【翻訳】マリエ・コンドウの優秀な通訳者は、こんまり現象の影の立役者

By アン・クイト 1/19/2019 qz.com

Marie Kondo’s brilliant interpreter is the unsung hero of the KonMari phenomenon By Anne Quito, qz.com January 19, 2019

マリエ・コンドウが好きだということは、彼女の通訳者を好きなのと同じことだ。その通訳者は、偶然にも同じマリエという名前である。

過去3年間、35歳の作家マリエ・イイダは、あの魅力的な片づけの達人がマインドフルな片づけ哲学を世界の英語話者に説明するのを、背後から助けてきた。コンドウより一歳年上のイイダは、直接会っても、スクリーン上でも、温かい人柄とプロフェッショナル精神にあふれている。Netflixの「人生がときめく片づけの魔法」シリーズに、コンドウの意を汲んだ目立たない伴走者として登場する彼女は、多くのファンの心をつかみつつある。

あるツイート「ところでマリエ・イイダはいつ自分の番組をもつのかしら」

日本語のネイティブスピーカーでさえ驚嘆するのは、時にとっぴで長々としたコンドウのお祈りをイイダが間延びさせずに伝える様子や、コンドウの快活なエネルギーを過不足なく描写するイイダの能力である。「彼女は正直いって信じられないほど上手く、コンドウの日本語のあらゆるニュアンスをとらえている」とニューヨーク在住の日本語ネイティブスピーカー、ジェイ・セティは言う。「コンドウの言い回しを聞いて『これを英語で伝えられる翻訳者はいないだろう』と考えることがあるけれど、彼女はそれをほとんど完璧にやってのけるんだ。コンドウは、英語でも、日本語と同じくらい感じよく聞こえる」。

独学で通訳になったイイダは、貪欲な読書によってプロフェッショナルレベルの通訳技術を身につけた。「日常会話で使われる言葉は、ふつう700語くらいだと思いますが、通訳では、曖昧な言い回しや抽象的な言葉に出くわすことがあるので、膨大なボキャブラリーが必要です」と、2016年のインタビューで彼女は話している。「特定の語だけではなく文脈を理解すること、つまり言語的な理解と文化的な理解の両方が、通訳や翻訳においては不可欠です。それができるようになるには、読書を超える方法はありません」。イイダはまた、ラジオやテレビの番組を注意深く聴き、その言葉を頭の中で翻訳する練習もすると言う。

逐次通訳者は、正確には、イイダがもともと目指していた目標ではなかった。ニューヨーク大学の文学・映画専攻と、コロンビア大学の米国研究の修士課程を卒業した彼女の心にあったのは、つねに創作だった。彼女は、リッツォーリ社やソーホープレス社、および日本の多くの出版社の本の翻訳をしてきた。シナリオや映画評、ヤングアダルトフィクションも書いている。彼女の最新の短編『ミスター・ユニオシ』は、映画「ティファニーで朝食を」でミッキー・ルーニーが残念なほど戯画的に演じた出っ歯の典型的アジア人を、柔らかく修正した作品である。

イイダが初めて行った実況通訳は、俳優イーサン・ホークとの仕事だった。2006年のインディース映画「痛いほどきみが好きなのに」の東京プロモーションツアー中のことだ。「初めての通訳の相手がハリウッドのこんなビッグスターだなんて、神経をすり減らしましたよ!」とイイダは回想する。当時、彼女は、日本の映画プロダクションで翻訳者として働いていた。「私が通訳したのは初日だけ、正式な通訳者が到着するまでの間だけでしたが、その通訳者の仕事ぶりには本当に魅了されました」。

それ以来、彼女は、日本のアート志向の番組や出版物で頼りにされる仲介者としての地位を築いてきた。現在ロサンゼルスを本拠地としているイイダは、テレビジョン・アカデミー(ATAS)、カンヌ映画祭、ケーブルテレビ局HBO、ニューヨークのジャパン・ソサエティーなどの団体から仕事を受けてきた。2016年に初めてコンドウと出会ったのは、このジャパン・ソサエティーでのことだ。

