フィンランドのスタートアップの祭典「SLUSH」でデモ展示をしてきました

Taka Mizutori (JP)
15 min readDec 5, 2016

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フィンランドの首都ヘルシンキで毎年冬に行われるヨーロッパ最大のテック&スタートアップカンファレンスSlushに弊社のプロダクトInAppTranslationを展示して来ました。

応募

デモ出展とピッチコンテストへの締め切りは10月31日。今回両方に応募しました。

応募に際して以下の情報をインプットする必要があります。

Short company description * (80字)
会社について(短い文で)

Long company description * (300)
会社について(長文)

Founder(s) & Team * (300)
ファウンダー、チームについて

Product description * (300)
製品について

Business model (300)
ビジネスモデルについて

Market * (300)
マーケットについて

Competition * (300)
競合他社について

Growth during the last 12 months * (300)
過去12ヶ月の成長率について

Growth during the following 18 months * (300)
これから18ヶ月の成長予測・戦略について

また応募するためには応募者はすでにSlushのチケットを1枚購入している必要があり、395ユーロのStartupパスを買いました。

結果は直前に来る

結果は直前に報告されます。僕らの場合はデモブース出展の審査が通ったというメールが11月12日に来ました。ピッチの審査結果についてはもう少し後の16日に来ました。
今回はピッチの審査は突破できなかったですが、出展はできることになりました。

ブース出展費用の振込は11月24日まで、もしキャンセルする場合は11月16日までに言わないといけないということで、11月16日に出展費を払いヘルシンキに行くことに決めました。

出展費用

出展費用は1200ユーロでした。

準備

航空券は意外と空いている

Slush開催まで2週間に迫っていましたがヘルシンキ行きのフライトはまだ少しだけ空きがありました。冬の北欧は観光シーズンではないため、航空券は10万円前後で買えます。

ホテルはあまり空いていない

Slushの参加者数は2万人くらいということで、ホテルはかなり埋まっていました。

AirBnBはまだ空きがある

AirBnBは空室率25%となっていて、冬の北欧ではありえないほどすでにブックされてましたが、まだ何とか泊まりたくなるような物件がいくつか空いていました。

装備

ブースに関してはSlushの運営チームから以下のような資料が来ます。

ブースの構成

最低限持って行くものは、スタンドアップバナー(ポスターをアルミの枠で建てれるもの)で最大2000mm ✖️ 800mmと書いてありますが、サイズなどはスタッフからチェックされることはなかったので多少のサイズオーバーはいいような気がします。

後は液晶ディスプレイをラックの上に置くと良いとメールに書いてありました。最大60インチまでのディスプレイなら乗るということもメールに記載してあります。

機材のレンタルがバカ高い

Slush運営が契約しているSunEffectsという会社から液晶ディスプレイ、ラップトップ、イス、電源の延長ケーブルが借りれますが

  • 40インチディスプレイ 450ユーロ
  • 55インチディスプレイ 600ユーロ

とかなり高いです。また11月14日以降は50%増しになるため、55インチのモニターが900ユーロもします。
11月12日にブース出展できる通知が来るので2日で意思決定しないと割り増しになります。私の場合ヘルシンキ行きを決めた時にはもう割り増し期間に入っていました。

機材の在庫はすぐなくなる

すごく高かったので何インチを借りようか、iPadかMacでデモしようかまよったあげく11月24日に意を決して40インチのディスプレイをオーダーしたところ、すでに在庫ぎれですというメールが帰って来ました。

ローカルから調達する

ダメ元で滞在予定のAirBnBのホストに、知り合いにでかいモニターを持ったスタートアップがいないか聞いてみると、「うちにある32インチのテレビを持って行っていいよ。」という返信がすぐに来て助かりました。

電源周り

電源は4、5個刺さるタップが用意されていたので、日本から延長コードと変圧器を持って行きましたが必要ありませんでした。Cタイプの変換プラグは必要になります。延長コードを持って行く場合は黒色しかダメと書いてあったので、黒色を持って行きましょう。Slushはデモブースの外観にすごくこだわっているようです。

パンフレットは持ち込めない

今回のSlushから印刷物をブースで渡すことが禁止されました。会場に捨てて行く人が多いのと、エコを尊重するためという説明がありました。名刺以外の印刷物はブースに置くことはできません。(ただ、特例的にステッカーは他の場所に絶対に貼らないでということを配る際に念押しすればよいという通知が後日来ました。)

壁に何も掛けたり貼ったりできない

ブースにの後ろにかっこいいアルミのパーティションがありますが、ここに何かを貼ったり引っ掛けたりしないようにという説明がありました。

ただ当日、ここのパネルにIOTデバイスの入ったウクレレを大量に引っ掛けているスタートアップがいたので、交渉の余地はあるのかもしれません。

僕たちはスタンドアップバナー以外にA2のパネルに製品の説明を貼ったものを用意しました。パンフレットを渡せないのでこのパネルが非常に役にたちました。A2はデカめのスーツケースにギリギリ入る大きさでした。

