率分の資金を受けることになります

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上の画像は、第4回目のCLR Matchingの集まった金額が多かったトップ5のプロジェクトです。黒色の金額が一般の人からの寄付、緑色の金額がCLR Fundから割り当てられた資金です。

2番目のDAppNodeは、クラウドファンディングで2984ドル、マッチングギフトで8583ドル集まっています。ここで3番目のSablierと5番目のDeFiZapに注目してください。

Sablierは、クラウドファンディングで1401ドルしか集まっていませんが、マッチングギフトでは2番目のDAppNodeとそれほど変わらない8020ドルもの資金を受けています。対して、DeFiZapは、個人からの寄付が2369ドルとSablierの金額を大きく上回るのに対して、マッチングギフトでは6807ドルと大きく下回ります。

これは何故でしょうか?実は、ここにCLRのメカニズムが起用されているのです。

Gitcoin CLR Matchingの仕組み

CLRはCapital-constrained Liberal Radicalismの頭文字です。この言葉はLiberal Radicalismという論文から来ています。論文はEthereumの創設者のVitalik ButerinとRadical Marketの提案者のGlen Weylとハーバード大学の博士課程のZoë Hitzigらによって執筆されました。

CLRについて書くととても長くなるので、こちらでは簡潔にだけ説明をします。(ご興味のある人は元の論文を読んでください。)

CLRは、簡単に言えば、個人の寄付を最適な形で公共財に還元する仕組みを提案しています。これは「公共財にファンディングを行う際に、個人の寄付を最大化させる最適なマッチングの仕組み」と言えます。

Gitcoin CLR Matchingでは、個人による寄付を重要視し、たとえ個々人の寄付の金額が少なくとも大きな意義を持つように設計されています。これは寄付する個人の数つまりマッチング数自体の価値を測り、それをCLR Matching(マッチングギフトのことを指す)からの資金として加味することで可能になります。

ここで一例として、仮想のプロジェクトXに対するファンディングを考えてみましょう。

シナリオ1: プロジェクトXに対して、1人の人が275ドルを寄付する

シナリオ2: プロジェクトXに対して、10人の人がそれぞれ27.5ドルを寄付する

どちらも総額としては275ドルです。しかし、CLR Matchingの額は以下のように異なります。

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緑色のバーがCLR Matchingの総額、青色が個人による寄付の総額です。寄付する個人の数が増えるにつれて、CLR Matchingの額も増えています。このようにCLR Matchigでは1対1のマッチングよりも1対10のマッチングの方が、マッチングファンドの資金援助額が多くなります。

こうすることでコミュニティでより多くの人に支援されているプロジェクトに対してより多くの資金を割りあてことができます。

また、これは寄付プラットフォームにおけるフリーライダー問題といった課題も解決します。ここで言うフリーライダー問題とは、少額しか寄付できない個人が、少額なのであまり効果がないだろうと考え、寄付しなくなる問題のことをさします。CLR Matchingでは、マッチング数が重要視されるので、個人の寄付が大きな価値を持つことになります。

ファンディングのプラットフォームは、より多くの個人の参加を促すことができます。

第5回目となる今回のラウンドは2020年4月7日が締め切りとなっています。

Gitcoin Grant CLRに興味を持ったけれど、どうやってやるのか分からないと言う方は、こちらの記事をご覧ください!

さいごに

実は、私もDeFi IndonesiaというプロジェクトをGithub Grantにてクラウドファンディングを募集しています。

こちらは、インドネシアでDecentralized Finance(分散型金融)の教育を現地の人に提供するコミュニティです。インドネシアではまだ人口の66%が銀行口座にアクセスができず、金融課題がとても大きいです。DeFiは、ブロックチェーンの力で金融包摂を実現する可能性を秘めています。そんな金融課題のある地域で、DeFiへの理解と活用を広めることを通じて社会貢献および暗号通貨技術の社会実装を前に進めたいという思いで毎日現地で奮闘しております。

1DAIからの支援でも大きな意味を持つので、この記事に1DAI分の価値があったと思える方はご支援をしてくださると大変幸いです。

DeFi Indonesia : https://gitcoin.co/grants/606/defi-indonesia?tab=activity

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