プラットフォームビジネスの未来(後編)|構造的オルタナティブを考える

Megumi Kanno
5 min readJul 10, 2020

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前編では、中央集権モデルの、1. 大きさ、2. 組織的輪郭、3. 資産的境界線という3つの構造的特徴に起因する事例から、プラットフォームビジネスを取り巻く諸課題を概観しました。

そこで疑問になるのが、中央集権型構造でしかプラットフォームは成り立たないのか?ということ。実は、1960年代にポールバランという人がネットワークには「中央集権型」に加え「非中央集権型」と「分散型」があると述べています。

後編ではこの「非中央集権型」「分散型」に分類できる取り組みをみていきたいと思います。

4. 非中央集権型モデル

Twitter CEOのジャック・ドーシーは、2019年1月「脱中央集権化」に関する構想をツイートして話題になりました。これは、これまでのようにTwitter1社が単独でサービスを運営管理するのではなく、コミュニティごとに独自のバージョンを作り運営権を渡すというもの。未だ構想段階のものではありますが、これが実現されると、中央が抱えていたコスト(コンテンツモデレーションやガバナンス)がゆるやかに委譲されることになります。

また、ハードウェアの世界ではその技術的要件から先に非中央集権化が進みそうです。

近年注目を浴びている「エッジコンピューティング」とは、データセンターやクラウドで一元管理するのではなく、ネットワーク上のエッジで処理と意思決定を行うというもの。IoT化によって生成される膨大且つ秘匿性の高いデータを一箇所で処理することに比べ、エッジ側でリアルタイムに判断し実行する方が、遅延もコストもセキュリティ上のリスクも少なく済みます。

5. 分散型モデル

最後に見るのは分散型モデルです。BitcoinやP2Pに代表されるように、参加者同士が対等にタスクを負うことで、中央集権的な第三者機関を完全に不要とするモデルです。

分散型の仕組みを使ったサービスは、前編で紹介したXiang Hu Baoのような金融サービスをはじめ、コミュニケーションサービスやコンテンツサービスなど、既に様々な業種で取り組みが見られます。詳しい説明は避けますが、分散型の導入は、広告モデルからの脱却や、アテンションエコノミーとも評されるコンテンツ質の低下を防ぐものとしても、その活用が期待されています。

以上見てきたプラットフォームのオルタナティブ、非中央集権型・分散型は、それぞれパラレルに進むのではなく、これまでの中央集権型とのハイブリッドやメタレイヤーとして相互補完的に進むものとして捉えられるでしょう。既存プラットフォーマーはその活用や提携のあり方に手腕が問われそうです。

終わりに

前編ではプラットフォームビジネスが直面する窮状を、後半では既に取り組まれ始めているオルタナティブな形を見てきました。これらのシグナルを足掛かりに、”来て欲しい未来”を想像し、ガイドするような取り組みやビジネスが多く生まれればと思っています。

最後に、時代は「集中と分散を繰り返す」という見立てもできるかもしれません。メディア理論化のダグラス・ラシュコフは自著『Throwing Rocks at the Google Bus』の中で、これまでのプラットフォームビジネスを「デジタル産業主義」、今後目指すべきビジネス環境を「デジタル分散主義」として表現しています。資本主義は株式という仕組みを取り入れることで資本家に集中した資産を分散化したように、現代の「デジタル産業主義」は、プラットフォーマーに集中したデータを分散化することで、企業の成長ではなくコミュニティの繁栄を達成するような「デジタル分散主義」の到来を迎えることができるのかもしれません。

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