手持ちのパネルがあると説明がとても楽にできる

こうした装備を整え11月29日ヘルシンキに向かいました。

ロケーション

Slush会場は空港からヘルシンキのダウンタウンへ行く途中にあるPasilaというターミナル駅の前にあるMessukesuksuというコンベンションセンターで行われます。

滞在先は、Slush会場とヘルシンキ中心部の間にあるKallio(カッリオ)地区というところを選びました。。ここからだと会場まで北へトラム(路面電車)で15分くらいでいけ、ヘルシンキのダウンタウンへも15分くらい(南へ)で行けます。
ヘルシンキ中心部体から会場はトラムでだいたい40分くらいかかります。

カッリオ地区はアーティストや若者がすむヒップなエリアと聞いていましたが、真冬なためかヒップな感じはあまりしませんでした。北欧は夏の景色はガラッと変わるため夏はヒップなんだと思います。

治安はすごく良く感じました。ヒップエリアのKallioでもかなり安全な雰囲気がしました。一度だけKallioを夜歩いている時にサングラスを掛けた北野武みたいなおじさん二人組みが叫びながら近づいて来ました。早足で避けながら通りすぎたら追いかけては来なかったのですが、フィンランド語で何かまくし立ててました。「なんだテメェ、このやろう」みたいなことを言っていたのかも。。Kallioは夜は女性は少し気をつけたほうがいいかもしれません。

Slushはありえないほど朝早く始まる

Slushは朝8時に開場して人が入ってきます。展示をする人は朝7時から入ることができます。

フィンランドの冬は日の出が遅いので、真っ暗な中会場入りすることになります。

Slush会場のMessukeskus

"NOBODY IN THEIR RIGHT MIND WOULD COME TO HELSINKI IN NOVEMBER” — “EXCEPT YOU. YOU BADASS. WELCOME.”

Slush会場到着、「まともな頭の持ち主ならば11月にヘルシンキに来たりはしない。クールな君たち以外は。ようこそ」
と書かれている横断幕を見てテンションが上がります。

会場中央付近のスタートアップ展示エリア

会場中心部にスタートアップデモブースのエリアがあります。これほどいい場所にデモブースがあるカンファレンスはなかなかありません。Slushはデモをするスタートアップをすごく重要に思ってくれていることがわかります。

会場全体と展示位置

今回は運がよくデモブースのさらに中心の円形になった所に僕らのブースがありました。これには感動しました。

設営風景

会場はとにかく真っ暗にしてあります。そこにスポットライトや、ブラックライト、ネオンやLED、レーザーなどを使って美しい光のレイアウトが施されています。また会場全体にアンビエントノイズがループ再生されていてここまでやるのかと感心しました。

デモブース設置完了

館内が暗い(上の写真よりも体感的にはずっと暗いです)ので、バナーに細かい説明を書いても読みにくいだろうと思いあえて製品説明を省いて目立つバナーをデザイナーさんに作ってもらいましたが、これがものすごく会場にフィットしました。

水と炭酸水を常時補給してくれる。

デモブースのテーブルにはスタッフの人が水と炭酸水を設置してくれます。なくなってくると水もカップも補充してくれます。

フードエリア。昼時にはここが満タンになって座れないほどになる

会場には巨大なフードエリアがあり、朝でもサンドイッチやクロワッサン、北欧名物のシナモンロールなどがあるので朝ごはんを食べずに来ても設営後無料のカプチーノを飲みながらゆっくり食べられました。

コーヒーは無料

コーヒー、カフェラテ、カプチーノなどは無料で飲み放題です。カプチーノの牛乳が少しぬるめに入れてあるあたりヨーロッパのコーヒー文化のレベルの高さを感じました。味もめちゃくちゃ美味しいです。

デモ開始

8時に開場しますが、アナウンスなどはなくゆるく始まります。最初はKeynoteなどがあるためか、デモブースはすごく静かでしたが、10時くらいからお客さんが一気に増えてきました。

パンフレットを配れないので、こちらから営業にいけないのですが、ボードを立って待っているとコンスタントに人が来ます。

メディアもいる

CNNのリチャードクエスト氏

学生で暇を持て余していた時よくCNNを見ていてその頃メインキャスターを張っていたリチャードクエストも来ていました。

ヘルシンキ大学のインタビューを受ける弊社石川氏

リチャードクエストはブースに来てくれませんでしたが、トイレから戻ると弊社の石川さんがヘルシンキ大学からインタビューを受けていました。スタートアップで働く女性を取材して教材として使いたいということでした。他にも女性の働き方を研究している学生からインタビューを受けていました。

