映画:『ホドロフスキーのDUNE』
アレハンドロ・ホドロフスキー、アントニ・ガウディ、そして人々の意識を変える大志
1975年にホドロフスキーによって企画されるも、撮影を前に頓挫したSF大作、ホドロフスキーの『DUNE』。「映画化不可能」と言われた小説、フランク・ハーバートの「DUNE」を原作に、そうそうたる面子をキャスト・スタッフに配し、莫大な予算と、12時間にも及ぶ上映時間を予定していたというその企画は“映画史上最も有名な実現しなかった映画”と言われ、伝説となっている。
本作は、ホドロフスキー版『DUNE』の顛末と、ホドロフスキー、プロデューサーのミシェル・セドゥー、ギーガー、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督等のインタビュー、膨大なデザイン画や絵コンテなどの資料で綴る、驚愕、爆笑、感涙のドキュメンタリーである。
「この映画に携わる全ての人間は魂の戦士だ。最高の戦士を探す」と、ホドロフスキーによって集められたのは、スタッフにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス、SF画家のクリス・フォス、『エイリアン』『トータル・リコール』の脚本で知られるダン・オバノン、画家、デザイナーのH・R・ギーガー、73年の『狂気』をはじめ現在まで絶大な人気を誇るサイケ/プログレの代表的バンド、ピンク・フロイド、キャストにシュルレアリスムの代表的作家サルバドール・ダリ。『市民ケーン』など映画監督としてのみならず俳優としても知られるオーソン・ウェルズ、ミック・ジャガーなど、様々なジャンルから非凡な才能を持つアーティストたち。
映画は未完となったが、ホドロフスキーが作ったストーリーボードは、ハリウッドの様々なスタジオに持ち込まれ、その構図や設定などのアイデアはスターウォーズやエイリアンを始めとしたSF映画に多大なる影響を与えた。
――『ホドロフスキーのDUNE』公式サイトより

イントロダクションにあるように、カルト映画の鬼才の狂気に触れることができるドキュメンタリーを期待していたが、こんな感動をするとは思ってなかった。
ホドロフスキーの『DUNE』のラスト「シーン90」は、主人公の英雄ポールの首が掻き切られる。だが、人々ひとりひとりの意識の中にポールが生き返り、「ポールを殺したいならわたしがポールだ。」とわらわら集まってくる。惑星DUNEにまで意志が伝播し、砂の惑星が緑の惑星に再生する。惑星の意志となったポールが銀河を飛び出し宇宙を変えていくスケールの大きさでDUNEの物語は(fin.)となる。
ホドロフスキー監督へのインタビューで何度も繰り返された“人々の意識を変える映画”というフレーズ。「私が作りたかったのは、LSDをやらなくても、あの高揚感を味わえる、人間の心の在り方を変える映画だ。」当時はフラワー・ムーブメント真っ只中で、もう完璧にカルト宗教の教祖だなと笑ってしまった。

それがドキュメンタリー最後のシーンで、彼を捉えていた認識が全く変わった。
「私は300歳まで生きたい。・・・300歳は無理かな。あと1年で死ぬかもしれない。でも大きな志がある。志を持たずに生きるなんて無理だ。できる限り大きな志を持つ。不死を望むなら、そのために闘え。闘うんだ。」
確かにハリウッド映画業界に拒絶されて、失敗したかもしれないが、最高に芸術的な作品を作りたい彼の志と挑戦は、確実に映画業界に種をまき、「スターウォーズ」、「マトリックス」、「エイリアン」の元ネタになった。ラストシーンで殺されても、ポールは生き続ける。ホドロフスキーは300歳まで生き続けることができる。エイリアンにだってなる。自分の哲学を熱狂的に追求することで、哲学を「志」の次元まで高めていく。自分の夢が自分のためにあるだけではなく、ダリやミック・ジャガー、「宇宙戦争」のオーソン・ウェルズ、ピンク・フロイドをはじめとする「最強のクリエイティブチーム」動かす。哲学を社会的意義の高揚感を生み出す「志」まで高めた。惑星DUNEは地球に近づいて種をまき、ハリウッドの映画業界に多大な影響を与えている。
アントニ・ガウディにみる大志(Think Big)の在り方

ホドロフスキー監督の大志に触れた瞬間、孫泰蔵さん(SUSANOO Co-Founder / MOVIDA JAPAN CEO)に教えてもらったサグラダ・ファミリアのエピソードを思い出した。「Apple」のスティーブ・ジョブズ、「テスラモーターズ」、「SpaceX」のイーロン・マスクなど「Think Big」な偉大な起業家もいるが、サグラダ・ファミリアをつくりはじめたガウディが世界一の「Think Big」だと泰蔵さんは語る。
当時、ガウディはサグラダ・ファミリアにお金や所持品、人生のすべてをかけていた。最後は不運にも貧困の中、意識がもうろうとしたまま車にはねられ亡くなる。彼の遺品は洋服一枚だったそうです。文字通りすべてをかけていた。
100年以上が経ついまでも建設が続くサグラダ・ファミリア。中心にそびえる塔と、周囲の18本の塔に84の鐘がつるされる。中心の塔には巨大な鐘が設置される予定ですが、大きすぎて人の力で鳴らすことが出来ない。83の鐘が鳴り、共振することで巨大な鐘を動かすよう設計されています。ガウディは設計図ではなく楽譜を作成していて、教会をモチーフとした巨大な楽器を作ろうとしていたのです。
誰もが想像できない大きなことを考え、その完成の瞬間を彼は後世に託す。バルセロナに暮らす何世代もの職人が、世界中からこの建築物に関わりたい職人が、完成までさらに100年以上要するにもかかわらず、ガウディの死後も長く太く意志が受け継いでいる。
※現在、サグラダ・ファミリアの主任彫刻家は日本人。
行政から資金的援助がないにもかかわらず、観光や文化的に莫大な貢献をもたらすサグラダ・ファミリア。世界一の大志(Think Big)を掲げたガウディの意志を実現させようと寄付のスピードも上がり、職人の雇用が拡大し、なんと2026年に完成予定が見えてきています。
「デューン」とは芸術と映画の神の降臨だ。とても神聖で、自由で、新しい視点から精神を解放させる物を作って、世界中の人々の意識を根本から変えたい ――アレハンドロ・ホドロフスキー
人々の生活を変える、価値観を根本的に変える「哲学」を昇華させる熱狂に触れることができる作品です。
