三体「地球往時」三部作を読んで分かった、ネットは暗い森

Koya Matsuo
5 min readAug 12, 2019

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お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。

そんな感じで登場した劉慈欣のSF小説「三体」を読んだ。以前から気にはなっていたものの手を出していなかった中国SFの中でもずば抜けて評価の高い作品であり、ネタバレを食らう前に読まねばと、一気に読んだ。予想を上回るセンス・オブ・ワンダーに次ぐワンダー続出で、こりゃあすげーSFだわとなってしまった。

この三体をどう捉えるか、いろんな人の感想を知りたいので読み終えた後でググったりTwitter検索をしたりしようと考えたのだが、問題があることに気づいた。この作品、日本語訳は出たばかりだが、中国語版は2011年に完結しており、知らない人からはストIIのキャラかと思われがちなSF作家ケン・リュウによる英語版も2014年には出版されている。

そして、この三体は「地球往時」と名付けられた三部作のうちの第1作であり、英語圏においては5年も前に完結しているのである。

なので、無防備な状態でインターネットの大海に乗り出したら、途端にネタバレを喰らい、星系ごと消滅してしまうに違いない。

この大きな壁に直面した人には3つの選択肢がある。

  • 英語版で読む
  • 中国語版で読む
  • 翻訳を待つ

地球往時の第2作である「黒暗森林」は2020年に邦訳が予定されている。そこまでネットで「三体」で検索しない、もしくはネタバレを気にしない広い心の人であれば、翻訳を待つこともできるだろう。

だが自分の心は虫けらのように狭いので、1年、2年が待てない。

そこでApple Booksで英語版の2作目「The Dark Forest」を買ってしまった。

今は1100円になっているけど、買ったときは800円だった。なんというお得感であろう。

完結編である「死神永生」英語版の「Death’s End」も同じくApple Booksで購入した。

早速感想を語りたいところだが、バーナムスタジオの里見哲朗さんが2015年10月に書かれたこのブログで僕が言いたいことはほとんど語り尽くされている。

そして3作目について2016年に書かれたブログ。

3部作についての感想はほんと同意しかない。

特にこの部分:

ふつう三部作って「風呂敷を広げて、風呂敷をたたむ」ものじゃないですか。
でもこれ、「風呂敷を広げて、広げっぱなしの風呂敷にあらゆるものをたたき込む」ですよ。

この「広げてたたむ」を第2作、第3作でそれぞれやらかしてるのです。

どこの智子かと。

ここに僕はようやく3年遅れで到達したわけで、そのくらいあれば別の星系に近いところまでは行けるわけだ。ライトスピードで。

語学というのは目的地に高速に行きつくための高速移動手段。中国語で読める人であれば、「三体」には2006年に、完結編の「死神永生」には2011年に到達できているのだ。

邦訳が出るのを待っていたらいつになるか分からない、ネタバレを喰らいたくない、邦訳がまだの作品を読む理由はいろいろ理由はあるけど、「三体」を読み終えた後の自分は猛烈な飢餓感に襲われて、読まずにはいられなかった。そして読んだだけの価値は十分にあった。

渡辺千賀さんによるこのブログも参考になった。スター・レッド、バトルスター・ギャラクティカは同意。

自分にとって、三体三部作から連想する作品は、こんな感じだ。

  • 銀河帝国の興亡
  • レンズマン
  • スカイラーク
  • 百億の昼と千億の夜
  • ハイペリオン
  • ハリー・ポッターと死の秘宝

三体は中国のビリビリ動画でアニメ化が進んでいるらしく、ティーザー動画が掲載されている。非常に良くできているので作品自体には期待なのだが、注意すべきところがある。

これは、「三体」だけではなく、おそらく「黒暗森林」まで含んだものなのだ。2作目のクライマックスシーンがティーザーに描かれているのだ。

あぶねー。

「黒暗森林」のWikipedia日本語版にもエンディングまでしっかり書かれている。国、言語で情報格差がある場合、無知でいることは危険なことなのだ。

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Koya Matsuo

松尾P。妻の歌声である妻音源とりちゃんとともに音楽を作っています。永遠に超愛妻家です。