デモは長丁場

デモは一日だけですが、朝8時から夕方7時まで11時間の長丁場です。

デモのデモグラフィー

Slushで感じたのは、とにかく多様な国からお客さんが来ています。北欧、西欧、東欧、中東、アフリカのお客さんがブースにきてくれました。何となくの感覚ですが

  • 北欧50%
  • その他のユーロッパ30%
  • 中東、アフリカ10%
  • その他10%

という感じでした。

お客さんの関心、知識、裁量権が高い

Slushで特によかったことはブースに来るお客さんが弊社の製品、もしくは関連する製品を探している人がほとんどだったことでした。アプリやウェブで翻訳を必要としていてサービスを探している人が75%くらいいました。サービスを探しているだけあってアプリや翻訳サービスの知識ももちろんあり、製品の内容もすぐに理解してくれますし、プロジェクトマネージャーやアプリのオーナーなど裁量権もありそうな人ばかりです。

今までの展示ではこのような関心も知識も高いお客さんは大体20%くらいだったので(あくまで私たちの製品に関してですが)Slushは突出していました。

一日目のキックオフパーティー。会場はヘルシンキ南部の港の方

1日目を終わって本当にSlushに来てよかったなという満足感でいっぱいでした。お客さんの量、関心度は今までにないものでしたし、会場の力の入れかたは感動するレベルでした。今までと全く違った体験ができました。

Slush2日目

Slushではデモ展示は1日しかできないので、もう片方の日はゆっくり見て回りました。(実はデモのドタキャンがあったりして、2日目のブースを買う枠が急遽発表されていましたが、これに応募すれば2日間デモすることもできます。)

誰でも宇宙飛行士になる訓練が受けられるようにする世界にするというプロジェクト

Keynoteセッションは誰でも宇宙飛行士になるための訓練プログラムが受けられるようにすることを本気で考えている人たちのSpace Nationsというプロジェクトについて。Keynoteがこんな無茶苦茶な照明で始まります。

ベーシックインカムについてのファイアサイドチャット(本当に火を焚いている)

ベーシックインカム導入にもっとも近い国フィンランドに来たので、ベーシックインカムについてのセッションをみに行きました。

フィンランドでベーシックインカムの研究をしている第一人者と、アメリカのY-Combinatorでベーシックインカム関連のスタートアップの調査をしている人、あと有名なシリコンバレーVCという面白い組み合わせで議論がスタートしました。

ブルーワークが人をダメにするから無くしてベーシックインカムにしたほうがいいと言い出すアメリカ人、人が仕事を通して得られる社会とのつながりをどうやって代替するかそれを考える必要があると述べるフィンランド人、両者の全く異なる視点を一気に聞けて面白かったです。

Daydreamのセッション

GoogleのDaydreamのセッションは超満員でした。

Daydream直後に同じステージで今度はHololens

同じステージでその後MicrosoftのHololensのセッションがありました。

ピッチバトル(Slush100)の決勝は超満員

夕方のピッチバトルSlush100の会場は超満員でした。こんなところでピッチしてみたい。。夢が膨らみます。

場の照明、音、火!?などをコントロールするダッシュボード

アフターパーティー

After Party: FinlandのDJ Darudeが最後の最後に昔好きだったSandstormをPlayしてくれた

全てのスケジュールが終わった後、夜9時からAfter Partyが行われます。会場の3箇所で、いろんなアーティストが演奏します。アルコールもフリーで配られます。

僕は格闘家バンダレイシウバの入場曲にも使われていたSandstormのDJ Darudeが来ると知って、メインのステージじゃない方のステージに行きました。

Darudeのプレイが始まるとフィンランド人が一気に集まって来ました。ただSandstormはなかなかやってくれません。後ろにいたフィンランド人とSandstormやってくれないね、やってくれってツイートしようかなんて話していると、最後の最後にSandstormがかかりました。フィンランド人が一気に狂喜乱舞し最高に盛り上がって終了しました。

SlushのAfter partyは午前3時まで続く

寒くて真っ暗なヘルシンキですが、何から何まで満載のSlushは395ユーロのチケット代以上の価値があると思います。(ちなみに市の交通機関も全部Slushのチケットで2日間無料になります。)

皆さんも来年はSlushに行って見てはどうでしょうか?

ヘルシンキは寒いのであったかい格好を

私たちはiOSアプリの多言語化をサポートするサービスInAppTranslationの開発、iOS/Androidアプリの開発全般に関するコンサルティング、受託開発を行っています。InAppTranslation、アプリ開発、Slush出展について何かあればお気軽にご連絡ください。
@mizutory
mizutori@goldrushcomputing.com

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Taka Mizutori (JP)
Taka Mizutori (JP)

Written by Taka Mizutori (JP)

Goldrush Computing株式会社代表。iPhone/Androidアプリのプログラマー。守備範囲はSwift, Kotlin, Python, Js, Java, Obj-C, C#, C, Assembly。前職はSonyEricsson。3児のパパ。

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