「(イイダさんは)素晴らしいエネルギーとステージ上の存在感の持ち主ですが、話者より前には決して出ない人なのです」と、ジャパン・ソサエティーの公開レクチャーシリーズのディレクター、トモミ・セキヤは言う。「私たちは彼女が『こんまり』シリーズに出演しているのを見て興奮しています。世界の何百万人もの視聴者に、彼女の能力をシェアする絶好の機会です」。

視聴者の中には、イイダは「こんまり」シリーズの影の立役者で、もっと脚光を浴びるべきだと主張する人たちまでいる。しかし Quartz誌との下記のインタビューで、彼女は、通訳であることの真の喜びは、背景に消えてしまうことにあるのだと話している。

Quartz(以下Q): どのように通訳のトレーニングを積んだのですか?

本当のところ、口頭で訳す通訳者になりたいと思ったことは一度もありませんでした。本気で通訳の勉強を始めたのは、(2011年に)コロンビア大学の大学院を卒業した後からです。ニューヨーク市には熟練の通訳者の方々が大勢いて、その方たちにお世話になりました。彼らの通訳をシャドウイングして学び、日本語と英語を貪欲に読むやり方も教わりました。

通訳といってもいろいろな種類があります――国連通訳、医療通訳、企業通訳など。私はさまざまな通訳を経験しましたが、もともとアートや文化に興味があったので、創作者やアーティストとの仕事に惹かれました。私がアーティストや創作者の通訳をするのが好きなのは、彼らの話し方や選ぶ言葉にはどこか独特なものがあるからです。

Q: ある顧客と仕事をする前には、2週間ほど調査に費やすと話しておられましたね。マリエ・コンドウさんとの仕事にはどんな準備をしましたか?

彼女の本を全部読みました。キャシー・ヒラノさんが英訳者で、私の大好きな本です。マリエさんのインタビューも、さかのぼって読めるだけ読みました。それから、彼女のレクチャー動画で見つかるものは何でも探しました。彼女の言葉遣いや話し方の感覚をつかむためです。

Q: いつも持ち歩いていらっしゃるノートには、どんなことを書いているのですか?

このノートはだんだん、安心や幸運のお守りのようなものになってきました。いつもは、記憶を呼び起こすためのキーワードを書くようにしています。書くという動作自体が、何の話だったか思い出す助けになるのです。あの番組の収録中は、全部の言葉を書き留めたり、いつものやり方でノートを使うことはとても不可能でした。ふだんとは全く違う状況だったのです。ただあのノートを手に持っていることで、いつものやり方でいることができました。

Q:マリエさんの言葉を一字一句翻訳しようとしているのですか、それとも、辛辣な発言を和らげたりするのでしょうか? そう気づいた視聴者もいたようですが。

マリエさんが辛辣になることはありません。彼女はクライアントの方々ばかりか、クライアントの持ち物に対しても、非常に礼儀正しい人です。ええ、彼女は決して辛辣な言い方はしませんが、とても面白い人ではあります。本当に思いがけないようなことが時々あって――子供時代のペットはウナギだったと言ったりですね。時々びっくりさせられます、そういう話が前触れもなく出てくるので。彼女は、アメリカ人家庭のごみ袋の匂いなど、ほんの些細な文化にもうっとりするような人です。

どんな通訳でもそうであるように、正確さがもちろん最重要です。ステージ上での通訳の経験からいうと、声の調子や、もしかすると顔の表情さえも、同じくらい重要なことがあります。創作者やアーティストという人たちは、実に独特なエネルギーを持っています。そのキャラクターやパーソナリティが翻訳の中で失われることがないように非常に心がけています。また、感情面の伝達に参加することも、メッセージを伝えるには不可欠の要素だということも知りました。彼女が話している内容だけでなく、(番組に登場する)ご家族に彼女が話すときの口調、手ぶり、姿勢にも、極力注意していました。でももちろんこれは言うほど簡単なことではありません。ずっと話し続けながら、その場にあるカメラや照明や音声についても配慮しなくてはならないという場合には。

Q: あなたとマリエさんは、不思議なほどよく似ていますね。これは特にあなたがたが同じ名前だから、そう感じるのでしょうか。番組のプロデューサーから、こういう服装をしてとか、マリエさんと似た髪型にするように言われましたか?

