トランプ大統領就任で医療政策はどう変わるのかートランプケアの4つの要点

Miyako Yoshizawa
6 min readNov 18, 2016

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オバマケアがヘルステック、デジタルヘルスの発展に与えた影響は大きい。CNBC も、「オバマケアにより、多くのデジタルヘルススタートアップはすぐに収益をあげることができるようになりました」と報じている。

オバマケアは2010年3月に成立、それ以降急速にデジタルヘルス領域への投資額が急増

しかし、11月8日の一般投票で、選挙活動中オバマケア撤廃を主張していたドナルド・トランプ氏の当選が確実になった。これを受け、オバマケアの行方が話題になっている。

11月11日、トランプ氏は前日のオバマ大統領との会談を理由に、オバマケアの一部維持を検討していると明らかにするなど、いまだ明確な方針はわかっていない。もし本当にオバマケアを完全撤廃するとなっても、代案が練られていないのなら議会の承認は厳しい。そこで今回は現在トランプ氏が表明している、オバマケアの代案「トランプケア」についてご説明する。

オバマ大統領とトランプ次期大統領の会談の様子(REUTERS/Kevin Lamarque)

オバマケアの一部撤廃とその代替

現在最も大きな論点となっているのは、オバマケアがどのような形で存続するのか、もしくは撤廃されるのかということだ。

そもそもオバマケアとは、患者保護並びに医療費負担適正化法(PPACA)と医療費負担適正法(ACA)の2つの法律が中心に構成されている。

ACAは、政府が運営する保険のオンラインマーケット、エクスチェンジHealth Insurance Exchange)や、医療費削減、医療の質改善により成り立っている。 仮にトランプ氏がこのエクスチェンジを撤廃した場合、何もその代替策がないのなら約1,800~2,200万人がまた健康保険未加入になってしまうという。

オバマケアで2000万人が健康保険に加入したが、廃止により離脱が予想されている

コレに対し、トランプ氏は公約で、ACAの代わりに以下の施策を計画していると明らかにしている。

①医療貯蓄口座(HSA)の設立:保険の代わりに、医療貯蓄口座(HSA)を導入するとのこと。HSAは、税控除によって個人の医療費用の貯蓄を推奨し、病気やけがのときにはその貯蓄から医療費を支払うようにする仕組み。

② 未加入者への罰金を廃止:医療保険に加入しない人の税金が高くなる制度である「個人加入義務化(Individual mandate)」を廃止する。

いずれにせよ、保険加入を促進させたオバマケアにより誕生した、保険関連のスタートアップは、保険加入を強制しないトランプケアによって危機的状況になるのではないか。健康保険のスタートアップでユニコーン企業(時価総額27億ドル)のOscar Healthは、創業者ジョシュア・クシュナー氏がトランプ氏の親戚にあたるそうだが、同じく厳しい状況を強いられるだろう、と私は考えています。

一方で、Oscar HealthのCEOとCOOはトランプ氏が保険料を税控除の対象にする方針を明らかにしたことから、同社にとって好都合であると公式にブログで表明している。

医療市場のオープン化

トランプ氏はこれまで禁止されていた、州をまたいだ医療保険の販売を許可するという。

過去にも、実験的にこれを許可する取り組みがなされてきた。しかし、実際には州ごとに医療政策は大きくことなるため、保険会社側にそれをするほどのノウハウとメリットがなかったのだ。

また、薬剤の市場へ自由参入を認め、海外の薬を輸入することも許可するとのこと。

メディケア・メディケイド

トランプ氏のウェブサイトによると、メディケアとメディケイドについて、「メディケアの近代化」を行い、ベビーブーム世代の退職に向けた課題に備えるとしている。

これに対し、多くの人々はメディケアとメディケイドへの削減を予測している。実際に米下院議長のポール・ライアン氏は最近、米大手ニュースメディア(Fox News)で「メディケアを民営化したい」と語っている

ポール・ライアン氏 (REUTERS/Gary Cameron)

また、メディケイドのブロックグラント(各州にメディケイドに必要な予算をそのまま移譲し、使い方の詳細は各州に任せる施策)を実施するとも公言していることから、なんらかの形で柔軟性をあげていくことが予想される。

FDA

トランプ氏は移行計画において、FDAに関しても言及している。同氏は「新しく革新的な医療製品を消費者に提供するために、FDAを改革する」と約束したのだ。

こう聞くと、これが規制緩和のことだと考えがちだが、トランプ氏のチームはまず食品衛生の規制に集中し、その後に薬物や医療機器に取り組む方針だ。それでも業界内のトランプ氏の規制への印象は概して悪くはないという。

ちなみに、FDAなどを統括する保健福祉省(HHS)を率いる長官に誰が任命されるはまだわかっていない。

「トランプ氏は技術開発を支持しており、法規制を懸念しています。だから私はトランプ氏がデジタルヘルスへの規制を増やすことはないと確信していいでしょう」とEpstein Becker GreenのパートナーでFDA専門のブラッドリー・メリル・トンプソン氏はMobiHealthNewsにこう語った。

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Miyako Yoshizawa

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