私の夫[マンガ作家・映画製作者のデニス・リウ]はいつも、私たちが二人とも「まりえ」という名前で、同じくらいの背丈なのは面白いと言っています! これは完全に偶然なんです。番組では、私たちの同じ名前を説明するのに時間を無駄にしたくなかったので、私はただ「イイダ」と名乗るようにしました。その方が効率的でしたから。

このプロダクションの間、私はご家族の方々にあまり話しかけないようにしていました。自分についての番組にしたくなかったからです。ご家族とマリエさんのつながりに関する番組にしたいと私は願っていました。通訳として良い仕事をしたことになるのは、その場に自分がいることを忘れてもらえた時なのです。

どんな服装をするかは、そのテレビ番組での自分の役割にどう取り組みたいと思っているかの表れです。つまり、プロフェッショナルかつ真剣に見えるようにしています。あれは私がいつも通訳する時と同じ服装です。髪型ですか? マリエさんの髪はいつも完璧で美しいですが、私の髪がそうだったことはありません。

Q: 現在、マリエさんとの関係をご自分ではどのように考えていますか?

あの番組の収録中、私たちは本当にお互いの存在を勇気づけていたと思います。少なくとも私にとっては、どのお宅に入っていく時も彼女と一緒だとわかっていたので、本当に心強かったです。

黒いワゴン車から降りてクライアントのご家族の家へ歩いていく前に、毎回、彼女と「よろしくお願いします」と声を掛け合ったのを覚えています。この言葉は、説明するのが難しい日本語表現のひとつで、いろんな感情を含んでいます。場合によって「私もお会いできて嬉しいです」から単なる「どうぞ」まで、さまざまな意味になり得るのです。でもあの文脈で、私たちが言おうとしていたのは、お互いが自分の仕事をうまくやれるよう任せますということ、そして互いに相手を頼りにしていますということだったと思います。彼女にそう言われるたびに、私の顔には笑みがうかびます。彼女の言い方がとても丁寧で、私たちに共通の日本人としてのルーツを思わせるからです。

Q: マリエ・コンドウさん本人と彼女の片づけ哲学で、最も誤解されている点は何でしょう? 彼女は本当に、私たちに本を処分させたがっているのですか?

彼女のやり方は、どれだけ多くのものを捨てられるか、手放せるかが目的だと思われやすいのですが、実際の力点は、何を自分の人生に残したいかということにあります。

たとえば、私は本を読むのが本当に好きで、本は私にとって非常に大事なものです。マリエさんにそのことを話したら、彼女は「それがあなたを夢中にさせてくれることなら、自信を持って自分の好きなものを家に置くべきです」と言いました。ですから、ええ、彼女はミニマリズムとあまりに近く結び付けられがちだと私は思います。でも、彼女のメッセージが向けられていることの大部分は、自分がどんな人間で、何が好きかを知るということなのです。

Q: あなた自身もこんまりメソッドで自分の家を片づけましたか?

私は以前からかなり整理整頓していた方ですが、私の洋服ダンスの引き出しをご覧いただければ、服は明らかにこんまりメソッドで畳まれているはずです。

Q: 片づけ以外で、あなたがマリエ・コンドウさんから学んだ最も重要なことは何ですか?

私は比較的、背が低い方で、これはアメリカで働くのに不利だとずっと思ってきました。マリエさんを見て、とても可愛らしくて感じのいい人だとだけ思っている人がいるでしょうし、そう見えるのはその通りです。でも私は、マリエさんがどれほど自分自身に自信を持ち、誠実であるかという点に感動させられるのです。私も自分が身長で損をしているなどと思う必要はないのかもしれないと思うほどです。大事なのは自分がどのように振る舞うかということで、彼女はそうした姿勢を強く持っている人です。

私は幼い頃から日本と米国の両方に住み、何が人々の違いを生むのかとか、翻訳不可能なことは何だろうかという点にとらわれすぎてしまいがちです。でも、マリエさんがあんな大勢のご家族や、多様な番組スタッフの方々と交流されている姿を見ると、普遍的なことに集中している彼女はなんてすごいのだろうと気づかされるのです。